来年の事を言えばオーガポンが笑う、とは申しますが。
Fのカードが落ちた後、すなわちGHI環境のカビゴンLO……もとい、入れ替えロックによって詰ませるタイプのコントロールデッキについて考えてみたいと思います。
入れ替えロックの弱体化
特性「とおせんぼ」によって「にげる」を封じていたカビゴンが、スタンダードから消えます。
……わたしはとても残念ですが、おそらく喜んでいる方のほうが多いであろうことはたやすく想像できます。また一歩、世界が最大多数の最大幸福に近づきました。
いちおう、Gにも特性でバトルポケモンを逃げられなくするオムスターがいるのですが、2進化なのでさすがに使いづらいと思います。
ただ、クチートやオーガポン いどのめんexなど、ワザによってにげるロックをするデッキもあります。カビゴンLOは基本的にカビゴンでにげるロックをしますが、ピジョットコントロール等ではクチートやオーガポン いどのめんexの採用も珍しくありません。
使ったことのある方ならご存じかと思いますが(あるいは使われたことのある方も)、この手の「ワザによる逃げるロック」は特性による逃げるロックと異なり、より堅牢です。カビゴンLOのロックと違って、キャンセルコロンで解除したり、ベンチのロトムVをボスの指令で呼んで解除したりできません。
もっとも、堅牢だから強いというわけではないです。そもそもクチートの方が強いならカビゴンLOではなくクチートLOが主流になっているはずですしね。
クチートの方は技なのでエネルギーを要求しますし、HPが低くて脆い、先攻1ターン目からロックできない、ロトムVの特性と併用できない等のデメリットがあります。
というかクチートもロトムVもFのカードなのでカビゴンともども落ちます。ただ、オーガポン いどのめんexはHのポケモンですから向こう2年は居座ります。
しかし、ダメージが0ではなくそのうち相手を倒してしまうため半永久的なロックではありません。F~H環境ではダブルターボエネルギーで与えるダメージを減らすことで半永久的なロックになるのですが、ダブルターボエネルギーもFのカードなのでカビゴンやクチートと一緒に消えてしまいます。
他だと、コジオやワニノコがにげられなくするワザを持っているのですが、ダメージが10あるのとワザの色拘束があるのとが面倒なところです。
まぁ、ワザに必要なタイプのエネルギーの入っていないシステムポケモンや、エネルギー不足の状態でベンチポケモンを呼んで縛ればしばらく拘束できるんですが、いずれ解除されるとなると負け筋になりえるのがイマイチなところです。気の長い話ですが、相手からしたらナンジャモ等で山札切れを防ぎつつバトルポケモンがきぜつするのを待てる以上、「詰み」ではないですからね。
なお、重力玉や災いの荒野など、にげるエネルギーを増やす手段は色々ありますので、その辺で逃げにくくするというのもロックの手段にはなります。ただ、これらに対してはラティアスexという対策がありますし、ジャミングタワーでも対策出来るため、カビゴンやクチートほど安定したロックにはならないでしょう。
なお、ロストスイーパーはFのカードなのでスタンダードから消えますが、代わりに何かしらのポケモンのどうぐ対策カードは登場するかと思います。再録ならツールスクラッパーやフィールドブロアーあたりでしょうか。
これらを考慮すると、カビゴンやクチートが抜けた穴は大きく、代替要員がいないわけではないものの、元の勢いは失われ、入れ替えロックを用いたコントロール系のデッキは下火になるかと思います。
ピジョットコントロールはカビゴンへの依存度が高くないため残るかもしれませんが、ロトムVやシマボシ、ヒスイのヘビーボールなどは失われますし、そもそも元々こちらはそこまでシェアの多いデッキではないですからね。カビゴンLOがいなくなるだけでも、コントロールデッキと当たる頻度は大きく下がるのではないでしょうか。
ただ、その辺についてはI環境の新登場カードにも左右されるでしょうから、現状ではなんともいえない部分もあります。
カビゴンLOの今後の復活はあるか
個人的にはあると思っています。
そもそも、Fに登場したとおせんぼのカビゴン自体、2012年発売の拡張パック「プラズマゲイル」に登場したプラズマ団のカビゴンのリメイクみたいな感じですからね。特性の名前までそのままです。
また、ポケモンカードゲームの運営(株式会社ポケモン)がカビゴンLOのようなコントロールデッキをどう考えているか?という点について、1つ参考になる情報があります。
それが、ポケモンカードゲームトレーナーズウェブサイトに記載されている、ムウマージとジュジュベ&ハチクマンの禁止時の声明です。
ポケモンカードゲームにおいて、デッキ構築やプレイングによって対戦相手の行動を制限し勝利を目指すことは、戦術の一つとして認められています。その前提のもと、今回指定の2枚のカードは、他の一部のカードと組み合わせることで対戦相手の行動を極端に制限し、多様なデッキ構築やプレイングの幅を著しく狭める恐れがあるため、スタンダードレギュレーションにおいて使用できないカードに指定します。
原文はこちら。(強調は引用者によるものです)
この文章のスタンスはおそらく現在も維持されており、それがとおせんぼカビゴンが再登場したり、カビゴンLOが環境に登場して以降もビワやおはやし笛のようなカビゴンLO強化カードが登場した理由だと思います。
そして、今後もこのスタンスが維持されるのであれば、この手のロックデッキは今後も登場するでしょうし、環境デッキの強さになることもあるでしょう。
なお、この文章では「ポケカでもコントロールはありだけど、強すぎて環境の多様性を損ねるから弱体化するね」と書いていますので、今後カビゴンLOのようなデッキが再登場したとしても、強すぎるならば禁止カードを出す可能性はあります。
これについては世界的に人気のDCG、ハースストーンのリードデザイナーだったディーン・アヤラ氏がおっしゃっていたことが個人的には印象に残っています。
ハースストーンにはチケッタスというカードがあります。
このカード、普通に出すと自分の山札を上から5枚トラッシュするのですが、コスト7以上のカードを使ってから出すと代わりに相手の山札を上から5枚トラッシュしてくれます。
ハースストーンのデッキは30枚ですから、相手の山札を5枚トラッシュするというのは強力なデッキリソースの破壊になります。ハースストーンはトラッシュからのカード回収もほとんどないため、チケッタスはかなり不満を集め、開発者の元にも「早くチケッタスを修正しろ!」という意見が山のように届いたそうです。
しかし、チケッタスは修正されませんでした。
幾度となくリードデザイナーのアヤラ氏に寄せられた修正要望について、アヤラ氏は逐一返答されていたのですが、その返答をまとめるとこんな感じです。
「プレイヤーの中には、相手プレイヤーを妨害し、勝利プランを崩すことで勝ちたいタイプの者も存在する」
「そういうデッキは一般的に他のプレイヤーから嫌われやすい。しかし、そういった妨害主体のデッキが好きなプレイヤーのため、妨害主体デッキの選択肢を無くすことはしたくない。そもそも人々に嫌われるデッキを全て消していくと、アグロもコントロールもいなくなり、ミッドレンジだけの多様性がない退屈なゲームになってしまうだろう。それはしたくない」
「とはいえ、広く嫌われるデッキが環境に席巻するのは避けたいため、たとえば環境トップがそういう妨害デッキになってしまう場合、調整を行いそのデッキを弱体化させた方がいいと思う」
「チケッタスはたしかに不快感が強いようだが、データ上そんな強いカードではないし、チケッタスを入れているコントロールウォーロックも環境最強デッキなどではないため、現状修正は考えていない」
「しかし、今後チケッタスが環境で最多または最強デッキの採用カードとなるならば、修正が必要だと考える」
……という感じでした。
アヤラ氏の返答の一例については、上のツリーをご覧ください。
この考え方はあくまでハースストーンのリードデザイナーだったアヤラ氏の考え方なのですが、ひょっとしたらポケモンカードゲームの運営側にも似たような考えがあるんじゃないかな?と思っています。
すなわち「妨害が好きな人のために、妨害デッキは組めるようにしたい」「でも蛇蝎のごとく嫌われる妨害デッキを環境トップにするのは不健全だと思う」「だからニッチなデッキとして妨害デッキが存在できる程度に多様性を確保したい」ということです。
まぁ、株式会社ポケモンの方にインタビューしたわけではないので実際のところは分かりませんが、ムウマージとジュジュベ&ハチクマンが修正された時の公式の文書を見る限りでは、似たようなことを考えていてもおかしくないかな?と思っています。
カビゴンLOのシティリーグにおけるシェアは少なく、上位入賞の頻度で言ってもせいぜいTier3がいいところです。これがTier1やTier2になるようであれば禁止カード等でメスが入っていた可能性はあるかもしれませんが、Tier3であれば許容範囲内と考えていた可能性は大いにあるかと思いますね。
ですので、まとめると、「今後もカビゴンLOのようなロックデッキの登場は十分ありえる」「しかし、環境トップクラスにはならない程度の調整をされるのではないか」というのがわたしの意見です。
まとめ
・I環境になるとFのカビゴンやクチートがスタンダードで使えなくなるため、この手のロックデッキは一旦弱体化すると思う。しかしオーガポン いどのめんexやコジオなど、逃げるロック自体は残っているため、入れ替えロックを用いたデッキが根絶やしになるとは限らない。ただ、下火にはなりそう。
・I環境への遷移の際にカビゴンLOのような、環境レベルのコントロールデッキが消えた後も、たとえばカビゴンと似たカードが再登場する等して類似のデッキが復活する可能性があるかといえば、あると思う。
・なぜなら、そもそもとおせんぼカビゴン自体が2012年に登場したカビゴンを元にしたものだし、2020年にムウマージとジュジュベ&ハチクマンが禁止された際に妨害を主体としたコントロールデッキを公式が認めている旨を表明している。そうでなければ、とおせんぼカビゴンの再登場や、カビゴンLOの強化要素となるビワやおはやし笛の新録と矛盾する。
・ハースストーンという世界的に人気のDCGのリードデザイナーは「妨害デッキが好きな人のために妨害カードは無くしたくないが、嫌われ者デッキが最強になるのはよくないので、環境トップにならないように調整する」と語っていた。ひょっとしたらポケモンカードの運営も同じように考えて、Tier3のカビゴンLOを許容したのかもしれない。
……という感じです。
レジギガスフーパHANDやルカメタHANDのようなコントロールデッキはポケカでもたびたび登場していましたが、カビゴンLOくらいシェアが多いのは珍しかったですね。(HAND系は1枚数万円のプレイヤーズセレモニーが採用されがちだったのも一因だと思いますが)
しかし、I環境への遷移によってさすがに一度下火になるのではと思っています。今も別にTier1とかではなくTier3ですが、I環境では一旦Tier3にも残らない可能性が高いと考えます。
ただ、永遠の別れになるかというとそうでもなく、またいずれ登場することでしょう。とはいえ、しばらくは憎いあんちくしょうの顔は見なくて済むことになりそうです。
どうせ帰ってくるなら、アンノーンHANDみたいな能動的な勝利手段を持っていた方が相手からしても多少嬉しいかもしれませんね。まぁ、HANDについてもほぼほぼ詰ませた後に使うカードでしたから、相手の山札切れを待つのといかほどの違いがあるかというところでもありますが……
それでは、また。
※本記事の画像は、ポケモンカードトレーナーズウェブサイトおよびハースストーン公式ウェブサイトからの引用です。
コメント