ピカチュウex(トパーズボルト)発売前考察

 2024年9月22日のチャンピオンズリーグ東京day1で、新カードが公開されました。


 ピカチュウex(トパーズボルト)です。
 ポケモンシリーズの顔であるピカチュウが堂々登場なのですが、なかなか面白い性能をしています。
 「がんばりハート」と、草雷鋼で300ダメージを出す「トパーズボルト」を持っています。
 そんなピカチュウexについて、発売前の情報を元に考えてみたいと思います。よろしくお願いします。

強力な防御特性「がんばりハート」


 特性「がんばりハート」は、HP満タンでワザのダメージを受けるとHPが必ず10残る特性です。
 この性質のカード、今までも存在しました。F~H環境でいうならサバイブギプスですね。手ぶらの時点で既にサバイブギプスを持っているようなものですから、なかなかに優秀です。
 HP200はexのアタッカーとしてはだいぶ低いですが、サバイブギプスがついてくるならむしろHP330のリザードンexより実質的に硬い、みたいな状況は少なくないかと思います。

 ただし、この特性はダメカンが乗っていると発動しないですし、くるいえぐるのようなワザの効果によるきぜつに対しては無効です。真正面からの殴り合いでは無類の強さを誇りますが、少し絡め手を使われると容易に突破されうる脆さがあります。
 とはいっても、「ルールを持つポケモンからワザのダメージを受けた時」みたいな記載でないのは優秀だと思いますね。


高燃費大ダメージのトパーズボルト

 300ダメージです。
 3タイプが必要、エネルギーを3個トラッシュと条件およびコストは重いですが、300は圧巻の高ダメージです。
 VSTARおよび1進化exまでならば簡単に倒せますし、2進化exでもまけんきハチマキマキシマムベルトサマヨールのカースドボムなどで容易に射程圏内となります。

 まぁ、ステラミラクル環境だと単純な大ダメージというよりは、ファントムダイブやカースドボムのような立体的な攻勢が多くはありますが、300ダメージが弱いかといえば全くそんなことはありません。バトル場のポケモンを倒すことに特化したタケルライコexが環境トップになってますしね。
 そのうえピカチュウex自身は特性で一発耐えられるわけですから、「多くのポケモンを一撃で倒せるダメージを、一撃で倒されない特性に守られながら使える」という点で優秀といえます。


 また、きらめく結晶をつけて1タイプ1個のエネルギーを付けずにワザを使うことができます。
 なお、きらめく結晶をつけているとエネルギー2タイプ2個でワザを使えるわけですが、この際ワザの効果である「エネルギーを3個選び、トラッシュする」は完遂できません。しかし、その場合も300ダメージは放てますし、エネルギーは2個だけトラッシュすることになります。


 トレーナーズウェブサイトのQ&Aに「カウンターゲインを付けたラティオスでラスターパージを使えるか」という質問に対し「使える」との記載があり、これと類似しています。エネルギーのトラッシュはあくまでワザの効果なので、従える範囲で最大限従えばそれで大丈夫、となります。
 これを不自然に感じる方がいるとすれば、「エネルギーを3個トラッシュするというコストを支払うから300という大ダメージが出せるんだ」と考えているからです。「ワザが強すぎて反動でエネルギーが3個飛び散ってしまうんだ」と考えれば、2個しか付いてないんだから2個しか飛び散らなくて当たり前、くらいの認識になって受け入れやすいかと思いますね。

 なお、もしワザの記載が「エネルギーを3個選んでトラッシュしなければ、このワザは失敗。」だったならば、2エネでワザを使った際は失敗し、ダメージも与えられません()。
 


小回りが利かない

 ピカチュウexは小回りが利かない難点があります。
 たねexで300ダメージが出せる、というのは素晴らしいです。非常にパワフルです。
 しかし、古代バレットのトドロクツキHP140、サーナイトexデッキのラルトスHP70、あるいはHP30のピィにすら、300ダメージのフルスイングをするのでしょうか。あまりにも大振りです。そこが少し厄介なところです。

 別にHP30のピィに300ダメージを与えることそれ自体はいいのですが、トパーズボルトには自身のエネルギーを3個トラッシュするという大きな反動があります。そのため、exやVポケモンを倒す分にはともかく、非ルールのポケモンをこの大振りのワザで倒しているとエネルギー加速が追いつかず、息切れする可能性があります。
 ちょうど、レジドラゴVSTARが序盤からきょくらいごうトライフロストを使うとエネルギーを使い果たしてしまって動きが止まり、逆転を許してしまう可能性があるのと同じですね。もちろん構築次第ではあるでしょうけど、トパーズボルトを1試合に4回も5回も使うのがたやすいか、それで勝てるかと言われれば少し疑問です。

 ですから、ピカチュウexをアタッカーとして使うならサブアタッカーが欲しいかな、とは思いますね。
 ロストギラティナはギラティナVSTARの3エネ280ダメージがとっても強力ではあるものの、それだけだと大振りで使いづらいので、ウッウヤミラミで小回りが利くようになっているわけですし。それと似たような感じで、脇を固める小粒なサブアタッカーがいると使いやすくなるかな、と思います。

 いっそロストゾーン軸の構築にピカチュウexを入れるのもいいかもしれませんが、トパーズボルトの必要エネルギーに超が入っていないため、ヤミラミとエネルギーを共有できない難点があります。ただ、過去にもTordロストというエネルギーが4タイプ入ったロストゾーン軸構築がありましたし、あまり気にする必要はないのかもしれません。


 デンチュラexは草雷闘、ピカチュウexは草雷鋼であり、草と雷の2タイプを共有しているので、バチュチャージのバチュルはピカチュウexでも使えます。どちらかを軸にした3タイプデッキにして、片方は主にきらめく結晶で下ワザを使うサブアタッカーにするのもありかもしれません。
 アドレナブレイン1回で消し飛ぶHP30は果てしなく不安ですが、ワザ1回で4エネ加速は半ばGXワザの領域なので、そのパワーの高さゆえに採用が検討されうるかと思います。


 自らきぜつすることで基本エネルギー3枚を雷ポケモンに加速するレアコイルです。
 ピカチュウexともども超電ブレイカーに収録されているカードで、ザ・デザイナーズコンボという感じですね。
 雷エネルギー3枚を加速するのではなく基本エネルギー3枚を雷ポケモンに加速してくれるのがありがたく、ピカチュウexとは相性抜群です。事前にトラッシュにエネルギーを落としておく必要はありますが、逆に言えば2発目3発目のトパーズボルトの加速は非常にたやすいですね。まぁ、3発目を出す必要はないかもしれませんが……


 過去にシティリーグ優勝のミライドンデッキにも採用の実績があるボルトロスです。
 2エネ140ダメージは非ルールのサブアタッカーとして優秀なのですが、反動が痛いのと、ピカチュウexデッキはエネルギーのタイプが散ってしまうため、雷2個をちゃんと貼れるかがちょっと心配です。
 ベンチを守る特性「あくてんこう」も悪くないんですが、ピカチュウexには元々テラスタルの防護があるため実質的に恩恵はありません。「ワザの効果や特性でダメカンが乗らない」と書いてあれば最高でしたね。


 横並びに強いサブアタッカーのゼラオラです。
 大空洞デッキがベンチを埋めていれば2エネ180ダメージになります。7匹以上並んでいれば特性込みでバッフロンにも届きます。
 ただ、大空洞以外が相手なら最大100ダメージですし、横並びしてこないデッキに対してはパワー不足になってしまうデメリットもあります。


 横並びに強いサブアタッカーその2、ライコウVです。
 雷デッキの定番サブアタッカーだけあって、元々取り回しがよく強いうえ、大空洞デッキが相手だとまるでメインアタッカーであるかのようなパワーが出ます。HPの低さが頼りないところでもありますが、ルール持ちサブアタッカーとして採用の余地はあるでしょう。


 定番中の定番ですが、テツノカイナexも強力です。
 「小粒ポケモンに300ダメージフルスイングは非効率」というピカチュウexの難点を、小粒ポケモン特効のごっつあんプリファイが補うという、美しいコンビネーションです。
 ごっつあんプリファイは雷無無無というエネルギーの色拘束の緩さが特徴であり、エネルギーを3タイプ採用することになるピカチュウexでも使いやすいといえるでしょう。時代はピカチュウ&ゼクロムGXではなく、ピカチュウ&テツノカイナexかもしれません。



耐久戦法の選択肢

 ピカチュウexの欠点は、優秀な防御特性を持ちながらも、ワザのエネルギートラッシュにより継戦能力を失うため、相手はエネルギーの供給ラインを叩く選択肢がある、ということです。
 ルギアデッキでいうところの「ネオラントVのアクアリターンで攻撃したら場のエネルギーが消えて継戦能力が落ちるため、相手からするとアーケオスを叩く格好のチャンスになる」みたいなものですね。

 しかし、その欠点の帳消しにできる運用があり、それがワザを使わない耐久戦法です。
 要は、壁としての運用ですね。どれだけ大きなダメージを受けてもサイドを取られない壁としてバトル場に出し、サイドレースを有利にします。ある意味、ミミッキュみたいな運用ですね。


 更に、ピカチュウexを回復させる方法があれば、無限に耐久させることすら可能になります。
 ベルのまごころはHP10で耐えたピカチュウexを全回復して「がんばりハート」が再度発動するようにしてくれますし、エルフーンの進化時特性で全回復するという手もあります。ただ、ワザを使った後のピカチュウexがエネルギー0枚になっている可能性が高いと考えると、ベンチにポケモンがいるならボタンで事足りるかもしれません。

 全回復でなくとも、きんきゅうゼリーなら120回復なので追加で70回復できれば全回復になりますし、ポケバイタルAで150回復すればあと40ぽっちで全回復です。アドレナブレイン等と合わせて、耐久しながらダメカンを投げ返し続けるのも1つの戦法かもしれません。


特性の弱点

 がんばりハートの対策は、サバイブギプスの対策がそのまま適用できます。


 対策その1、ダメカンを乗せる。
 ルチャブルマシマシラサマヨールなどの特性で事前にダメカンを乗せておけば、がんばりハートの発動自体を封じることができます。

 なお、HP10になったピカチュウexに後からダメカンを乗せてトドメを刺すのもありですが、対戦相手も虫の息のピカチュウexをそう易々と放置してくるとは限らず、ボタンなどによる回収でトドメを刺せなくなる可能性はあります。
 また、ピカチュウexはテラスタルのポケモンなので、HP10になった後ベンチに引っ込んでしまうと、ワザのダメージによるベンチ攻撃からは無敵になります。たたりとばすは効きますがげっこうしゅりけんは効きません。


 対策その2、どくややけどにする。
 HP10で耐えられても、そこからポケモンチェックで特殊状態のダメカンが乗れば、しっかりきぜつします。
 更にポケモンチェックは誰の番でもないため、キチキギスexなどの特性も使えません。


 対策その3、ワザの効果で倒す。
 がんばりハートはあくまでワザのダメージに反応する特性なので、ワザの効果できぜつする場合は適用されません。
 ワザの効果でダメカンを20個乗せるようなものはほとんどありませんが、少なくとも強制きぜつのくるいえぐる、スターレクイエムについてはがんばりハートを貫通します。


 ちなみに、「このワザのダメージは、相手のバトルポケモンにかかっている効果を計算しない」と書かれているワザは、あくまでダメージを通せるというだけで、特性による食いしばり(HPが10残る効果)は無効化できません。
 過去にそういう裁定があります。勘違いしやすいかと思うので、要注意です。ヒスイジュナイパーVとか、いかにもピカチュウexを弱点込みでちょうど一発で倒せそうな見た目をしていますが、無理なのですよね。


 対策その4、特性を消す。
 防御特性なので、特性を消す効果によって無効化できます。
 汎用的なのがキャンセルコロンで、ミミッキュテツノイバラex対策のついでにピカチュウexも対策できます。


まとめ

・ピカチュウex(トパーズボルト)は防御特性「がんばりハート」がサバイブギプスと同様の「HP満タンでダメージを受けると10残る」という性質であり、耐久力に優れている。
・ワザ「トパーズボルト」は3エネ300ダメージという非常に強力なワザであり、2進化ex以外は問答無用で消し飛ばすパワーがある。
・しかし、ワザが3エネトラッシュのトパーズボルトだけであり、小回りが利かない。そのため、小型の非ルールポケモンを倒すためのサブアタッカーを採用したいところ。
・特性だけを活用する耐久戦法に用いるのもありかもしれない。
・ただ、特性には隙もある。事前にダメカンを乗せられると働かない、HP10で耐えてもどくややけどできぜつする、ワザの効果によるきぜつは防げない、特性を消されるリスクがある……等々。

 という感じです。
 特性が強く、ワザも火力に優れ、面白いポケモンだと思います。
 かつてそらをとぶピカチュウVMAXが環境上位デッキに入ったことがありますし、ポケカでピカチュウが大活躍!というのも見てみたい感じがします。色の縛りが厳しめなのと、環境的にダメカンを乗せられることが多そうなのがデメリットではありますが……
 「特殊な防御性能が付与された巨大砲台」みたいな性能なので、まわりを固めるエネルギー加速要員やサブアタッカーなどをしっかりと組み入れることでポテンシャルを引き出せるポケモン、という感じがします。プレイヤーの構築力の見せ所ですね。

 それでは、また。


※本記事の画像はポケモンカードトレーナーズウェブサイトからの引用です。

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