わたしは、古代陣営より未来陣営の方が好きです。
ポケモンの見た目は古代の方が好きです。わたしはロボットや機械がことさら好きということもないですし、テツノツツミやテツノイバラよりもサケブシッポやハバタクカミの方がかわいかったりかっこよかったりすると感じます。
古代陣営はやることが比較的まっすぐで、分かりやすく作られています。オーリム博士の気迫という、2エネ加速と3ドローをしてくれるすごいパワーカードがあり、これを軸にデッキを組み立てていく感じですよね。
サポート枠をオーリム博士の気迫に使いたいがため、ナンジャモやボスの指令を使いにくく、動きがやや直線的になりがちなきらいはありますが、オーリム博士の気迫のパワーがとても高いため多めのエネルギー要求も満たしやすく、パワフルな動きがしやすくなっています。エネルギー3個で強制きぜつワザを放てるトドロクツキexはその代表といえるでしょう。
一方、未来陣営の軸はどこにあるでしょうか。
オーリム博士の気迫と対になる未来博士サポートことフトゥー博士のシナリオは、未来陣営である意味があまりありません。実際、オーリム博士の気迫と違い、圧倒的に未来陣営以外のデッキで使われています。暗号マニアの解読も未来陣営になっただけの預言者ないしマオであり、未来陣営が使ってことさら強いカードには見えません。
それがテツノカイナexです。
ワザ「ごっつあんプリファイ」で、4エネ120という非ルールたね相当の控えめ火力を放ちつつ、サイドを1枚多く取るという神のワザです。かつてサイドを多めに取るワザというのはいくつも存在していましたが、中でもアルセウス&ディアルガ&パルキアGX(三神)は味方に永続的にサイド+1枚取り(+30ダメージ)を付与するものでした。
三神の影響で当時の非ルールデッキは絶滅し、タッグチームが殴り合う大怪獣バトルの様相を呈していました。テツノカイナexは三神ほどパワフルではないものの、サイドを多めに取るワザとしてはかなり優秀な性能をしており、パオジアンexデッキやロストバレットなど、テツノカイナexを採用するデッキは少なからず存在します。
そして、未来陣営はテツノカシラexによってテツノカイナexの与えるダメージを増幅し、一発で倒せる相手の範囲が拡大するほか、事前に削っておくことでexやVすらごっつあんプリファイで倒せるようになります。
未来陣営の最大の魅力は現状ここだと思います。わたしは未来陣営のカードが出始めた頃から、未来の軸はテツノカイナexになると頑迷に信じていましたし、同時にまた絶望もしていました。カウンターカイナもそうですが、未来陣営はどこまでいってもテツノカイナexを強く使うデッキにしかなれないと感じていたからです。
未来陣営はやることがテクニカルで、構築やプレイングの詰め甲斐があると感じていました。
テツノカシラexによりベンチ枠を火力アップに転化し、足りないエネルギー加速をミライドンで補い、ブーストエナジー未来でも火力を増やしつつにげるコストをなくすことで柔軟な動きが可能になり、またテツノブジンのような特性でダメージを飛ばすポケモンも擁しています。
でも、そんな小細工がいくらあったところで、テツノカイナexのパワーが高すぎるがゆえに、未来陣営の頂点はテツノカイナexをうまく使うデッキ以外にはなりえず、他はすべてファンデッキになってしまう可能性が高い、そう感じていました。
より正確に言うなら、未来陣営で最大のポテンシャルを持つカードがテツノカイナexであるがゆえに、未来陣営のカードは原則テツノカイナexが使った時のパワーを上限として設定されると思われます。テツノイバラexが使うとめちゃくちゃ強いカードがあったとして、それをテツノカイナexが使うと環境が破壊されてしまう(くらい強い)可能性が高いということです。
もちろん、ポケカはそこまでシンプルではありません。しかし、今後ある程度の汎用性を伴って登場する未来陣営のカードは、いずれもテツノカイナexが使って壊れないということを念頭に置かれることは容易に想定されますから、ここでデザインの幅に制約が生まれることは想像に難くありません。
デザインが制約あってのものというのはそうなのですが、その制約が窮屈なものかどうか、という価値基準はあると思います。
かつてハースストーンというゲームでは、「デッキのカードのコストがすべて偶数/奇数だと強くなる」というカードがありました。通常、春に出た新カードは2年間スタンダードで使えるのがハースストーンのルールなのですが、この偶数奇数絡みのカードは1年短縮され、異例の1年でスタンダードから放逐されました。
パワーが高すぎるあまり、環境デッキは偶数デッキ・奇数デッキばかりになり、あらゆるカードデザインに「偶数だと強すぎないか、奇数だと他の奇数のカードとシナジーがありすぎないか」といった制約が生まれ、デザインの幅がなくなってしまったからです。
たとえば、本来2コストが妥当なカードAと4コストが妥当なカードBがあり、シナジーがありコンボになるものの、偶数デッキでそのコンボを使うと強すぎるため、あえてBをコスト5にする……となると、そのコンボ自体が弱くなりすぎてしまいます。かといってAをコスト1にすると単独で強すぎるうえ、今度は奇数デッキで壊れてしまうという問題があり……といった塩梅ですね。
ポケカにおいても、未来陣営のカードはエースであるテツノカイナexが使った時のパワーを基準に設定せざるをえない部分があり、実質テツノカイナexが使わなければファンデッキ相当のパワーにしかならない、というのは十分あり得る話かと思います。
事実、現在テクノレーダーやテツノカシラexといった未来デッキ用パーツを駆使して環境である程度結果を残しているのはテツノカイナexデッキだけであり、乱暴に言うなら他はすべてファンデッキのパワーでしかない、ともいえるでしょう。
未来陣営のエネルギー加速が貧弱なのもまさにそれで、未来陣営がガンガンエネルギーを加速できてしまうとテツノカイナexが簡単にごっつあんプリファイを撃ててしまって環境が破壊されるリスクがあるため、抑制されているのだと思います。
古代陣営もトドロクツキexの3エネ強制きぜつが強いことは強いのですが、非ルールデッキへの刺さりが悪いというデメリットがありますから、後1くるいえぐるという大技があってなお、壊れているとまではいえないといったところです。
一方で、ごっつあんプリファイがまるで意味をなさない試合というのは稀です。exはVSTARなどと違って進化前が非ルールのため、進化exが採用されている限りそのデッキには非ルールのポケモンが存在し、そして非ルールの進化前ポケモンはほぼほぼHP120以下です。そして非ルール不在のデッキですら、ネオラントVやイキリンコexといった雷弱点システムポケモンは一撃必殺、テツノカシラexやブーストエナジー未来のある未来デッキならHP低めのミュウexなども一撃圏内となります。
くるいえぐるは大ダメージワザでおおむね代替可能ですが、ごっつあんプリファイは「サイドレースを有利にする」「ビーダル等の相手のシステムポケモンを倒しつつサイドレースで遅れを取らない」といったメリットがあり、くるいえぐるほど代替可能性が高くないんですよね。いちおう、げっこうしゅりけんやキョダイレンゲキのような複数攻撃が類似の役割を果たせますが……
では、未来陣営とは環境デッキになりうるテツノカイナexデッキとその他有象無象のファンデッキでしかありえず、未来陣営のカードはテツノカイナexの侍女でしかないのか?というと、必ずしもそうではないとも思います。
カードデザイン上、ある程度の汎用性をもたせた未来陣営のカードはテツノカイナexに利用されやすいという構造的な難しさはありますが、たとえばリブートポッドは未来ポケモン全員に1個の基本エネルギー加速ですから、テツノカイナexにとってそこまで強いカードではありません。まぁ、テツノカイナexにとってそこまで強くない程度の性能で調整した結果生まれたカードに見えなくもないですし、テツノカイナex以外が使ってめちゃくちゃ強いカードというわけでもないのですが……
あとは、「未来ポケモンが相手のベンチポケモンに与えるダメージ+20になる特性持ち」「ルールを持たない未来ポケモンに付けた時のみ全てのタイプ2個分として働く特殊エネルギー」のような、テツノカイナexには恩恵がまるでなく、かつ他の一定数の未来ポケモンにとってはかなりありがたい効果を持つカードを、テツノカイナexに次ぐ未来陣営の柱にすることも可能です。
そのため、わたしは未来陣営がテツノカイナexの侍女でしかありえないと盲信しているわけではありません。ただ、調整次第では「環境における未来陣営とはテツノカイナexが軸のデッキのことである」となってしまう可能性は大いにあり、それを危惧している……というのが正しいです。
CL福岡大会の環境もそうでしたが、現在のポケモンカードの調整は個人的にとても巧みだと感じているので(コントロールがけっこう強い調整に好悪はあるでしょうが、デッキの多様性という面では高く評価できると思います)、おそらく未来陣営の破滅的な未来、クソデカい力士以外が未来陣営を代表して戦うことはなくなるというのはわたしの杞憂に終わるでしょう。
杞憂に終わってほしいです。よろしくお願いします。
まとめです。
・未来陣営はテクニカルな要素が多めでやりこみがいがありそうだけど、テツノカイナexのパワーが頭抜けているため、未来陣営の単純な強化はテツノカイナexデッキがパワーキャップとなり、他の未来デッキはファンデッキになり下がるかも、と危惧している。
・古代陣営でパワーが抜けているのはオーリム博士の気迫なので、デッキのバリエーションが限られるリスクは未来陣営ほど高くないと考えている。
・未来陣営の強化の仕方次第では、ある程度汎用的な未来サポートカードであってもテツノカイナexを避けて強化することはできるので、別に絶望しているわけではない。
・最近のポケカは2進化1進化たね非ルールコントロールと様々なデッキが戦える環境を作っていて調整が巧みに感じるので(2進化はリザードン一辺倒な感じはあるけど)、きっと杞憂に終わるだろうと信じたい。
……といったところです。
なお、前言を翻すようで心苦しいのですが、わたしは基本的に進化デッキが好きなので、未来陣営古代陣営自体がそもそもそこまで環境を席巻してほしくない気持ちも多少あります。
それでは、また。
※本記事の画像はポケモンカードトレーナーズウェブサイトからの引用です。
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