トリトドン(ねんちゃくしばり)発表時考察

 超電ブレイカーの新カードが発表されました。


 トリトドン(ねんちゃくしばり)です。
 自身がベンチにいる限り、お互いの相手のベンチの2進化ポケモンの特性を消してしまうという、かなり強力な特性を持っています。
 本記事では、このトリトドンに関して発表時の情報を元に考えてみたいと思います。よろしくお願いします。


強力な2進化システムポケモン対策

 トリトドンは、ベンチで特性を使って味方を支援するポケモン、いわゆるシステムポケモンの中でも2進化を狙い撃ちにします。
 ポケカではしばらく強い2進化があまり多くありませんでしたから、この手の2進化対策カードは少なかったように思いますが、最近は強い2進化も増えましたし、ペパーワザマシン エヴォリューションにより2進化特有の安定感のなさもカバーされてきていましたから、グラビティーマウンテンしかり、2進化対策を増やしている感じですね。


 特性持ち2進化ポケモンといっても、たとえばリザードンexのようなメインアタッカーにとってはそこまでクリティカルではありません。
 たしかにベンチのヒトカゲやリザードを進化させてれんごくしはいを使えないのは痛いといえば痛いのですが、リザードンexはバトル場に出て戦うメインアタッカーですから、バトル場で進化できれば特性が不発にされることはありませんし、それによる不都合も少ない方です。
 問題は支援専門の2進化ポケモンです。2進化システムポケモンは最近強いものが多いため、トリトドンによって苦境に立たされる可能性があります。


 アーケオスはルギアデッキのキーカードであり、特性によってベンチでエネルギー加速をするのが基本ですから、トリトドンが鮮やかに刺さります。
 アーケオス1匹目をバトル場に出してプライマルターボ、逃がして2匹目を出してプライマルターボ、ジェットエネルギーでアタッカーを出して攻撃……みたいな動きもできますが、毎度都合よくジェットエネルギーが手札にあるわけではないですし、逃がす際にエネルギーのトラッシュが発生します。ルギア側からするとだいぶ窮屈になりそうですね。
 トリトドンがHP130でごっつあんプリファイを耐えるのも、ルギア側からするとサイドレースの優位性を保ちつつトリトドンの排除がしにくいという点で面倒なところです。


 セグレイブはパオジアンデッキのエネルギー加速要員であり、やはりベンチで特性を使ってのエネルギー加速が大原則です。
 バトル場に出せば特性は使えるものの、プライムキャッチャーなどが手札になければ逃がす必要があり、逃がしてパオジアンexを前に出して逃がす際にトラッシュされた水エネルギーをスーパーエネルギー回収で回収して更に特性が加速……という動きをしようとすると、ねんちゃくしばりが働いて加速できなくなります。


 ピジョットexはまさに「ベンチで特性を使って毎ターン味方を支援するシステムポケモン」であり、特性を止められるのは大打撃です。2進化exの中でもことさら脆いHP280の、頼りない置物になってしまいます。
 まぁ、ピジョットexは逃げるエネルギーが0なので、バトルポケモンを倒された後にピジョットexをバトル場に出してマッハサーチして逃げてアタッカーを出す、という動きで特性封印を回避できますが……毎ターンバトルポケモンを倒されるわけでもないですからね。安定感が損なわれる可能性はあります。マッハサーチできないターンも生じるでしょう。

 ちなみにピジョットコントロールについていえば、たしかにベンチで特性を使うことが多そうではあるものの、闘エネ要求でにげる3のトリトドンを縛るのが容易に見えるため、脅威かというと疑問には思います。


 サーナイトexもまたベンチで特性を使うのが主なポケモンであり、サイコエンブレイスを封じられるのは厳しいところです。
 バトル場に出てきて190ダメージを出す動きもマッチアップ次第では普通に強いのですが、サーナイトexの強みはやはり出足がやや遅い代わりに非ルールのアタッカーを押しつけて戦えるところですからね。

 いちおうサーナイトexをバトル場に出し、特性を使ってから自身にも2エネ付けて逃がす、というのも手ではあるのですが、逃げた後にサイコエンブレイスが使えないため、超エネルギーが不足するリスクもあります。
 どちらかというと、後手に回りやすい性質を利用し、カウンターキャッチャーでトリトドンを呼び出して倒すという手が使いやすそうではあります。キルリアの特性は止まらないので引き込むのは難しくなさそうですしね。なんならにげるエネルギー3個のトリトドンをバトル場に放置してサケブシッポでベンチを狙う手もあります。アンフェアスタンプ等と併用できると強そうです。


 カースドボムでお馴染みのヨノワールにも有効ですが……さて、いかほどでしょうか。
 ヨノワールはシステムポケモンというよりはサブアタッカーめいており、1回特性を使えばそれで役目は終わりですし、バトル場で特性を使うと入れ替えが発生するためベンチで使う必要性も高くなく、またトリトドンのHPが130のためカースドボムで共倒れになります。
 もちろんベンチでカースドボムできなくなるのは厄介ですし、カースドボムをトリトドンに撃たせればアタッカーを守れるという考え方もできるものの、ヨノワールに対してクリティカルな対策になっているかといえば微妙なところかなと思います。

 なお、念のため書いておきますがサマヨールは問題なく爆発できます。なので、サマヨールで爆発→相手にサイドを引かせてサイド不利になる→カウンターキャッチャーでトリトドンを呼んでねんちゃくしばり解除、という動きも状況次第でできますね。



トリトドンの欠点

 第一に、1進化である点です。
 1進化で2進化を封じられるのはお得な感じもありますが、逆に言えば2進化を採用していないデッキに対しては役立たずであり、デッキの2枠を無駄に消費しただけになります。
 ポケモンカードはサーチの強いTCGなので、1枚挿しのメタカードは正当化しやすいのですが、2枚となると話は別です。ドラパルトexがこれだけ強くてなおベラカス(スフィアシールド)はレアですし、ミロカロス(なぎのきょうち)リククラゲ(ねんきんコロニー)なども刺さる相手には刺さるのですが採用は非常に少ないです。

 結局のところ、「メタカード(対策カード)で特定の相手を対策するのはいいけれど、対策対象以外のデッキに対する勝率が落ち、総合勝率が下がるとなると元も子もない」というTCGにありがちな話です。オンバーンexを対策しようとしてタケルライコexの構築を歪めると対ドラパルトexの勝率が落ちる、みたいな感じですね。
 もちろん特性持ち2進化に頼ったデッキが環境に多いとか、特性持ち2進化に特に弱いけどそれ以外にすごく強いとかであれば、トリトドンの採用が勝率を上げるための最適解というシチュエーションはありえますので、一概には言えません。ただ、メタカードは別に積み得ではない、ましてや2枠も取るなら……ということです。


 なお、メタモン◇のような優秀な分岐進化元がいると話は少し変わります。
 メタモン◇の時代も、アローラベトベターを入れずにアローラベトベトンだけ入れてメタモン◇から進化する、というデッキがありましたし、それなら1枠しか使わないうえ相手に読まれにくい利点もありますので、1進化のメタカードも採用しやすくなりますね。



 第二に、ベンチでしか特性が働かない点、ベンチにしか特性が働かない点です。
 自身もベンチにいないといけない、2進化の特性もベンチにいるものしか封じられないと、隙があるのが欠点といえます。採用率95%前後のボスの指令で解除できますからね。
 まぁ、エヴォリューションで2匹並べればボスの指令で解除されなくなりますが、その場合少なくともトリトドンラインが2-2で入ることになります。
 2進化不採用のデッキに対して、デッキにハズレカードが4枚入った状態で戦うことになるのはけっこうしんどいかなと思います。ユキメノコくらい刺さる相手が多ければ、厚く積んでデッキの軸にしつつ刺さらない相手はあきらめるというのもありかもしれませんが……

 ただ、それで完封できるデッキが多いのであれば、やる価値はあります。
 あるいは、逆にたねポケモンを完封しやすいカードもあれば、トリトドンと両採用して相手によって詰ませ方を変えるというコントロールめいた動きも可能かもしれません。相手によってミミッキュオーガポン いしずえのめんexカビゴンのどれで詰ませるかを変えるカビゴンLOみたいですね。

 あとは、ベンチで働く点を利用して、バトル場にも特性封印ポケモンを置く、というのもありです。
 たとえば、バトル場にハバタクカミを出せば2進化ポケモンは逃げ場なし、どこにいても特性を封じられます。クレッフィなら2進化とたねの特性を同時にロックできます。いずれにしてもボスの指令1枚で一気にどっちも解除されるのが渋いですが……
 いずれにせよ、トリトドン自身も特性の対象もベンチ限定という隙自体は大きなデメリットであり、2進化デッキ側からすればそこが付け込むチャンスになります。



 第三に、2進化特性対策以外の役割がない点です。
 進化前のカラナクシも含め攻撃面は弱いですし、3エネ170出せる分岐進化先はいるもののエネルギーの色拘束が強く、闘デッキ以外ではそうそう使えません。
 そのため、本当に2進化特性対策のためだけに入れることになるのが難しいところです。汎用性に乏しい、ということですね。


 たとえば、ミュウexをゲッコウガex対策として採用する、というシチュエーションを考えてみます。
 この場合、相手がゲッコウガexを採用していないとミュウexが無駄になるかと言われればそういうわけではなく、にげる0なのでバトル場のポケモンがきぜつした時にとりあえず出せますし、ゲノムハックはミミッキュ等にも有効なうえ、特性のリスタートで手札補充も可能です。
 このように役割の多いポケモンであれば、想定される対策対象がいなかったとしても何かしらの役割が持てるため無駄になりにくく、採用のハードルも下がりやすいのですよね。逆に言えば、特定のポケモンの対策にしかならないカードというのは無駄になるリスクが高く採用しづらい、ということになります。



 第四に、にげるエネルギーが3個も必要な点です。
 きょうびデッキの入れ替え手段やエネルギーは絞られる傾向にあるため、にげるエネルギーが重いというのは致命的になりやすく、場合によっては詰まされてしまう可能性があります。

 まぁ、進化前のカラナクシはにげる2なので、たねでにげる3のチヲハウハネ(てつつぶし)等よりはバトル場スタートのリスクが低いとはいえるのですが、いずれにせよカラナクシスタートはあまりしたくないですし、ベンチにトリトドンを出したとしてもバトル場に呼び出され縛られてベンチ狙撃で負け、あるいは時間を稼がれて負けというパターンが考えられるので、そこがネックではあります。



トリトドンは強いのか?


 かつて、アローラベトベトン(かがくのちから)がいました。
 場にいるだけでたねポケモンの特性をすべて消してしまう特性を持ち、当時の環境デッキであるルガゾロなどに1-1や0-1での採用が見られました。(0-1はメタモン◇からの進化)
 当時、ルール持ちデッキはサポートサーチのカプ・テテフGX、非ルールデッキはジラーチ(ねがいぼし)と、たねポケモンの特性はよく使われていましたから、効かないデッキが少なく、抜群の性能を誇りました。
 にげる4というカビゴンクラスの超重量級ですが、当時はグズマという「ボスの指令+ポケモン入れ替え」なサポートが多用されていたため、さほど問題になりませんでした。

 ただ、一方でトリトドンは2進化という限られた対象ですし、ベンチにいる時限定、対象もベンチ限定という制限付きです。
 これはアローラベトベトンが強かったため調整したとも考えられますが、ボールで持ってくるだけでいいたねポケモンと違って2進化ポケモンは場に出すのに手間がかかりますし、そのぶんあえて採用する場合はデッキの軸になりがちなため、アローラベトベトンくらい雑に特性封印できるようにすると強すぎるおそれがあり、加減された可能性が大いにあると思います。

 もしトリトドンの特性が「このポケモンがいる限り、2進化のポケモンの特性はなくなる。」だったとしたら、パオジアンデッキとか「どう勝つの?」となりますよね。
 後1か先2でトリトドンを置かれた時点で、手貼り3回からバスターテールヘイルブレードでトリトドンを呼び出してワンパンしないといけないという話になるのですが、さすがに酷というものでしょう。(バトル場に呼び出してキャンセルコロンハバタクカミで解除するという手もありますが……)
 今までもミカルゲでたねポケモンVの特性封印、テツノイバラexでルール持ちの特性封印など色々ありましたが、出す手間が必要でデッキの軸になりやすい2進化の特性をどこからでもカジュアルにロックできるようにしてしまうと、環境から弾き出されるデッキが多すぎると思います。

 なのでトリトドンは隙があるように作られているのだと思います。
 とはいえ、隙があっても刺さるところにはしっかり刺さるようになってますから、結局のところはメタカードらしく環境により採用数の増減が大きそうですね。
 特性持ち2進化が席巻していればデッキを2枠費やしても採用する価値があるでしょうし、そうでなければいまひとつでしょう。
 「ピジョットexやヨノワールを完封できるわけではない」というのは弱いところかもしれませんが、たとえ「1ターン遅らせるだけ」であったとしても、現代ポケカのスピード感で1ターンの遅れは容易に勝敗を分かちます。しかしトリトドンを場に出すのにも少し手がかかりますから、1ターン遅らせるためにリソースを割く必要があると思うと、純粋に1ターン先んじたともいえないのが難しいところです。

 そういうわけで、わたしの結論としては「環境デッキに採用されうるポテンシャルはある、でも隙があるよう作られているし刺さらないデッキも少なくないので、雑に採用して強いポケモンかは疑問」というところですね。



まとめ

・トリトドン(ねんちゃくしばり)は特性で2進化ポケモンの特性を消してしまえる。これはアーケオス、ピジョットex、サーナイトexなど現環境にも対象となるポケモンが多く、それ自体は有用に思える。

・しかし、1進化でありデッキを2枠占める、ベンチにいる時限定・ベンチの2進化限定と縛りが多くボスの指令などで解除されてしまう、2進化対策以外に役割がなく汎用性に欠ける、にげるエネルギーが3個必要で縛られやすい等の欠点もある。

・刺さる相手を完封できないまでも、現環境のゲームレンジを考慮すると1ターン遅らせるだけでもメリットは小さくないため、総合的には環境や使い方次第で有効に働く可能性はある。ただ、隙が多くつけ入りやすいことから、対策の対策もしやすい優れたデザインのカードであるように思える。

 ……という感じです。
 個人的には、このトリトドンがガチガチの2進化特性ロックだったらそれはそれでよろしくないと思いますので、このくらいの塩梅でよかったと安心している部分の方が大きいです。

 2024年10月10日現在、環境で強さと汎用性を兼ね備えた2進化ポケモンの特性といえばカースドボムマッハサーチだと思いますが、前者はバトル場で使ってきぜつして入れ替え可能、後者はバトル場で使ってにげる0で入れ替え可能と、トリトドンを出される側が対処しやすいような調整だと感じます。
 個人的にはその方が好きというか、そもそも2進化ポケモンって出す手間がかかる代わりに強いという性質がありますから、対策カードが多かったり強かったりするのはあまり快く思えないのですよね。まぁ、サンムーンやソードシールドの頃と比べると2進化もだいぶ強くなったので、対策カードが存在すること自体には文句はないのですが、ほどほどにしてほしいなと思っているのが正直なところです。

 もちろん、2進化の中でも抜けて強いものは存在しますし、そういったカードがバランスを破壊しうるという懸念も理解できるのですが、個別に対処してほしいというのがわたしの本音です。
 2004年にもマッハサーチのピジョットは存在しましたが、これに対して無色・鋼・悪の進化ポケモンの特性を無効化するバトルフロンティアや、exでない無色ポケモンの起動型特性を無効化するソルロックが登場し、その強さを抑制しようとしていたようですしね。
 まぁ、雑に強い対策手段を出すと巻き添えが増え、環境の多様性が損なわれてしまうリスクがありますから、強すぎる(と目される)2進化ポケモンの一部特性については、あまり巻き添えを出さないよう、いい塩梅で対策してほしいと願ってやみません。

 それでは、また。


※本記事の画像はポケモンカードトレーナーズウェブサイトおよびポケモンカード公式チャンネルからの引用です。

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