最近、ハースストーン創作カード大会に参加させていただいてます。
元々友人とオリジナルのカードを作って遊んでいたので、イベントとしてやっておられるのを見て「ぜひ参加したい!」と思った次第です。
創作カードという自己満足を同好の士と見せ合うのって、楽しいですね。3DSのゲーム「とびだせ どうぶつの森」の住宅展示場で、すれ違った人たちと家を見せ合うのが何より楽しかったのを思い出しました。
本記事では、そんなわたしがハースストーン創作カード大会に投稿したカードを中心に、いくつかご紹介したいと思います。よろしくお願いします。
リンゴ売りの老婆
わたしがハースストーン創作カード大会初参加の時に投稿したカードです。
「休眠状態」をテーマにした大会でしたが、「休眠といえばこの童話だよね」と思い立ち、作りました。
お察しの方も多いかと存じますが、キャラクターとして白雪姫に登場する魔女をモチーフにしています。魔女は白雪姫に毒リンゴを食べて眠らせますが、王子様のキスによって目覚める……という有名な筋書きです。ディズニー版のお話ですね。
キャラクターから思いついたため、性能は後から考えました。
「毒リンゴで休眠状態にさせる」「目覚めるのに王子様のキスを要求する」という点から能力は作りやすく、作成した王子様ミニオンの雄叫びで目覚めさせる案もありましたが、分かりやすさを優先して「王子様のキス」という自動詠唱の呪文を相手のデッキに埋め、それを引いた時に目覚めるようにしました。
かつて休眠状態を付与するカードとして「マイエヴ・シャドウソング」がいましたので、それを意識しながら作りました。マイエヴは4/4/3で、アグロデッキで敵の挑発持ちをどかしながら敵のヒーローの体力を削り切るために使用されていましたね。
マイエヴがアグロで強かったこともあり、「コントロール向けのマイエヴを作ろう」という意気込みでした。「相手が特定の自動詠唱呪文を引くまで休眠状態にさせる」というのは、マイエヴの2ターンより短くなる可能性もありますが、長くなる可能性の方が高く、疑似的な除去としてマイエヴより強力だと思いました。
他の能力についてですが、毒リンゴを売っているのでシンプルに「猛毒」を付けました。
コントロール向けなので積極的に顔を詰められるのはあまりよくないと思い、攻撃力は1にしました。
さて、体力は……?と考えた際に、4/1/4と4/1/3でだいぶ迷いました。適正な強さはどちらだろう、と。
「別に実際ハースストーンに登場するわけじゃないんだから、テキトーでいいのでは?」というのは一理あると思いますが、極端な話いくら他の部分の出来がよかったとしても「1/10/10突撃、デメリットなし!」みたいなカードを見せられたら興ざめではないでしょうか。
「実際にゲームの中にあってもおかしくない強さ」というリアリティは、創作カードにおいても重要だと考えました。わたしがそれを実現できるかは別として、目指す必要があるとは思いました。
そこで、わたしが注目したのは「猛毒スコーピッドは3/1/3」という点でした。呪文発見より擬似確定除去の方が価値的には高いですから、4/1/3でいいのでは?と思い、4/1/3にしました。
猛毒スコーピッドは4年前のカードですし、こちらはレジェンドですから、4/1/4でもよかった気はしますが、雄叫びと猛毒で1:2交換できるのですから4/1/3でもプレイアブルだと判断しました。中立の擬似確定除去が強すぎるのもよくないですしね。
かくしてカードが完成しました。
名前は「リンゴ売りの老婆」にしました。固有名詞ではないですが実質的に特定の人物を指すため、レアリティはレジェンドです。黒騎士みたいなものですね(たぶん)。
休眠状態を与えるカードというのはほぼほぼターン制限がありますし、休眠状態中に作動する能力を持つカードは「いずれ目覚めること」を前提にしていますから、使いようによっては面白いコンボができそうにも感じます。
たとえば、未発売マグゼリドンは休眠状態中、ターン終了時全ての敵に3ダメージを与える能力を持ちますが、リンゴ売りの老婆によって休眠状態にすると2ターンどころかもっと長い間3ダメージを飛ばし続けられる可能性があります。
スチームクリーナーで王子様のキスを焼いてしまえば、休眠状態はもはや永眠状態となり、マグゼリドンは永続的に3ダメージを飛ばし続ける置物と化しますね。
ブラックジャックの切り裂き魔
「11」をテーマにした大会の時に投稿したカードです。
ハースストーンにおいて「11」はスタッツにしろコストにしろ非常に大きな数字なので、どう扱ったものか迷いましたが、トランプゲームの「ブラックジャック」をモチーフにする案を思い立ち、作成に至りました。
かつて文書管理官エリシアーナは「構築の対戦中に突然アリーナを始めるミニオン」みたいな言い方をされていたことがありました。それと同じように、「ハースストーンの対戦中に突然ブラックジャックを始めるミニオン」がいたら面白いのでは?というのが出発点です。
トランプゲームのブラックジャックは、手札の合計を21に近づけるゲームです。21を超えてしまうと負けですが、21以下の場合は親より21に近いと勝ちになります。中でも、10/J/Q/Kの「10」扱いとなるカードと、1としても11としても扱えるAの2枚を組み合わせた「ナチュラルブラックジャック」は最強の手とされています。
11そのものを狙うゲームではないですが、11という数値が重要な役割を果たしうるため、11をテーマにしたカードとしてなんとか成立しているように思いました。
かくして、このようなデザインになりました。
自身がコスト10であり、雄叫びで合計コストが11以上になるまでカードを引いて、ちょうど11になったなら大きなボーナスを得る……という形です。
21以外は当たりではないよう簡略化されてはいるものの、ハースストーンの最中にブラックジャックを始めるカードにはなりました。要は、自身のコストと引いたカードのコストの合計で21を狙うというデザインです。
ただ、性能的にはイマイチな気がしました。10/10/10で突撃と生命奪取が付くといえば聞こえはいいものの、21ちょうどにならなければ盤面に残るのは無貌の巨怪ですからね。
まぁ、コスト11以上分のカードをドローしてはいるのですが、デーモンハンターは元々ドローが得意なのでどうかなという感じです。令和7年の10マナカードに求められる性能は下回っているように思いました。
もっとも、悪魔発見などから拾ってくる分にはバリューがありますし、別に構築デッキに採用されるだけがカードではないと思ったため、結局このままにしました。本当は生命奪取は雄叫びで付与ではなく最初から持っているようにしようとも思いましたが、5行で綺麗にまとめる文章が作れなかったのでやめました。
カード名は「ブラックジャック」というトランプゲーム自体が(大富豪や神経衰弱と比べて)そこまでメジャーというかカジュアルではない気がしたので、モチーフが分かりやすいように「ブラックジャックの」と入れました。
「切り裂き魔」は……なんか強そうなので付けました……という部分もありますが、イラストに無免許医「ブラック・ジャック」の要素を入れることを決めていて、ブラック・ジャックといえば医療用メスですから、それに合う名前にしようという意図もありました。
まぁ結果として、ブラック・ジャック要素は黒い服と医療用メスくらいになりましたけどね。一応、ペストマスクをかぶっているのは医師ゆえという発想でしたが、そこはブラック・ジャック要素というより連想ゲームの域かなと思います。
ちなみに、当時もう1枚ブラックジャック絡みのカードを作っていました。
こちらは投稿作ではありません。大会では「ブラックジャックの切り裂き魔」と「十一の顔を持つ英雄」の2枚を投稿したため、没になった第3案です。
「ブラックジャックの真打」は、ブラックジャックにおけるA(エース)のカードが「1にもなるし11にもなる」という点に着眼したカードで、スタッツは1/1ながら条件を満たすと11/11になるという性質を持ちます。オーバーロードのマナと自身のマナコストを合わせて11にする、このカードはAなのでそれは21でもある……というデザインです。
最初は「ブラックジャックのエース」という名前でしたが、あまりに直截的だと感じたため「真打」にしました。「真打」と書いて「エース」と読ませるというのはここだけの話なので、誰にも内緒にしてください。
系譜の抹消
系譜をテーマにした大会で投稿したカードです。
「ウンゴロ最後の秘境」ではデーモンハンターが燻煙消毒や昆虫スレイヤーといった種族メタカードをもらっていました。(中立の荒野の看守が先ですが)
この種族メタが好きだったため、似た系統のカードを作りたいと思い、作成に至りました。
「特定種族を戦場から一掃、更に系譜発動でお互いの手札とデッキからも一掃!」という派手なデザインですが、デーモンハンターには歴史的に確定除去が許されていないため、プリーストとのデュアルクラスカードにすることでこの問題を解決しました。プリーストの渦巻(とローグのフリック・スカイシヴ)は同名カードを手札やデッキからも破壊する効果があり、この呪文の系譜の効果と似ていますしね。
お互いのデッキから特定種族を全除去してしまうというのは、デッキコンセプト崩壊に繋がるラディカルでクリティカルな効果であり、刺さる相手には尋常でなく刺さってしまうためよくない気もしましたが、まぁそんなカードがあってもいいんじゃないかな?とも思いました。
待ち伏せのガイストやスチームクリーナーも1枚でデッキコンセプトを破壊しうるカードですが、存在を許されていますからね。キルジェイデンをはじめ、消耗戦型コントロールのデッキコンセプトを1枚で破壊するカードは枚挙にいとまがありませんし。
ただ、濫用されると構築の幅が狭まってよくないですから、「基本的には採用に値しないが、種族デッキが環境を支配した時のみカウンターとして採用の余地がある」くらいを目指したいな、と思いました。
そのため、系譜の抹消には欠点をいくつか作りました。
まず、コストが高いこと。
ハースストーンにおける無条件の単体確定除去の相場は……ヒーローにもよりますが、まぁ4マナくらいではないでしょうか。
系譜の抹消は、破壊対象が種族を持たないミニオンである時、または種族を持っていたとしても巻き込めるミニオンがいない時、ただの6マナ単体確定除去になってしまいます。時間断絶や密言・盗よりもだいぶと弱いですね。
マッチアップ次第では6マナ単体確定除去としてしか使えないカードをデッキに採用するとなると、勝率はきっと下がるでしょう。刺さるデッキの多い環境でなければ採用に値しないカードになる……はずです。
次に、デーモンハンターでの系譜発動が難しめなこと。
スタンダードのデーモンハンターには影呪文が1枚しかないので、系譜発動が困難です。
もっとも、デーモンハンターは確定除去をもらえないクラスなので、相対的に確定除去の価値が高いという意味では、プリーストよりも強く使いやすい部分もあります。それでも6マナは割高な気がしますけれどね。
あとは……敵にしか撃てないこと。
これは欠点というか調整の一環で、自分の融合体に系譜の抹消を撃つことでお互いのデッキから種族を持つミニオンを一掃してしまうのはちょっとやりすぎな気がしたので、できなくしました。
もちろん、相手が融合体を出してくれるならやれます。二代目ン=ゾスの頃にあったような多種族デッキを使う場合、プリースト相手に融合体はなかなか出せないでしょうね。
かくして、「系譜の抹消」が完成しました。
カード名は「根絶やし」「ジェ〇サイド」「〇族浄化」など穏やかでない方向で考えていましたが、「系譜に対抗するための系譜呪文」という意図が伝わらないと淋しいと思い、露骨な名前にしてみました。
イラストは「影の渦巻に吸い込まれていくクマの集団」で、この呪文が特定種族を一網打尽にする呪文であることと、プリーストの渦巻のように手札やデッキからもカードを破壊しうる呪文であることを示唆しています。
初期案ではもう少しおどろおどろしいイラストでしたが、性能が不快寄りなので逆にイラストはあまり不快でない方向性に改めました。
おわりに
以上、3枚(+1枚)について書いてみました。
拙いカードではありますが、わたしが創作カードを考えている時の楽しさが伝われば幸いです。
もし本記事を見て、「創作カード面白そう!」と思ったり、「お前のカードはカスだな。我がカードを見せてやるとしよう」と思ったりされたなら……あなたも創作カードを作ってみませんか?
HearthCardsで作れます。わたしと一緒にベン・ブロード氏やディーン・アヤラ氏のまねっこをしましょう。
それでは、また。