ニュートラルセンターはなぜロストゾーンに行かないのか【ポケカ】

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 2024/6/7発売の新拡張「ナイトワンダラー」に登場する新カードに、ACE SPECスタジアムの「ニュートラルセンター」があります。
 ルールを持たないポケモンがexやVからワザのダメージを受けなくなるスタジアムで、言ってみればルールを持たないポケモン全員がミミッキュ(しんぴのまもり)になるようなものです。
 exやVを主体とするデッキに対して非ルール主体のデッキが強く出られるようになるスタジアムで、構築によっては詰んでしまうのはミミッキュと同じです。ただ、スタジアムなので他のスタジアムで上書きしたりロストスイーパーなどで消せますし、ニュートラルセンター自体の性質としてトラッシュにある時に手札や山札に戻せないという性質を持ちます。
 ここで、わたしはふとある種別のスタジアムを思い出しました。
 そう、プリズムスターのスタジアムです。
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 プリズムスターのスタジアムは、
・デッキに1枚しか積めない
・トラッシュされる代わりにロストゾーンに置くため、再利用ができない
 という点でACE SPECのニュートラルセンターと似通っています。
 まぁ、グッズやサポートで破壊できない、1枚制限はプリズムスターカテゴリ全体でではなくあくまで同名1枚制限など違いも多いですが、とにかく「1枚しか積めず、再利用できないスタジアム」という点では同じです。
 であれば、ニュートラルセンターもトラッシュされる代わりにロストゾーンに置くようにすればよかったのでは?というのはそんなおかしな発想ではないはずです。
 スタンダードでは「トラッシュに置かれると手札にも山札にも戻せないスタジアム」を再利用する方法がないので実質的には同じ話ではあるのですが、エクストラだとゴチルゼル(テレポートルーム)によってトラッシュから直接場に戻すことができるため、再利用可能となっています。
 絶対に再利用させたくないなら、ロストゾーンに置けばよかったはずです。なのになぜ?というのを考えてみたいと思います。前置きが長くなってしまいました。
 わたしは仮説を2つ立てましたので、それぞれ書いていきます。
 
・仮説1:再利用という選択肢を作りたい
 トラッシュから直接場に戻す特性で再利用、というのは面白い仕掛けです。
 2024/5時点でのカードプールだとスタンダードでそれをやることは出来ませんが、今後ゴチルゼルの特性のような効果を持つカードを刷ることで、「ニュートラルセンターを何度も再利用してexやVに対抗するデッキ」というのを作れる余地を残そうとした可能性はあります。
 あるいは、エクストラでの利用を想定して……とも考えられますが、個人的には眉唾です。新カードというのは基本的にスタンダードでの利用を考えて作っており、エクストラを想定した調整というのはあまりしないんじゃないかな、とわたしは思っています。人口が圧倒的に多いスタンダードでのパフォーマンスを前提で考え、その結果エクストラの環境を破壊するカードが出来てしまったならばエクストラで禁止カードにする、というのが実際のところではないでしょうか。
 スタンダード制を採用する1つの利点として、古いカードとのコンボによる野放図なインフレを防げる(翻って言えば、古いカードとのコンボによる環境破壊を想定した新カードのデザインの狭まりを防げる)ことがあると思うのですが、エクストラ環境に配慮して新カードのデザインが制約されるなら、その利点が損なわれてしまいますよね。
 そういうわけで、エクストラの事情はあまり勘案しておらず、スタンダードのカードとして回収手段が無いようにデザインしつつ、今後ゴチルゼルのような回収手段を導入することもできるようなテキストにした、というのが仮説その1です。
 
・仮説2:ロストゾーンという文言を使いたくない
 ポケモンカードにはロストゾーンのある時代とない時代があります。
 かつて、初めてロストゾーンが導入されたのは破空の激闘という2008年の拡張パックです。トラッシュと異なる、絶対にカードを回収できない異空間のような存在として導入されました。他のカードゲームでいうところの「除外」みたいなものですね。(除外からはカードを回収できますが……)
 ただ、導入されて以降ずっとロストゾーンがあったわけではありません。むしろ、ポケモンカードにおいてロストゾーンという文言が登場する拡張の方が稀です。
 2010年に「ロストリンク」という拡張で登場して以降しばらく登場せず、2017年の拡張パック「ウルトラサン」「ウルトラムーン」でプリズムスターのカードが登場すると同時に復活しました。つまり、ロストリンクが落ちてからウルトラサン/ムーンが出るまでのポケモンカードにロストゾーンは存在しなかったことになります。
 サンムーン以降も割とそうで、Bではプリズムスターやら超爆インパクトやらでロストゾーンの文言が多数見られましたが、Cではモンメンエルフーンの2枚以外にロストゾーンの文言は無く、D・Eにもロストゾーンの文言は存在せず、Fでようやく復活を果たしました。
 要するに、ポケモンカードではロストゾーンの概念はあったりなかったりするんです。そして、開発側もそれを意図しているのでしょう。ロストゾーンをフィーチャーする拡張やシーズンでなければ基本的にロストゾーンという文言は使わないようにしている節があります。
 事実、Gのカードと変幻の仮面までのHのカードには「ロストゾーン」という記載がありません。つまり、Fが落ちる2025年の時点でロストゾーンという概念は抹消できるように作っていると思われます。実際に抹消するかどうかは分かりませんが、少なくともそれが可能なようにはデザインしていると考えられます。(明らかにロストゾーン軸デッキの対策で作られたキュレムにロストゾーンという文言がないのも同じ理由だと思います)
 以上を踏まえれば、仮にニュートラルセンターを「絶対に再利用のできないカード」としてデザインする意図があったとしても、そのためにロストゾーンという文言を使うのはあまり望ましくないのだと思います。これが仮説その2です。
 仮説は上記の2つです。
 ただ、個人的な予想としてはこの2仮説の中間というか両方というか、「ロストゾーンという文言を使いたくないのがメインだけれども、再利用の余地を残しておく意図もあった」というのが一番ありそうかな、と思っています。
 もし本当に絶対再利用させたくないなら、「このカードをトラッシュから移すことはできない」と書けばいいだけの話です。あるいはレガシーエネルギーの取られるサイドを減らす効果のように一回きりの制限をかける、たとえば「このカードは対戦中一度しか場に出せない」と書くとかでもいいでしょう。1ターン目しか使えないバトルVIPパスや、先攻後攻を決める時にしか使えないファーストチケットのように、1回目しか使えないスタジアムがあってもいいはずです。
 そういった書き方をしなかったということは、場に直接戻して再利用するという選択肢を今後使うかもしれないので、その余地を残しておいた、というふうにも思えます。
 まとめです。
・ニュートラルセンターは「デッキに1枚きり、1回しか出せないスタジアム」としてデザインされてるっぽいけど、それならなんでプリズムスターのスタジアムみたいに「トラッシュされる代わりにロストゾーンに置く」って書いてないのはなぜ?を考えてみた。
・仮説1:エクストラでゴチルゼル(テレポートルーム)で再利用できるみたいに、抜け道としてトラッシュから場に直接出す手を残しておきたかったから。
・仮説2:Gレギュ以降ロストゾーンという文言を使っておらず、Fレギュのスタン落ちと同時にロストゾーンをシステムから消せるよう、ロストゾーンという文言を使いたくなかったから。
・実際のところは仮説2が中心で仮説1の要素も少しあるんじゃないかと思っている。なぜなら、ロストゾーンという文言を使わなくても「トラッシュから絶対に回収できないテキスト」は書けるから。
 ニュートラルセンターの性能考察、をしようとも思ったんですが、ちょっと後半のテキストの方が気になってしまったので、へんてこな記事になってしまいました。
 ニュートラルセンター自体も好みのスタジアムで、たとえばスタジアムを出させない特性のポケモンと併用したり、相手のスタジアムを壊す手段を涸らしてから出すことで詰ませに行ったりすることができるのが面白いなと思います。
 別にミミッキュでええやん、と思う方もひょっとしたらおられるかもしれませんし、実際ミミッキュも強いんですが、HP70で2エネ70点のミミッキュだから許されている特性、みたいなところがありますからね。たとえばHP230で2エネ170点のイイネイヌにしんぴのまもりが付いてたり、あるいはワザの効果を無効化するカビゴンにしんぴのまもりが付いててバンデットガード級の鉄壁防御になったりしたら厄介じゃないですか?(後者は既にミミッキュ+ミストエネルギーで同じことができますが)
 ……等々ありますが、主題とは異なるのでここでは割愛します。いずれまた色々考えてみたいですね。
 それでは、また。

※本記事の画像はポケモンカードトレーナーズウェブサイトからの引用です。

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