カビゴンLOは対話拒否デッキ、という風潮

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 「カビゴンLOは対戦相手と対話していない、対話拒否デッキである」という意見、ちょこちょこ目にします。 ただ、個人的にはカビゴンLOって対話拒否デッキから遠い方のデッキなんじゃないかな、と思っていたので、そのあたりを少し書いてみたいと思います。


・対話って何?

 語義的な話からしていきます。
 対話拒否デッキというのは、読んで字のごとく対話しないデッキということです。では、カードゲームにおける対話とはなんでしょうか?
 わたしは「対戦相手との駆け引き」が対話だと思います。「自分はこう攻めるが、あんたはこれにどう答える?」「なるほどそう来たか。ならこういう手はどう?」といった、盤面を通した言外のコミュニケーション、それこそがカードゲームにおける対話といえるでしょう。
 ……わたしはこれしか思いつかなかったので、他に「対話」にあたるものがあるとすれば、教えていただけると助かります。ここでは一旦「対話とは駆け引きである」という前提で考えます。
 カビゴンLOは駆け引きをしていないか?というと、そんなことはなく、むしろカビゴンLOは駆け引きの連続です。カビゴンLOを含むコントロールデッキは相手の行動に対して妨害をするわけですが、妨害というのは要するに「相手のしたいことをさせないこと」ですから、相手のしたいことを予想し、それに対応した受け身の行動として除去や遅延を行うため、駆け引きの回数は増えます。
 具体的には、相手が有力なグッズを持っていることを読んでビワを使う、相手の動きから不要なたねポケモンを抱えていると予測してエリカの招待を使う、といった感じですね。ロトムVに勇気のおまもりを付けるか、カビゴンに勇気のおまもりを付けるか等も、相手の動きや構築への読みから選択する必要があり、駆け引きの一環といえるでしょう。無論、カビゴンLO側が読むということは相手もカビゴンLOの動きを読んだりカビゴンLO側の読みをミスリードさせたりするわけですから、必然的に双方向性の読み合いになります。
 まぁ、旧裏の「わるいラフレシア」みたいなよほど強力な妨害カードがあって、それ1枚で何もかも封じることができるのなら、そこには確かに駆け引きがないといえるかもしれませんが……カビゴンLOについて言えばそこまで強力なパワーカードは無く、駆け引きの連続の果てに、相手を手持ち無沙汰のドローゴーに追い込むことで勝ちを得る必要があります。もちろん、相性次第でその難易度は変わりますけどね。
 そんなわけで、カビゴンLOを含むコントロールデッキは駆け引きの連続であり、むしろかまびすしいほどに対話をするデッキといえるでしょう。

 では、対話をしないデッキとはなんでしょうか?
 駆け引きのないデッキ、それはいわゆる自己完結型のデッキ、つまり回れば勝てるが回らないと勝てない、対戦相手ではなく自分の引き運と戦っているタイプのデッキこそ対話拒否デッキだと思います。
 一例を挙げます。

「1枚もらいます。バトルVIPパスでビッパとヒトカゲ置いてエンドです。」

「1枚もらいます。バトルVIPパスでテツノブジンexとイキリンコex出します。ベンチのテツノブジンexにブーストエナジー未来をつけます。いれかえカートでテツノブジンex前に出してタキオンビットでビッパにダメカン2個乗せます。イキリンコexのイキリテイクで手札捨てて6枚引きます。ヒスイのヘビーボールでテツノブジンex引いてベンチに出します。バトルVIPパスでチャーレムVとれんげきウーラオスVベンチに出します。前のブジン逃げてテツノブジンex出してタキオンビットでビッパにダメカン2個乗せます。いれかえカートでテツノブジンex出してタキオンビットでHP60のヒトカゲにダメカン2個乗せます。博士の研究で手札全部捨てて7枚引きます。タウンデパート置いて使って、森の封印石持ってきます。森の封印石をチャーレムVにつけます。スターアルケミー使って、ダブルターボエネルギーを持ってきます。チャーレムVにダブルターボエネルギーつけます。ポケモンいれかえでチャーレムV出してヨガループ、ビッパを倒してサイド1枚もらいます。ヨガループの効果で追加ターンもらいます。1枚引きます。いれかえカートでブーストエナジー未来ついたテツノブジンex出します。タキオンビットでHP60のヒトカゲにダメカン2個乗せます。ブジン逃げてベンチのテツノブジンex出します。タキオンビットでHP60のヒトカゲにダメカン2個乗せて倒します。サイド1枚もらいます。博士の研究で手札捨てて7枚引きます。ポケモンいれかえでブジン下げてチャーレムV出します。れんげきエネルギーをチャーレムVにつけて、スマッシュアッパー80ダメージでヒトカゲ倒します。サイド1枚もらいます。ありがとうございました。」

 対話拒否デッキというものがあるとすれば、おそらくこういうのじゃないでしょうか。このデッキ、わたしも友達との対戦で使ったことがありますが、友達はあまり楽しくなさそうでした。まぁ、そうですよね。ソリティアを眺めていただけなんですから。
 ここまでではないかもしれませんが、後1ごっつあんプリファイ、後1くるいえぐるも、対話拒否のきらいがあると思います。まぁ速攻デッキ全般がそうですよね。相手が動き出すまでに叩き潰すのが太い勝ち筋ですから、相手に対話をさせずに勝てるかもしれないというのが速攻デッキの強みであり、それは対話拒否で勝ちに行くデッキと言えるでしょう。



・じゃあ、なぜカビゴンLOは対話拒否デッキとする風潮があるか
 わたしの推測をいくつか書きます。
 1つは、「カビゴンLOをよく知らない」
 実際に対戦したことがない、対戦したことはあるけどほとんど経験がなくて初心者狩り同然に負けてしまった……とかでしょうか。実際、(カビゴンLO側に練度がある程度あって)普通にプレイしていれば25分で山札切れまでいくのに「相手が降参しないと勝てない欠陥デッキ」みたいな言われようもよく見ますしね。「遅延されると勝てない欠陥デッキ」とも言われますが、サーナイトexも遅延されたらだいたい勝てないような……とか思ってしまいます。
 カビゴンLOは対話の少なくないデッキですが、その対話はサイドを6枚取って勝つことを目指す普通のデッキとは大きく異なります。サイドレース絡みの駆け引きはなく、「入れ替え手段が尽きるまでにサイドを6枚取れるか」みたいなところが重要になりがちです。
 どこにどういった駆け引きがあるか、というところが見えていないと、カビゴンLO側が対話をしておらずただ流れ作業で捌かれているかのように感じてしまうんですよね。これは、ポケカを始めたばかりだと試合の要所がどこなのか分からないのに似ています。ポケカの歴史的にもコントロールはビートダウンと比べてだいぶ少ないので、ポケカ経験者でも対コントロールの経験が浅いと初狩りされてしまうのでしょう。

 1つは、「サイドを6枚取りあう駆け引きだけを”対話”だと定義している」
 要するに、アグロやミッドレンジの殴り合いだけが正当なポケモンカードだと考えており、コントロールデッキによる消耗戦は陰険で卑怯でマトモなポケモンカードではない、ゆえにそんな駆け引きは無効であり対話ではない……みたいな理路かな、と思います。
 まぁ、ゲームでもTODを狙うのはマトモなポケモン対戦ではないみたいな声はありますし、気持ちは分かる気もするのですが、あまり健全な思考とはいえないでしょう。「マトモなポケモンカード」がどういうものかを規定するのはポケカ公式であり、わたしやあなたではないからです。
 つまり、それが卑怯で不当でポケカとしてあるべからざる邪道のデッキだ、と公式が考えているのであれば、そもそもそんなデッキが作れるようなカードプールにはしないはずなんです。「とおせんぼ」なんて特性は出さないはずですし、「ビワ」なんてカードも刷らないはずなんです。あるいは「ジュジュベ&ハチクマン」のように、禁止カードに指定するはずなんです。
 そうでない以上、特定のデッキタイプを「マトモなポケモンカードではない」とするのは勇み足というものです。「自分はカビゴンLOが嫌いだ」というのは正当な感想ですが、「カビゴンLOの駆け引きは対話ではない」というのはちょっとパラノイアックすぎるかなとわたしは思います。
 ポケカの勝利条件は「サイドを6枚取る」「相手の場にポケモンがいなくなる」「相手が番の始めに山札からカードを引けなくなる(LO)」等ですが、ポケカ公式はどれがマトモでどれがマトモでないとは定義していません。なので、LOで勝とうとダーテングで相手の場を空にして勝とうと、それがマトモなポケモンカードでないというのは過言でしょう。まぁ、変化球ではあるでしょうけどね。

 1つは、「”対話拒否デッキ”を、なんか批判されるべきヤなデッキという意味で使っている」
 コントロールデッキというのは、少なくない数のカードゲームで蛇蝎のごとく嫌われています。コントロールデッキのControlは「妨害する」という意味ですが、まぁ自分がやりたいことを妨害されまくって楽しい人なんてそうそういませんよね。
 ただ、「不快なデッキ」「つまらない」「大嫌い」「絶対に許さない」「顔も見たくない」みたいな物言いは、いかにも感情論という感じで角が立ちやすく、ともすれば自分勝手な人という印象をも免れない可能性があります。まぁ、公衆の面前で「わたしこれ嫌い!」と声高に主張することそれ自体がイジメめいているというか、弾圧っぽいところがありますし……
 そこで、「カビゴンLOはデッキとして欠陥があるから、嫌われて当然だしポケカから排除すべき」という論立てによってある種の正当性らしきものを糊塗するわけですね。そのため、一見デッキ自体に瑕疵があるように見せかけるレッテルとして「対話拒否」が使われているのかもしれません。

 繰り返しにはなりますが、本当に欠陥デッキなら「ジュジュベ&ハチクマン」を禁止カードに指定した時のように、公式から速やかに排除されるはずだと思います。そうでないということは、カビゴンLOもまた正当なデッキとして認めているということでしょう。もちろん、公式の中の人一人一人の好悪感情はあるでしょうが、いずれにせよ公式見解として環境に存在を許されたデッキというわけです。公式が認めたデッキを「存在すべきでない邪道のデッキ」とする非公式の声に、正義はあるのでしょうか。

jujuhachi
 かつて、ジュジュベ&ハチクマンとムウマージが禁止された時に出された公式の声明です。
 要するにコントロールデッキの戦い方は我々ポケカ公式も認める戦術だけど、この2枚は強すぎて構築やプレイングの幅を狭めてしまうので禁止カードにします」と言っています。まぁ、認めていなかったらコントロール向けカードなんて刷らないでしょうから当たり前なのですが、いちおう載せておきます。

 まとめると、
・カビゴンLOは対話拒否デッキと言われることがちょこちょこある。
・対話を駆け引きと換言するなら、カビゴンLOは大いに対話しているデッキだと思う。
・にも関わらず対話拒否と言われる理由をいくつか推測してみた。
・理由1:カビゴンLOのことをよく知らないので、駆け引きがないと思い込んでいる。
・理由2:ビートダウン以外の駆け引きは対話じゃないという固定観念に支配されている。
・理由3:カビゴンLOが気に入らないので、デッキの不当性を示すレッテルとして用いている。
 ……という感じです。

 なお、ここまでなんとなくカビゴンLOを擁護するような論立てにはなっていますが、対面のカードゲームである以上TPOというものはあると思います。
 まぁ、公式大会のようなガチの試合は勝敗が全てであって楽しい楽しくないの問題ではないですから、ルール違反である意図的な遅延などに走るのは論外だと思いますが、みんなが楽しく遊んでいるフリー対戦にカビゴンLOを持ち込んだら煙たがられるのは道理でしょうし、「煙たがるのはおかしい」という意見は支持できません。
 わたしも、友達とカビゴンLOで対戦する時は必ず他のデッキも持っていって、退屈な体験をさせないように気をつけていますし、カビゴンLOの攻略法を教えたりもしています。どんなゲームもそうですが、勝ち筋が分からなくて好き放題されている時って面白くないですからね。
 なお、わたしは最近ピジョットコントロールやレジエレキコントロールにも興味があるので、その辺も触ってみようかなと思っています。元々はハースストーンでコントロールによる消耗戦を好んでいたのですが、最近消耗戦をさせない方向に舵取りをしているようなので、ポケカで消耗戦を楽しんでいます。

 それでは、また。

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