ポケカに転生したら最強だった件#1.ラフレシア編

 「なんにもいいことなんかなかったなぁ」
コガネシティ行きのリニアがゆっくりと目前に迫る中、ラフレシアは自らの半生をそう総括しました。
対戦で活躍できず、嫌気の差したトレーナーに逃がされ、暖かい寝床を失った彼女が失意のままに歩いていると、なんの導きか、知らないうちにリニアのレール上に迷い込んでしまったのでした。
霧と消えるその刹那、彼女は強く祈りました。
願わくは、来世は強くて愛されるポケモンになれたら、と……

ポケモンシリーズには、ガチな対戦で使うに値しない、弱いポケモンが多く存在します。
わたしは別に、それを悪いこととは思いません。すべてのポケモンが対戦で大活躍する、というゲームバランスこそ絵空事でしょう。なるべく多くのポケモンが活躍できた方がいい、というのはそうでしょうけれどもね。
ただ、弱いポケモンというのは厳然として存在し、かつそれらの一部は本編以外の外伝で花開き、最強になることがあります。
この記事は、そういったポケモン本編以外で輝くポケモンをレポートするものです。

ラフレシアは、弱いポケモンです。
初代のポケモンがメガシンカやキョダイマックスやリージョンフォルムでフィーチャーされるのは、往年のプレイヤーを呼び戻さんとする商業的な都合も大きいとは思いますが、単純にテコ入れする余地がある強さだから、というのもあると思います。ラフレシアもその例に漏れず、でした。(メガシンカもキョダイマックスももらえませんでしたが……)
ですが、ポケモンカードのラフレシアは昔から最強でした。

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元祖トレーナーロックの女王、わるいラフレシアです。ポケカでは初期に「わるいポケモン」というものが登場しました。わるいポケモンはHPが低い代わりに強い能力を持つというもので、わるいラフレシアもまた強い能力を有しました。
それが、特殊能力「アレルギーかふん」です。
「このポケモンが場にいる限り、お互いのプレイヤーはトレーナーカードが使えない」というものです。端的に言って、最強です。
トレーナーカードというのは、いまでいうトレーナーズのことです。ポケカのデッキは半分くらいのカードがトレーナーズですから、デッキのカードの半分が使えなくなる地獄のロックということになります。
当時も「ポケモン育て屋さん」という、いまでいう「ふしぎなアメ」がありましたから、2ターン目にラフレシアが出てくると、もはやその試合では1ターン目しかトレーナーカードを使えませんでした。

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更に言うと、このゴースと組み合わせて、先攻1ターン目に「こわがらせる」でトレーナーカードをロックし(当時は先攻1ターン目でもワザが使えました)、2ターン目でわるいラフレシアを出しつつトレーナーカードをロックするという、相手が一生トレーナーカードを使えない悪夢のようなロックデッキもありました。じゃんけんで後攻になっただけでデッキのカードが半分使えなくなるなんて、そんなひどい話がありますか? なお、手札で腐ったトレーナーカードはゴーストの「ポルターガイスト」で火力に変換できるという隙のなさも完備していました。
このデッキは「わるラフポルター」と呼ばれ、たいそう恐れられたそうです。まぁ、先攻取られるとなすすべなく負ける可能性がありますからね……

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ちなみに強い特殊能力に対するメタカードとして、「まきちらせ!ベトベトガス」という特殊能力封印カード(最近?でいうオカルトマニア)がありましたが、ベトベトガス自体がトレーナーカードなので、封じられて使えません。絶望です。
また、わるいラフレシアを倒してしまえばいいのですが、ベンチで有効な特殊能力なのでバトル場に出てこず攻撃できませんし、バトル場に呼び出そうにも「突風」(グッズ版ボスの指令)自体がトレーナーカードで使えないので、わるいラフレシアの除去も困難を極めました。
ポケモンカードは裏面デザイン一新によりわるいラフレシアを含むすべてのカードがスタンダード落ちして使えなくなりましたが、スタンダード落ちしてからも旧裏面のカードを使って遊ぶルールがあり、そこでは強いカードに「殿堂ランク」というスコアがつけられています。
スコアは0点から4点まであり、デッキのカードの総スコアが4点までにおさまるよう構築しなければなりません。わるいラフレシアは堂々の4点(最高点)であり、4点のカードはニューラ(neo1)と並んで2枚しかなかったことを考えると、誇張でもなんでもなく、まごうことなき最強カードであったことがうかがい知れますね。

ラフレシアの最強伝説は、わるいラフレシアのスタンダード落ちとともに姿を消します。
ですが、わるいラフレシアの暴虐はポケカ界に大きな爪痕を残し、以後もラフレシアはポケカ界の強豪として、時折環境に顔を出すことになります。

 

・ラフレシアex
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ロック系ラフレシアです。

 exかつバトル場でしか働かずサポーターはロックできない、と控えめな性能となっており、わるいラフレシアの二の轍は踏むまいという開発側の意志が伝わってきます。
 ただ、ADVはふしぎなアメが強すぎて空前の2進化環境だったので、ふしぎなアメをロックできると考えると、ベンチでも有効だったら強すぎた可能性は十分にあります。結果的にはちょうどいい塩梅だったのかもしれません。
 「どくせいアロマ」は3種類の状態異常を内包したワザで、草タイプらしいワザですね。ラフレシアは特性が強いぶん、ワザはそこまでではありません。ただ、このワザも決して弱くはなく、バトル場にいるだけにならず十分戦える性能をしています。

・ラフレシアδ種

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 ゴースト鋼タイプのラフレシア。

ギルガルドみたいなタイプですが、δ種とは「原種と異なるタイプを持つ亜種」で、リージョンフォルムのはしりみたいな存在ですね。ファイアレッド・リーフグリーンの時代のカードです。詳しくはこちら

 特性はロック系ではなく毒ですが、ポルターガイストというわるラフポルターを彷彿とさせるワザのチョイスに、往年のプレイヤーは忍び笑いした……との噂。
 ちなみに、ポルターガイストというワザはゲームにもありますが、カードでは最初期(赤緑青の世代)から存在するワザです。手札のトレーナーカードの枚数に応じたダメージ、というワザで、ゲームとは異なります。まぁ、ポケカもポケカでポルターガイストっぽいですが、今作るなら「手札のグッズの枚数に応じたダメージ」の方がそれっぽいでしょうね。
 ただ、ポケカでは基本的に一度名前が出たワザは数値以外の効果は変えないという縛りがあるらしく、ゲームと乖離することが多いです。たとえば「おにび」はポケカで先に出ていて、ただダメージを与えるだけのシンプルなワザでした。ゲームではその後「相手をやけどさせるワザ」として登場しましたが、既にポケカではダメージだけのシンプルアタックとして出ていたので、それ以後の「おにび」もすべてただダメージを与えるだけのワザでした。
 もう少し柔軟になってもいいと思います。個人的には。

・ラフレシア(L2, XY7)

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 グッズロックのラフレシアです。
 ラフレシアexを踏襲してか、グッズロックのラフレシアが続きました。なんだかアレルギーというとグッズよりサポーターがロックされそうなイメージもありますけどね。化石ポケモンがサポーターをよくロックしてますが、逆じゃない?と思うこともたまにあります。原始の波動で文明の利器をロックする、みたいなイメージで。
 ちなみに、ラフレシアexと違ってルールを持たないポケモンであることと、バトル場にいなくても特性が働くことから、特性によるロック要員としてはほぼ上位互換です。
 おそらく、ラフレシアexの頃はふしぎなアメが強すぎて2進化環境だったので、以後のシリーズでは相対的に2進化ポケモンが弱く、非exかつベンチでも働く特性でちょうどいいくらいだったのかもしれません。
 なお、ポケカの2進化ポケモンとは2回進化したポケモンのことです。たまに最終進化系を「3進化」とする表現を(主にゲームの方のプレイヤー間で)見ることがありますが、個人的にしっくりこないのはポケカに慣れたからかもしれません。でも、「ニャオハ」や「サンダー」が「1進化ポケモン」って、なんだか変じゃないですか? まぁ、3形態あるうちの3段階目だから3進化、という感じがするのは分かるんですけどね。

・ラフレシア(SM3H)

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 一風変わったラフレシアです。

特性「にがにがかふん」により、バトル場にいる時たねポケモン(一度も進化していないポケモン)にワザを使えなくするという、たねポケモン完封の特性です。
登場直後は進化デッキが多かったこともありあまり活躍しませんでしたが、のちのちタッグチームGXが登場した際に、2016年度ポケモンカード世界大会チャンピオンであるイトウシンタロウ選手が大会で使用し、好成績を残したことで話題になりました。
タッグチームGXは、「すごく強いけど倒されると3匹分のロスになる超大型たねポケモン」で、当時はピカチュウ&ゼクロムGX、フェローチェ&マッシブーンGX、レシラム&リザードンGX、ジラーチサンダーという4デッキが群雄割拠するバランス環境でしたが、すべてたねポケモン主体のデッキだったため、ラフレシアに白羽の矢が立ったわけですね。
 ただ、当時は2進化デッキというだけでデッキが重く、速度負けしてしまうリスクがあったこと、環境デッキでないとはいえたまに当たる可能性がある進化デッキに勝てる構築にする必要があったことから、いくら環境的に強いとはいえラフレシアデッキを組んでくるプレイヤーは少なかったようですが、イトウシンタロウ選手の実績から、大会上位レベルの高いポテンシャルがあるカードだったのは確かなようです。

 ちなみに、「たねポケモンのワザでダメージを受けない」という特性だと、「相手にかかっている効果を無視して攻撃する」というワザ(けっこうあります)で防御を貫かれてしまうのですが、にがにがかふんは「たねポケモンはワザが使えない」という効果(防御特性ではなくロック特性)なので、耐性無視ワザ自体使えず、たねポケモンだけのデッキで突破するのはほぼ不可能でした。ラフレシアを出されて投了するプレイヤーもいたそうですが、むべなるかなという感じです。
 ロックはロックですが、グッズやサポーターといったカードを使えなくするロックではなく、ワザを使えなくするロック、というのがラフレシアとしては変化球で、面白い1枚だと思います。

・ラフレシアGX
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ワザマシンとしての活躍です。
こちらはロック系ではありません。ラフレシアはロックと回復と状態異常が持ち味のポケモンで、この場合はロック以外の2つを持つカードとなります。まぁ、回復と状態異常が得意なのはラフレシアというより草タイプの特徴ですけどね。
ただ、それらは使いません。このラフレシアは「だいかいか」という、HP満タンでは強いが手負いだと弱くなる、ゲームの「ふんか」みたいなワザが使えます。
このワザが優秀だったため、ミュウツー&ミュウGXが特性「パーフェクション」でワザを借りるためのワザマシンとして使われました。ラフレシア自体は場に出ず、もっぱらトラッシュに捨てられてワザだけ使われていた感じですね。
当時はタッグチームGXによりパワーインフレが起きつつありましたが、腐っても2進化GXなので、エネルギー2個で使えるワザとしては破格のパワーがありました。また、サポートと合わせて後攻1ターン目からミュウツー&ミュウGXは「だいかいか」を使えるため、速攻戦術の要としても猛威を振るいました。

 ラフレシア自体が活躍したわけではなくワザだけ、しかもパワー系という、ラフレシアとしては異例の活躍ですが、活躍には違いありません。
 ……という塩梅です。
 ポケモンカードのラフレシアは、かつて最強の栄華を手に入れました。それは誇張でもなんでもなく、殿堂ランク、他のTCGでいう「制限カード」を設けるためのスコアとしての最高得点を獲得した、たった2枚のカードのうちの1枚であったことからも、明らかな客観的事実です。
 最強のラフレシアはスタンダード落ちとともに環境から消えたものの、その後もポケモンカードにおいてラフレシアは一定の地位を確保し、定番の強豪ポケモン……ゲームでいうところのハッサムやボーマンダのような存在として、環境に影響を与え続けています。
 いま原作で不遇をかこっているポケモンも、ひょっとしたらポケカで、あるいは他の外伝作品で、誰よりも強く輝いているのかもしれません。

※本記事の画像はポケモンカードゲームトレーナーズウェブサイト、ポケモンカードゲームからの引用です。

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