「なんにもいいことなんかなかったなぁ」
コガネシティ行きのリニアがゆっくりと目前に迫る中、ラフレシアは自らの半生をそう総括しました。
対戦で活躍できず、嫌気の差したトレーナーに逃がされ、暖かい寝床を失った彼女が失意のままに歩いていると、なんの導きか、知らないうちにリニアのレール上に迷い込んでしまったのでした。
霧と消えるその刹那、彼女は強く祈りました。
願わくは、来世は強くて愛されるポケモンになれたら、と……
ポケモンシリーズには、ガチな対戦で使うに値しない、弱いポケモンが多く存在します。
わたしは別に、それを悪いこととは思いません。すべてのポケモンが対戦で大活躍する、というゲームバランスこそ絵空事でしょう。なるべく多くのポケモンが活躍できた方がいい、というのはそうでしょうけれどもね。
ただ、弱いポケモンというのは厳然として存在し、かつそれらの一部は本編以外の外伝で花開き、最強になることがあります。
この記事は、そういったポケモン本編以外で輝くポケモンをレポートするものです。
ラフレシアは、弱いポケモンです。
初代のポケモンがメガシンカやキョダイマックスやリージョンフォルムでフィーチャーされるのは、往年のプレイヤーを呼び戻さんとする商業的な都合も大きいとは思いますが、単純にテコ入れする余地がある強さだから、というのもあると思います。ラフレシアもその例に漏れず、でした。(メガシンカもキョダイマックスももらえませんでしたが……)
ですが、ポケモンカードのラフレシアは昔から最強でした。
元祖トレーナーロックの女王、わるいラフレシアです。ポケカでは初期に「わるいポケモン」というものが登場しました。わるいポケモンはHPが低い代わりに強い能力を持つというもので、わるいラフレシアもまた強い能力を有しました。
それが、特殊能力「アレルギーかふん」です。
「このポケモンが場にいる限り、お互いのプレイヤーはトレーナーカードが使えない」というものです。端的に言って、最強です。
トレーナーカードというのは、いまでいうトレーナーズのことです。ポケカのデッキは半分くらいのカードがトレーナーズですから、デッキのカードの半分が使えなくなる地獄のロックということになります。
当時も「ポケモン育て屋さん」という、いまでいう「ふしぎなアメ」がありましたから、2ターン目にラフレシアが出てくると、もはやその試合では1ターン目しかトレーナーカードを使えませんでした。
更に言うと、このゴースと組み合わせて、先攻1ターン目に「こわがらせる」でトレーナーカードをロックし(当時は先攻1ターン目でもワザが使えました)、2ターン目でわるいラフレシアを出しつつトレーナーカードをロックするという、相手が一生トレーナーカードを使えない悪夢のようなロックデッキもありました。じゃんけんで後攻になっただけでデッキのカードが半分使えなくなるなんて、そんなひどい話がありますか? なお、手札で腐ったトレーナーカードはゴーストの「ポルターガイスト」で火力に変換できるという隙のなさも完備していました。
このデッキは「わるラフポルター」と呼ばれ、たいそう恐れられたそうです。まぁ、先攻取られるとなすすべなく負ける可能性がありますからね……
ちなみに強い特殊能力に対するメタカードとして、「まきちらせ!ベトベトガス」という特殊能力封印カード(最近?でいうオカルトマニア)がありましたが、ベトベトガス自体がトレーナーカードなので、封じられて使えません。絶望です。
また、わるいラフレシアを倒してしまえばいいのですが、ベンチで有効な特殊能力なのでバトル場に出てこず攻撃できませんし、バトル場に呼び出そうにも「突風」(グッズ版ボスの指令)自体がトレーナーカードで使えないので、わるいラフレシアの除去も困難を極めました。
ポケモンカードは裏面デザイン一新によりわるいラフレシアを含むすべてのカードがスタンダード落ちして使えなくなりましたが、スタンダード落ちしてからも旧裏面のカードを使って遊ぶルールがあり、そこでは強いカードに「殿堂ランク」というスコアがつけられています。
スコアは0点から4点まであり、デッキのカードの総スコアが4点までにおさまるよう構築しなければなりません。わるいラフレシアは堂々の4点(最高点)であり、4点のカードはニューラ(neo1)と並んで2枚しかなかったことを考えると、誇張でもなんでもなく、まごうことなき最強カードであったことがうかがい知れますね。
ラフレシアの最強伝説は、わるいラフレシアのスタンダード落ちとともに姿を消します。
ですが、わるいラフレシアの暴虐はポケカ界に大きな爪痕を残し、以後もラフレシアはポケカ界の強豪として、時折環境に顔を出すことになります。
ロック系ラフレシアです。
・ラフレシアδ種
ギルガルドみたいなタイプですが、δ種とは「原種と異なるタイプを持つ亜種」で、リージョンフォルムのはしりみたいな存在ですね。ファイアレッド・リーフグリーンの時代のカードです。詳しくはこちら。
・ラフレシア(L2, XY7)
・ラフレシア(SM3H)
特性「にがにがかふん」により、バトル場にいる時たねポケモン(一度も進化していないポケモン)にワザを使えなくするという、たねポケモン完封の特性です。
登場直後は進化デッキが多かったこともありあまり活躍しませんでしたが、のちのちタッグチームGXが登場した際に、2016年度ポケモンカード世界大会チャンピオンであるイトウシンタロウ選手が大会で使用し、好成績を残したことで話題になりました。
タッグチームGXは、「すごく強いけど倒されると3匹分のロスになる超大型たねポケモン」で、当時はピカチュウ&ゼクロムGX、フェローチェ&マッシブーンGX、レシラム&リザードンGX、ジラーチサンダーという4デッキが群雄割拠するバランス環境でしたが、すべてたねポケモン主体のデッキだったため、ラフレシアに白羽の矢が立ったわけですね。
ただ、当時は2進化デッキというだけでデッキが重く、速度負けしてしまうリスクがあったこと、環境デッキでないとはいえたまに当たる可能性がある進化デッキに勝てる構築にする必要があったことから、いくら環境的に強いとはいえラフレシアデッキを組んでくるプレイヤーは少なかったようですが、イトウシンタロウ選手の実績から、大会上位レベルの高いポテンシャルがあるカードだったのは確かなようです。
・ラフレシアGX
ワザマシンとしての活躍です。
こちらはロック系ではありません。ラフレシアはロックと回復と状態異常が持ち味のポケモンで、この場合はロック以外の2つを持つカードとなります。まぁ、回復と状態異常が得意なのはラフレシアというより草タイプの特徴ですけどね。
ただ、それらは使いません。このラフレシアは「だいかいか」という、HP満タンでは強いが手負いだと弱くなる、ゲームの「ふんか」みたいなワザが使えます。
このワザが優秀だったため、ミュウツー&ミュウGXが特性「パーフェクション」でワザを借りるためのワザマシンとして使われました。ラフレシア自体は場に出ず、もっぱらトラッシュに捨てられてワザだけ使われていた感じですね。
当時はタッグチームGXによりパワーインフレが起きつつありましたが、腐っても2進化GXなので、エネルギー2個で使えるワザとしては破格のパワーがありました。また、サポートと合わせて後攻1ターン目からミュウツー&ミュウGXは「だいかいか」を使えるため、速攻戦術の要としても猛威を振るいました。
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