ポケモンカードでは、サポートというカード分類が存在します。
他のTCGでいう呪文にあたる「トレーナーズ」の中でも、人物系のカードをまとめたものが「サポート」です。効果が強い代わりに、カテゴリ全体で1ターンに1枚しか使えないという制限を持ちます。
ポケカのドローの強さを象徴する1枚として「博士の研究」がありますが、これは旧裏面の「オーキドはかせ」の効果をそのままに、サポートという制約を加えたものです。昔はオーキドはかせを1ターンに何度も使って先攻1ターン目で山札47枚をドローし切ることもできたそうです。
ただ、そんなインフレをさすがにまずいと思ったのか、旧裏面のカードを全て環境から放逐して、1から作り直したのが新裏面です。スタン落ちにいいイメージのない方もおられるかとは思いますが、旧裏面のカードを残したままだったら今のポケカのインフレはすさまじいインフレをしていたと思います。個人的には、「オーキドはかせ」のある環境で25年以上煮詰められた環境を見てみたい気もしますが、遊びたい気はしませんね……
そんなサポートですが、初登場した2001年当時は「サポーター」という別の名前でした。
サポーターに訪れたルール変更とは、使用時の扱いです。
サポーターは「自分の番ごとに1回しか使えず、使ったらバトル場の横に置いておき、使った番の終わりにトラッシュする」というルールでした。
つまり、使ったらすぐにトラッシュするのではなく、時間差でトラッシュに行くわけです。
「なんでそんな面倒なことを?」と思われるかもしれませんが、その理由は主に2点あるとわたしは思います。
1つは、ターン1制限。
ポケカは元々エネルギーをつけるのが自分の番ごとに1回、スタジアムを置くのも自分の番ごとに1回という制限があります。そこに更にサポーターも自分の番ごとに1回となると、ターン1制限の行動が増えすぎて、「この番もう使った?使ってない?」というのが分かりにくくなる可能性があります。実際、2回サポートを使うのは現代ポケカでもありふれたミスです。
そこで、サポーターを使ったらバトル場の横に置き、ターンの終わりにトラッシュする、というルールにしておけば、バトル場の横を見ただけでその番サポーターを使ったかどうかが一目瞭然ですから、二回サポーターを使うミスが減るわけです。合理的ですね。
ただ、これにはこれで欠点もあります。他のグッズとかと同じく、サポーターをうっかり直接トラッシュしてしまうミスです。これをやると、結局サポーターを二回使うミスにも繋がりますから、完全に防げるわけではないんですよね。まぁ、サポーターを置く時と二回目使う時の二回「ん?」と気づけるポイントがあるので、ミスに気づきやすくはなると思います。
また、サポーターは番の終わりにトラッシュしますから、直接トラッシュに置いてしまった時、「サポーターをトラッシュしたということはあなたのターンは終わりですね? ではこちらの番に移ります」という物言いがありえます。やや横暴にも思えますが、一理ありますから、実際それで少し揉めたこともあるそうです。
もう1つは、フレーバーです。
サポーターというのは、ポケモンバトルを手助けしてくれる人物のことです。手助けしてくれるなら、ポケモンバトルの現場で横について何かしてくれる、というのは確かに「らしい」ですよね。
たとえば、このガブリアスはシロナを使った番だとパワーアップするんですが、そのシロナがトラッシュに沈んでいるのとガブリアスの横に立ってるの、どっちが見映えがいいと思いますか?
サポーターはあくまでサポーターでありポケモンの持ち主とは違うかもしれませんが、少なくともバトルの場で手助けしてくれている協力者には違いないですから、この構図なら「最高峰のガブリアス使いであるシロナの助言で、扱いの難しいガブリアスのポテンシャルが引き出された」とか「シロナのガブリアスを借りているので、シロナが応援に来てくれるとガブリアスのパワーがより引き出される」とか、いろいろ解釈できますね。
カードのフレーバーテキストが世界観の演出に重要なように、システムそのものもまたフレーバーの醸成に一役買っていると思います。
また、シロナを使ったか、という確認そのものについても、やはりバトル場に現物があると一目瞭然で説得力が違います。トラッシュにあると、「シロナを使ったのは前の番で、この番はロケット団のいやがらせを使いましたよね?」みたいな勘違いもありえるわけですし。
ただ、サポートのメリットもあります。
1つはスペースの節約です。ポケモンカードでは初期の頃からバトル場の横にはスタジアムを置く場所があったのですが、その後ロストゾーンが登場し、GXマーカーやVSTARマーカーも置くようになりました。サポートになりバトル場横を占拠しなくなった分、これらが置けるようになったとも言えます。
なお、GXマーカーやVSTARマーカーこそまさに「使ったかどうかを判断するためのもの」ですから、「この試合でVSTARパワーもう使いましたよね?」みたいな誤解を防ぎやすいです。サポートは番に1回ですが、VSTARパワーやGXワザは対戦中に1回ですから、より遡って確認しにくいんですよね。「4ターン前にバーストGX使いましたよね?」「そうでしたっけ?使ってないと思いますが」となった時に検証が大変です。録画でもしていれば別ですが……
その点、サポートを使ったかどうか?については、エネルギー手貼りや進化の可否、スタジアム使用の可否と同じく「その番だけ」のことなので、遡って確認が比較的容易です。だからエネルギー手貼りマーカーとかスタジアムマーカーとかはないわけで、サポートに限って使用の有無を記録する必要もないのかもしれません。まぁ、「その番だけ」の確認事項も増えれば増えるほど見落としやすくなりますから、使用の有無を記録することがミスの予防には繋がりますけどね。
1つはメリットかと言うと微妙ですが、トラッシュのサポート参照のルール的な処理です。
たとえば「ともだちてちょう」でサポートを回収するとします。この時、サポーターのルールだと、その番に使ったサポートは回収できません。なぜなら、その番使ったサポートはトラッシュではなくバトル場の横にあるからですね。
この仕様、個人的には面白いと思いますが、正直分かりにくい感じもあります。使い終わったカードなのにトラッシュになくて回収できない、かと思えば番の終わりに勝手にトラッシュに行く。ややこしい、最初からトラッシュに置け……と思われても致し方ありませんね。
ホロンのトランシーバー。
ホロンのサポーターを山札とトラッシュのどちらからでも手札に加えられます。つまりサイド以外どこからでも持ってこられるってことじゃん、と思いきや、その番に使ったホロンのサポーターだけは手札に加えられないんですよね。ちょっと面白い設定です。
以上です。
まとめると、
・サポートは2010年以前はサポーターと呼ばれており、使用後トラッシュするのではなく、使用した番の終わりまでバトル場の横に置いておき、番の終わりにトラッシュしていた。
・このルールはサポーターを番に2回使ってしまうミスの予防になったり、ポケモンとトレーナーが並ぶフレーバー的な魅力になったりしうる。
・ただ、サポートも盤面を広く使えたり、トラッシュに関する煩雑なルールが無く分かりやすかったりといったメリットがある。
・総合的にはサポートの方が優れている(からこそサポーターはサポートに変更された)と感じるが、サポーターにはサポーター特有の利点や味があったので、個人的にはサポーターが好き。
……といったところです。
大会とか対戦動画を見ていてサポートを2回使うミスがあると、「サポーターならこのミス減らせそうなのに……」と思ってしまうんですが、まぁサポーターはサポーターで欠点もありますし、サポートルールになったのは最大公約数的に正しいことだと思っています。
サポーターは単純に操作の手数が増えますから、そのぶん25分ではしんどめなポケカの対戦が更に延びる可能性もありますしね。
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