古代バレットはバレットデッキと呼べる?

 前提として、言葉の定義に絶対の正解はないと思っています。
 そのうえで、わたし個人の意見や感想を以下に記載してみます。よろしくお願いします。
 また、今回シルバーバレットの語源の話はスキップして、「ポケカにおけるバレットデッキ」の話をしてみたいと思います。「OTK」なんかもそうですが、カードゲームによって同じ用語の指す意味が異なるというのはよくあることですしね。

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 ポケカにも、かつてバレットデッキと呼ばれたデッキは数多くありました。
 最近だとロストバレットが該当するでしょうか。ヤミラミとウッウは基本弱点関係なしですが、テツノカイナexやトドロクツキex、かがやくゲッコウガやかがやくリザードンと、多色のアタッカーが対戦相手に合わせて活躍するのが特徴的でした。
 中には「抜群ロスト」というタイプのデッキもあり、これは弱点ダメージが3倍になる「ばつぐんグラス」を搭載し、トロピウスやメテノを採用して環境デッキへのメタ性能を高めたロストバレットです。
 抜群ロストは極端な例ですが、ロストバレットは相手の弱点をつくことも視野に入れて、様々な相手と戦えるよう構築されたデッキといえるでしょう。

 ここで、少し昔話をします。
 5年前、超バレットと呼ばれたデッキが、チャンピオンズリーグ東京2019マスターリーグで優勝しました。その構築がこちらです。

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 このデッキ、一見タイプが多少散っているように見えますが、実際は弱点を突く運用をほとんどしないデッキです。

 ひかるアルセウスは無色なので弱点を突けませんし、カプ・コケコも全体20ダメージの「かいてんひこう」しか使わないので、弱点を突けないことはないですが突いてもバトル場へのダメージが20増えるだけです。

 唯一、イワークだけは闘タイプの環境への刺さりがいい(当時は悪と雷の両方が闘弱点でした)のと、エネルギーの色の縛りがないのとで、ゾロアークGX等に対抗できるよう採用されていますが、でもこの1枚だけです。さすがにそれだけでは弱点を突くのがメインのデッキとは呼べないと思います。なお、イワーク不採用の超バレットも超バレットと呼ばれていました。
 また、超バレットはバレットデッキらしく対応範囲が広いです。ルガルガンゾロアークに対してゾロアークの弱点をつけるイワーク採用があり、正面からの殴り合いならHP130の打点130かつ特性で無限に甦るギラティナが強く、ロストマーチのような小粒の非ルールポケモンで攻めるデッキにはカプ・コケコやひかるアルセウスでダメージをばらまくことで優位に立ち回れますし、打点の高さならネクロズマGXやルナアーラ◇に期待でき、相手がダメージをばらまくデッキならひかるアルセウスで味方を守れます。
 ロストバレットも、弱点をつくことが試合の勝敗を左右するくらい重要なのはそうですが、テツノカイナexやかがやくゲッコウガでHPの低い非ルールの小型ポケモンを倒すとか、リザードンexのような大型ポケモンをトドロクツキexでくるいえぐって一発で倒すとか、タイプを除外しても戦い方のバリエーションによって対応力を高めているところがあります。
 そういった点から、わたしとしてはバレットデッキにおける「タイプを散らして弱点をつく」は必要条件ではなく、あくまで「様々なアタッカーを採用して環境デッキへの対応力を高める」手段の1つである、と解釈しました。
 まぁそもそも、様々なアタッカーを採用するということはすなわち環境デッキへの対応力が高まるということでもあるというか、環境デッキへの対応力が高まらないなら様々なアタッカーを採用するメリットが乏しいですから、バレットデッキは「様々なアタッカーを採用したデッキ」と近似した概念といえる側面もあるかもしれません。

 そして、古代バレットもまた、様々なアタッカーを採用して環境デッキへの対応力を高めている……のでしょうか?

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 たとえば、このトドロクツキ、ハバタクカミ、コライドンの3種12枚のアタッカーが活躍するデッキですが、古代のたねポケモンを主に使った速攻寄りのビートダウン系デッキではあります。しかし、果たしてバレットデッキなのでしょうか。
 アタッカーを3種類採用したデッキって、よくありますよね。G環境のトドロクツキexデッキは、トドロクツキex・モルペコ・ガラルファイヤーVの3種アタッカーも珍しくなかったですが、あれがトドロクツキバレットとかダークバレットと呼ばれていたかというと……わたしは聞いたことがありませんでした。

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 一方で、このくらいまでアタッカーが増えると多少バレットデッキみが増してきた感じがしますね。
 かがやくゲッコウガを除く5種のポケモンが全てアタッカーとして戦える構築ですが、アタッカーの数でいうならロストバレットもウッウ・ヤミラミ・トドロクツキex・テツノカイナex・かがやくゲッコウガの5種というのは珍しくないですしね。
 あと、これは必要条件ではないかもしれませんが、様々なアタッカーを採用するという点でいうなら、やはり1枚採用のアタッカーが多い方がバレットっぽいなと感じます。状況に応じたアタッカーを多数採用すると、自然と各1~2積みになりがちですよね。マッチアップ次第で使わないアタッカーそれぞれに3つも4つも枠を割く余裕はありませんから。
 この世の多くの呼称について言えることですが、厳密な定義があるわけではないのでハッキリした区分はできません。なので、「1枚積みのアタッカーがn匹いればバレットデッキ」みたいな厳密な基準の提示は困難ですが、現在古代バレットと称されているデッキの中に、わたしなら古代バレットと呼ばないだろうなというデッキは一定数あるように感じます。1つ目に挙げた古代バレットなんかはそうですね。
 ただ、「どこからがバレットで、どこからがバレットでないか」というのは個々人の認識による部分が大きいですから、「いや1つ目の古代バレットも普通にバレットデッキだよ」という方もおられるかもしれませんし、「いやバレットデッキかどうかはアタッカーの種類じゃなくて別のところに要点があるよ」という方もおられるかもしれません。厳密な定義がないので正解もなく、でも最大公約数的な答えというか、大多数の人がそれなりに納得できるポイントというのは探れば見つかるものではあるでしょう。

 ……という塩梅です。
 わたしの意見をまとめると、
・バレットデッキとは、多種多様なアタッカーを採用することで色んな状況やマッチアップに対応できるよう作られたデッキのこと。
・ロストバレットはタイプを散らして弱点をつくことで対応範囲を広げているけど、タイプを散らすのは「色んな相手への対応力を高める」手段の1つであって、必要条件ではない。
・実際、チャンピオンズリーグ2019東京で優勝した超バレットも、弱点をつく前提で採用されたカードはイワーク1枚しかないけど、バレットデッキと呼ばれ続けていた。イワーク不採用の超バレットもバレットデッキと呼ばれていた。
・なので、様々なアタッカーを採用し対応力を高めた古代バレットなら、バレットデッキと呼んで差し支えないと思う。
・アタッカーの採用種類が多くない古代デッキはあまりバレットという感じがしない。厳密な定義はできないけど、1枚積みのアタッカーが複数採用されているとバレットデッキっぽく感じる。

 ……となります。

 ちなみに古代バレットとは呼びにくい古代ポケモン中心のビートダウンデッキに対して「古代ビート」という名前も提案されていたのを見ましたが、個人的にはいい名前だと思います。古代生物の鼓動(ハートビート)が聞こえてくるようなデッキ名です。未来ポケモンはなんだかあんまり鼓動してなさそうな見た目?なので、対比で古代ポケモンらしさが際立ちますしね。

 あと、カビゴンLOもよく「積極的に山札を削らないデッキだからLOとは認めない!」という方がおられますし、カビゴンコントロールという名前で全然いいと思います。略してカビコン。
 まぁゾロアークコントロールやピジョットコントロールと違ってカビゴンがサーチやドローをするわけではないですが、カビゴンが主体のコントロールデッキなんですからカビゴンコントロールと呼んで差し支えないでしょう。あまり積極的に山札を削らないだけで、詰ませてLOが勝ち筋なのは違いないので、わたしはカビゴンLOという呼称が間違いとは思いませんが、別に「LO」という字面にさほど拘泥すべきものがあるとも感じないので、LOと呼ぶ必要もないかなという立場です。
 ただまぁ、デッキの呼称は最初に広まったものが定着しがちなので、カビゴンLOはカビゴンLOのままでしょうし、古代バレットも古代バレットのままじゃないかなと思います。別のTCGですが、ハースストーンで「発見メイジ」と名付けられたデッキには「発見」キーワードのカードが4枚しか無く、また最大の特徴である「カバールの飛脚」が抜かれて発見2枚のデッキとなってもなお発見メイジと呼ばれていたのを、「さすがに羊頭狗肉では?」と思っていましたが、それでも長らく発見メイジと呼ばれ続けていましたしね。
 まぁ、個人的になんとなく据わりが悪いような感じはするので、古代バレットが別の名前に変わるならそれはそれで歓迎したいなと思っています。
 とはいえ、それについては「じゃあなんて呼べばいいの?」という当然の疑問に対して、ある程度しっくりくる回答があって初めて起こる変化かなとも感じます。「みんな現状がそれほど腑に落ちてないけど、それ以上の代案がない(あってもコンセンサスが得られていない)ので現状継続」というのはよくあることですしね。

 それでは、また。

(なお、記事内のデッキリストはいずれもポケモンカードゲームトレーナーズウェブサイトに掲載された、チャンピオンズリーグおよびシティリーグ入賞デッキの引用です)

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