ポケポケが本家ポケカと別物だった件【Pokémon Trading Card Game Pocket】

 2024年10月30日サービス開始予定のスマホで遊ぶポケモンカード、Pokémon Trading Card Game Pocket(以下、公式略称に倣いポケポケと記載)の続報が出ました。
 試遊会のレポートや公式アカウントの情報が掲載されているので、それを元にわたしの感想と今後の予想について書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

【目次】
ルール、カードは本家ポケカと別物
ポケポケはなぜ別ルールなのか?
本家ポケカと同じでなくていいと思う理由
まとめ


・ルール、カードは本家ポケカと別物


 ポケポケのルール、初報の時点から「本家と違うのでは?」という考察がなされていましたが、実際そうだったようです。

 まず、サイドカードがありません
 相手のポケモンを倒すたびに1ポイントもらえて、先に3ポイント取得したプレイヤーの勝利です。
 ポケカの「相手のポケモンを倒した側の手札が増えるため、積極的に攻めて勝ちを狙いにいくインセンティブになる」という要素がなくなっています。しかし同時に、サイド落ちという運要素やサイド落ち確認の手間も排除されていますね。


 なお、exポケモンという、他のポケモンより強い代わりに倒されると相手に2ポイント取られてしまうエースポケモンも存在します。
 GXワザやVSTARパワーに類するものもないですし、非exから進化するケースもあるようなので、おそらくは2024年9月の現環境に存在するexポケモンと同じ扱いですね。HPなどの数値の感じからは、今のexよりもADVやPCGの頃のexに近い感覚ですね。


 ちなみに、PCG1のリザードンexはHP160でした。上ワザの名前が「きりさく」であること、下ワザのダメージが「200」であることはPCG1のリザードンexを踏襲しています。下ワザの名前は「ぐれんのあらし」ですが、これはリザードンGXと同じですね。
 さて、ソーナンス(adv2)やミミッキュのような、exからのワザを無効化する「しんぴのまもり」持ちポケモンは、いつ登場するのでしょうか。

 また、エネルギーカードがありません。
 エネルギーは「エネルギーゾーン」から自分の番ごとに1個供給されるそうです。供給されるエネルギーのタイプは、自分の場のポケモンのタイプからランダムに選ばれるそうです。
 MTGの土地カードもそうですが、一部のTCGにはこの手の「カードを使うためのコストを供給するのが主目的のカード」が存在します。この手のカードがあるTCGはあまり多くなく、ポケカもそのひとつであることが特徴だったんですが、ポケポケでは外してきましたね。

 エネルギーゾーンから毎ターンエネルギーが1個供給されるのは、同じDCGであるハースストーンやシャドウバースに近い仕様ですね。
 ハースストーンもシャドウバースも、カードを使うためにマナが必要ですが、そのマナはお互い0から始まり、各プレイヤーのターン開始時に上限が1増え、上限まで回復します。
 これ、土地やエネルギーといったコスト用カードが必要なく、かつゲームスピードを規定できるという、なかなか合理的な仕様です。
 なお、コイン滋養といった、使えるマナを増やすカードもありましたから、ポケポケでも1ターンにつけられるエネルギーの数を増やすカードはあると思います。というか、既に発表済みのカードの中にもありますね。
 また、先攻1ターン目はエネルギーゾーンからエネルギーをもらえないようです。

 デッキは20枚、同名カードは2枚までです。
 これはいにしえのポケカのルール、ハーフデッキに近い性質です。
 ハーフデッキは30枚デッキ、同名2枚、サイド3枚のルールでしたが、3ポイント先取なのも含め、ほぼハーフレギュレーションを踏襲していると言ってよいでしょう。
 デッキ枚数は10枚少ないですが、エネルギーカードが存在しないことを考えると、エネルギー以外の枚数としては似たようなものです。まぁしいていうならちょっとだけポケポケの方が少ないかな、というくらいでしょうか。

 初期手札は5枚です。
 なんだか少ない感じもしますが、エネルギーゾーンからエネルギーが供給されるという都合上、毎ターンエネルギーカードを1枚もらえるようなものと考えれば、まぁそんなものかなという感じですね。
 なお、デッキは20枚なので、対戦開始時の山札は15枚ということになります。

 ベンチポケモンは3匹までです。
 まぁ、デッキのスケールが本家ポケカの半分以下ですし、5枠もいらない説はたしかにあります。
 PTCGLはスマホやタブレットだと縦長なのですが、横幅が狭いためにベンチに5匹出すと前列3匹、後列2匹の2列になります。しかし、元々3枠なら1列での表示も容易ですね。

 1試合5分くらいとのことです。
 紙のポケカって1試合がけっこう長くて、25分でもギリギリなことが珍しくないですから、かなりライトな感じですね。
 まぁ、長いといっても紙はシャッフルの時間等もありますから、デジタルの時点で多少早くはなりますけどね。PTCGLも1秒でシャッフルしてくれるので紙より試合が短くなりやすいですし……
 ハーフデッキと考えれば5分決着も「まあそんなものかな?」という感じですね。現状、ドローやサーチ系のカードもほぼ見えてませんし、1ターンの間で取れる行動の選択肢がさほど多くなさそうなので、それほど長考することもなさそうです。




・ポケポケはなぜ別ルールなのか?
 ポケポケのルールは、本家ポケモンカードをシンプルかつライトにしたもの、という印象を受けました。
 あまり複雑な効果もなく、本家ポケカでいうところの「ファミリーポケカ」みたいな感じでしたね。ルールが簡素化されているので、更にシンプルになった感じです。


 最新のリザードンexと、ファミリーポケカのリザードンGX。
 前者は山札から基本炎エネルギーをサーチして場のポケモンに付ける、相手のサイドの枚数に応じたダメージ、エネルギーのタイプとポケモンのタイプが異なるなど色々な要素があるのに対して、後者はワザが2つともダメージだけの極めてシンプルな性能です。


 お子さんにも安心のポケモンカード、というイメージはありますが、実際のところポケモンカードって意外と難しいんですよね。
 ただ、難しさにも2種類あって、ルールそのものが難解な「遊ぶハードルが高い」パターンと、実力差が出るので初心者が勝ちにくい「勝利のハードルが高い」パターンがあります。(両者を兼ねるパターンもあります)
 ポケモンカードは「カードに書いている文章の意味が分からない」とか「処理が複雑すぎて直感的でない」とかはあまりなく、またシステム自体もゲームのポケモンをカードに落とし込んだような性質で、基本ルール自体がことさら難解ということはありません。
 相手の番に自分から割り込んで行動することはないため、相手の行動を見ながら割り込むタイミングを計ったり、割り込まれる可能性を考慮しながら立ち回ったりするような複雑さはありません。

 なので、ポケカを遊ぶハードル自体は難しくないんですが、実力が出るので勝つハードルは比較的高いです。
 ポケカは1ターンあたりに出来ることが多く、どの順番でやれば綺麗に動けるのか、確率的に最善となるカードはどれか、等の選択を何度も迫られ、その積み重ねによって稼げるアドバンテージの期待値に差が生じます。
 また、ドローやサーチがとても強く、再現性を高めやすいため、自身の構築の強みや相手のデッキの動き方、マッチアップの定石などに関する知識・理解度が勝敗に繋がりやすいです。
 山札破壊や手札破壊なしでビートダウン同士で戦っても、60枚あったデッキが終盤お互い尽きかけのギリギリまでカードを消費しているということが珍しくないくらい「デッキ全体で戦う性質のカードゲーム」であるため、デッキのリソースを正確に把握していないと自滅して負けてしまう可能性が大いにあります。


 特にF~H環境ではピジョットexやらペパーやらのサーチ系カードも全体的に強く、また試合展開が加速していることで1ターンあたりの重みが増していることもあり、やや難化傾向にあります。
 ポケモンの受けたダメージがターンをまたいで残ることも、デッキリソースを使い尽くしうるゲーム性と合わせて、数ターン先を見たプレイングの重要性に寄与しており実力差に繋がっています。

 もちろん、別にポケモンカードが最難関のカードゲームだとかそんなことは全く思わないのですが、ルールは易しくとも腕前の差は出やすく、見た目から受けるイメージよりは硬派なゲーム性だと思います。

 そして、現代ポケモンカードのそういった性質ゆえに、カードゲーム経験のない初心者の方々に手放しですすめられるかと言われると、やや疑問があります。
 VMAXポケモンが幅を利かせていたB~D環境あたりは、数字で殴り合うシンプルなゲーム性だったので、初心者も入りやすかったですし、なんならわたしもポケカ未経験の友達を誘って始めてもらいました。
 とはいえ、慣れているプレイヤーからすると、B~D環境より今のF~H環境の方が面白いんじゃないかな、と思います。少なくともわたしはそうですね。もちろん運の要素も大いにありますが、実力が出やすいと練習したらちゃんと勝てるようになりますし、負けた時も「あそこをああすればよかった。自分が弱いから負けたんだ」と思えますから。
 まぁ、依然としてルールは易しいですし、同程度の腕前の人とさえ対戦できるのであれば楽しく遊べるかとは思いますから、ことさら初心者お断りなゲーム性だとか、そういうものだとは考えません。

 そういうわけで、本家ポケモンカードが入門のハードルは低いながらもゲーム性は意外と硬派で実力が出やすく、更に高いサーチ性能のカードなどによりその傾向が強まっている中、もっとライトでもっとカジュアルな初心者向けポケカとしても、ポケポケは考えられているんじゃないかな?と思います。

 別に「ポケポケは紙のポケカへの導線にすぎない」とかではなくて、導線の役割を兼ねているのでは?と考えています。
 もちろんポケポケは単体で完結したゲームとして作られているでしょうし、そもそもが対戦よりも収集要素メインとの情報も目にしますから、「パックを開けてカードを集める楽しみ」みたいなものを主眼においたアプリなのかな、とは思います。

 対人戦のゲームに慣れている方からすると意外かもしれませんが、世の中には「ゲームで(知らない)人と対戦することに抵抗がある」という方もけっこうおられますからね。受験やら仕事やら、世の中は競争に満ちているものではありますが、やはり真っ向からの一対一の個人戦だと印象が違うのかもしれません。
 一対一でなくとも、たとえば対人戦は好きじゃなくて協力プレイばかりやっている、「スプラトゥーンでサーモンランばかり遊んでます」みたいな方もおられますしね。
 なので、ポケポケはそういう方でもカードを集めて飾るだけでも楽しめつつ、ついでに対戦もできる、くらいの感じなのかもしれません。

 そういうわけで、ポケポケというアプリを多くの人が楽しみつつ、ライトな対戦もしてもらったうえで、「紙のポケカも集めてみたいな」とか「紙のポケカでの対戦ってどんなのだろ?やってみたい」と思ってもらえれば御の字、みたいなところではないかな、と予想しています。
 ある意味「ポケモンカード体験版」みたいな感じですね。
 なので、対戦についても体験版くらいの難易度、スケールで作っているのかな、と考えています。2Dマリオの体験版でいきなり8-4をお出ししても多くの人にウケないでしょうから、遊んでもらうならやっぱり1-1でしょう、ということです。




・本家ポケカと同じでなくていいと思う理由
 ポケポケが本家ポケカと別のゲームであるという事実は、スマホやタブレットでポケカが遊べる!と思っていた方々にとっては肩透かしかもしれません。
 ただ、わたしはその辺は別に問題視していないんですよね。なぜなら、そもそもスマホやタブレットで遊べるデジタルのポケカは既に存在するからです。それがPokémon Trading Card Game Live(PTCGL)です。


 まぁ、バグは少なくないですし日本語非対応、遊ぶためのハードルも高めという、そこまで快適とは言えないところもありますが、「オンラインのポケカがやりたい!」と本気で思うならさほどの障壁にはなりません。(バグは直してほしいですが)
 実際、イトウシンタロウ選手をはじめ、ポケカの公式大会で上位入賞するようなプレイヤーも、PTCGLを遊んでいることを公言していたり、あるいはPTCGL配信をしていたりしますしね。
 もちろん、日本語対応のオフィシャルなPTCGLがあればより快適というのは間違いないんですが、少なくともオンラインポケカ自体は既に存在し、ポケポケにその役割が切望されていたかというと、個人的にはやや疑問符が浮かびます。

 ですから、ポケモンカードをオンラインで遊びたかった!という方は、やるならPTCGLをやることとし、ポケポケについては「ポケカとは別物だけど、ひょっとしたらポケカへの導線になり、ポケカをより盛り上げてくれるかもしれない存在」として考えるのがいいんじゃないかな、と思います。
 まぁ、大会に出るような方からすると、現在のポケカの大会の参加枠はいっぱいいっぱいなので、あまり人口が増えてほしいとは思っておられないかもしれませんが、衰退したカードゲームって哀しいものですから、大会の参加枠はまた別問題として、ポケカ自体が盛り上がることは前向きに考えられれば、と思います。

 また、もちろんポケポケ特有のゲーム性やバランスも魅力になるでしょうから、本家ポケカとはまた違ったゲームとして楽しむのも大いにありでしょう。
 実際、5分で遊べるライトなポケカというのもありですよね。わたしは朝の移動中にPTCGLを遊ぶことがありますが、普通に1試合20分とかかかることありますし……腰を据えてやるなら別にそれでもいいんですが、本家ポケカは軽いスキマ時間の暇つぶしとして遊ぶにはやや重すぎるきらいがあるというところも否定できません。
 DCGのはしりであるハースストーンも、マジック・ザ・ギャザリング等と似たルールながらインスタントなど相手の番に割り込む行動をばっさりカットし、難しい要素を減らしたシンプルなゲーム性にした代わりに運要素の揺らぎを持たせたことで、電車での移動中などでも気軽に遊びやすいゲームになったわけですしね。



■まとめ
・ポケポケはデッキ20枚、初期手札5枚、サイドカードなし、3匹倒せば勝利、エネルギーカードなし、ベンチ3枠など本家ポケモンカードとはルールからして大きく違っている。カードもイラストの流用はあるが、テキストは共有しておらず、また見えている範囲ではかなりシンプルなテキストのカードが多い。対戦時間も5分程度とうたわれている。
・ポケポケは対戦要素よりもむしろパックを剥いてカードを集めてそれを飾ったり眺めたりする収集要素に重点を置いている印象であり、TCG未経験の人や対戦に抵抗のある人も楽しみやすいアプリとして開発されているのかもしれない。
・また、ポケカはとっつきやすくはあるけれど実力差が出やすく、見た目よりは難しいゲーム性であり、特に最近は難化傾向にあるため、TCG未経験の初心者が遊びやすいかはちょっと疑問もある。ポケポケはそういったTCG未経験の人にとっての易しい「ポケカ体験版」として機能しうるため、本家ポケカへの導線の役割も兼ねているとも考えられる。
・スマホで本家ポケカが遊びたかったのに、という方にとっては肩透かしになり残念かもしれないが、スマホで本家ポケカが遊びたいのであればポケポケではなく既にPTCGLがあるため、そちらを始めるのもいいかもしれない。


 ポケポケはけっこうしっかりと別ゲーではあるようですが、まぁそれはそれで楽しいかな、とも思っています。
 それと、普段ポケカを遊ばない人たち、あるいはTCGすら遊ばない人たちが、紙のポケカやPTCGLを始めるきっかけになるといいな、と思います。

 それでは、また。


※本記事の画像はPokémon Trading Card Game Pocket公式の紹介映像、ポケモンカードゲームトレーナーズウェブサイト、およびPokémon Trading Card Game Liveからの引用です。

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