ポケカに転生したら最強だった件#2.レジギガス編

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「お前は伝説の恥だ。二度とその汚い面をさらすな」

 それは、レジギガスの聞いた最期の言葉でした。後輩のウインディからそう言われた彼は、深夜にズッ……ズッ……と足音を立て、人知れずパーティから姿を消しました。
絶望のまま歩いていた彼は、ふと気づくと真っ白な雲の上にいました。頭上には満天の星空。ここがご主人から聞いた天国という所かもしれない、そう思いました。
追い出された悔しさに6つの涙腺が決壊し、塩辛い水でその巨体を濡らしていた折、雲の下から激しい戦いの音が聞こえてきました。
「くそっ、レジギガス様はまだなのか?!」
レジギガスは耳がおかしくなったのかと思いました。雲の端から見下ろすと、山の中腹の雪道で、彼の創ったレジロック、レジアイス、レジスチル、レジドラゴ、レジエレキが徒党を組み、空間を操るおそろしい怪物、オリジンパルキアと死闘を繰り広げていました。
「持ちこたえろ! レジギガス様さえ来れば勝てる!」
レジエレキが嗄れた声で絶叫します。
レジギガスはふと、胸がマグマストームのように熱くなるのを感じ、しんそくの勢いで雲の上から跳躍しました。夜空を切り裂く白いらいげきのように飛び出した彼の動きを、スロースタートと呼ぶ者はもはや誰もいないでしょう。
世界を揺さぶる地響きとともに戦場に降り立った彼は、仲間たちに応えます。
「ゴギガ・ガガギゴ(待たせたな)」
白皙の巨軀は、もう濡れていませんでした。

レジギガスは弱いポケモンです。
670という恵まれた種族値から、スロースタートという絶望的な特性を持ち、最弱の準伝説ポケモンとすら言われています。5ターンもの間攻撃と素早さが半減するその特性は、レジギガスをパーティメンバーの選考から外すのに十分すぎるデメリットでした。
特性を消す特性のガラルマタドガスが登場してからは、ダブルバトルで活躍するようにもなったのですが、シングルバトルでは相変わらず、影も形もありませんでした。

ですが、ポケカの世界ではどうでしょうか。
実は、誇張でもなんでもなく、一度レジギガスは最強の座を手にしています。


・レジギガス(S12a)

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強い支援特性を持つレジギガスです。
自分の盤面にレジ系すべてが揃っているなら、エネルギー3枚をトラッシュからポケモンに付けられるという特性です。
ポケカではポケモンがワザを使うのにエネルギーカードが必要なのですが、エネルギーカードは毎ターン手札から1枚しかつけられません。しかし、ポケモンの特性やサポーターのカード効果によってエネルギーカードを付けること(エネルギー加速といいます)は別枠なので、とても強力です。
そして、レジギガスの特性「こだいのえいち」による「トラッシュから3枚のエネルギー加速」というのは最強クラスのエネルギー加速であり、並ぶものはほぼいません。
他のレジ系ポケモンは皆エネルギー3個で攻撃できるため、トラッシュにエネルギーさえあればレジ系を自由自在に戦わせられる司令塔となりますし、自分自身もVMAXポケモン相手に300ダメージという強烈な一撃を放てるアタッカーです。レジギガスのワザにはエネルギー5個が必要ですが、「こだいのえいち」は特殊エネルギーも加速できるため、1枚で2個分になる「ツインエネルギー」などを加速することもできました。
このレジギガス、どうにもデザイナーズコンボ感が強く、さほど活躍しないのではないかとも言われていましたが、2022年ジャパンチャンピオンシップスマスターカテゴリで燦然と優勝の座に輝き、日本一のデッキの大エースとなりました。最強のポケモンと呼んで差し支えない功績といえるでしょう。


・レジギガス(SM4S)

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レジギガスの活躍は一度だけではありません。

 このレジギガスもまた、大会で好成績を残しています。2019年の京都チャンピオンズリーグの準優勝デッキが、このレジギガスを使ったコントロールデッキです。「レジギガスフーパ」や「ギガスHAND」と呼ばれていました。
 ただ、このデッキ、レジアイスやレジスチルは入りません。えっ、じゃあレジギガスは置物なの?というと、そうです。厳密には壁ですね。
 この時代、ふつうのたねポケモン(一度も進化していないポケモン)のHPは一部の例外を除き130が上限でした。ゲーム的には、進化してなかろうがラッキーのHPが最強なのですが、ポケカでは対戦中に進化するので、進化というのは手間のかかる行為であり、その見返りとしてHPやワザのダメージが増えるという仕様となっており、たねポケモンのHPは原則低めなのです。元々進化しないアルセウスやマッシブーンでHP130、進化前のモクローやゾロアならHP60もふつうです。
 しかし、レジギガスはHP180という、2進化ポケモンにすら勝る驚異の耐久力を持っていたため、もっぱら敵の攻撃を受け止めるとして運用されていました。
 これは他のレジ系3匹(第7世代のカードなので、まだレジドラゴとレジエレキは登場していません)を揃えないと動き出さないという、スロースタートをカードに落とし込んだマイナス特性の代償として得た硬さなのですが、元々ワザを使わない肉の壁として運用すればデメリットは帳消しということですね。
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相棒はこのあたりです。
フーパはHPこそ120しかないですが、特性によって強力なGXポケモンからの攻撃を遮断できます。GXポケモン以外のパワーではレジギガスを一発で倒すことは困難だったため、GX相手にはフーパ、非GX相手にはレジギガスと、耐久要員を入れ替えて柔軟に戦うことができました。

 また、アンノーンはこのデッキの勝ち筋の1つです。ポケカは先に相手のポケモンを6匹倒した方の勝ちなので、レジギガスとフーパで耐久作戦をしているだけでは本来勝てないのですが、アンノーンの特性「HAND」により、手札が35枚以上ならば本来の勝利条件を無視して対戦に勝つことができます。いわゆる特殊勝利ですね。TCGの定番ですが、ポケカでも時々出てきます。
 ポケカはデッキが60枚なので、デッキの6割弱を手札にする(サイド6枚に基本触らないことを考えると、デッキの3分の2を手札にするともいえます)という曲芸をしないといけません。
 ただ、あくまでこのデッキはコントロールデッキであり、相手に何もできない詰みの状況を作ったうえで、膠着状態から勝ちにいくための手段としてアンノーンを採用しているので、アンノーンは勝つのに必須のカードというわけではありません。相手の山札切れを待って勝ちにしてもいいわけですからね。
 以上の通りです。
 原作では不遇なレジギガスも、実はポケカでは全国大会の優勝デッキのエースだったり、地方大会の準優勝デッキのキーパーソンだったりしたわけですね。
 レジギガスが大好きな人!……というのはあまりいないかもしれませんが、ポケモンのゲームはよく遊ぶけど、自分の好きなポケモンはあんまり活躍しなくて悲しいな……という人は、ポケカも覗いてみるといいかもしれません。あなたの推しがポケカでは最強のヒーローになっている、かも……です。

※本記事の画像はポケモンカードゲームトレーナーズウェブサイトからの引用です。

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