それは、レジギガスの聞いた最期の言葉でした。後輩のウインディからそう言われた彼は、深夜にズッ……ズッ……と足音を立て、人知れずパーティから姿を消しました。
絶望のまま歩いていた彼は、ふと気づくと真っ白な雲の上にいました。頭上には満天の星空。ここがご主人から聞いた天国という所かもしれない、そう思いました。
追い出された悔しさに6つの涙腺が決壊し、塩辛い水でその巨体を濡らしていた折、雲の下から激しい戦いの音が聞こえてきました。
「くそっ、レジギガス様はまだなのか?!」
レジギガスは耳がおかしくなったのかと思いました。雲の端から見下ろすと、山の中腹の雪道で、彼の創ったレジロック、レジアイス、レジスチル、レジドラゴ、レジエレキが徒党を組み、空間を操るおそろしい怪物、オリジンパルキアと死闘を繰り広げていました。
「持ちこたえろ! レジギガス様さえ来れば勝てる!」
レジエレキが嗄れた声で絶叫します。
レジギガスはふと、胸がマグマストームのように熱くなるのを感じ、しんそくの勢いで雲の上から跳躍しました。夜空を切り裂く白いらいげきのように飛び出した彼の動きを、スロースタートと呼ぶ者はもはや誰もいないでしょう。
世界を揺さぶる地響きとともに戦場に降り立った彼は、仲間たちに応えます。
「ゴギガ・ガガギゴ(待たせたな)」
白皙の巨軀は、もう濡れていませんでした。
レジギガスは弱いポケモンです。
670という恵まれた種族値から、スロースタートという絶望的な特性を持ち、最弱の準伝説ポケモンとすら言われています。5ターンもの間攻撃と素早さが半減するその特性は、レジギガスをパーティメンバーの選考から外すのに十分すぎるデメリットでした。
特性を消す特性のガラルマタドガスが登場してからは、ダブルバトルで活躍するようにもなったのですが、シングルバトルでは相変わらず、影も形もありませんでした。
ですが、ポケカの世界ではどうでしょうか。
実は、誇張でもなんでもなく、一度レジギガスは最強の座を手にしています。
・レジギガス(S12a)
強い支援特性を持つレジギガスです。
自分の盤面にレジ系すべてが揃っているなら、エネルギー3枚をトラッシュからポケモンに付けられるという特性です。
ポケカではポケモンがワザを使うのにエネルギーカードが必要なのですが、エネルギーカードは毎ターン手札から1枚しかつけられません。しかし、ポケモンの特性やサポーターのカード効果によってエネルギーカードを付けること(エネルギー加速といいます)は別枠なので、とても強力です。
そして、レジギガスの特性「こだいのえいち」による「トラッシュから3枚のエネルギー加速」というのは最強クラスのエネルギー加速であり、並ぶものはほぼいません。
他のレジ系ポケモンは皆エネルギー3個で攻撃できるため、トラッシュにエネルギーさえあればレジ系を自由自在に戦わせられる司令塔となりますし、自分自身もVMAXポケモン相手に300ダメージという強烈な一撃を放てるアタッカーです。レジギガスのワザにはエネルギー5個が必要ですが、「こだいのえいち」は特殊エネルギーも加速できるため、1枚で2個分になる「ツインエネルギー」などを加速することもできました。
このレジギガス、どうにもデザイナーズコンボ感が強く、さほど活躍しないのではないかとも言われていましたが、2022年ジャパンチャンピオンシップスマスターカテゴリで燦然と優勝の座に輝き、日本一のデッキの大エースとなりました。最強のポケモンと呼んで差し支えない功績といえるでしょう。
・レジギガス(SM4S)
レジギガスの活躍は一度だけではありません。
相棒はこのあたりです。
フーパはHPこそ120しかないですが、特性によって強力なGXポケモンからの攻撃を遮断できます。GXポケモン以外のパワーではレジギガスを一発で倒すことは困難だったため、GX相手にはフーパ、非GX相手にはレジギガスと、耐久要員を入れ替えて柔軟に戦うことができました。
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