どうして虫タイプは弱いままなのか【ポケモン】

mushihyou
 ポケモンの虫タイプは不遇のタイプと言われています。
 実際、相性表によれば虫タイプが攻撃で弱点を突けるのが草・エスパー・悪の3タイプ、耐性で半減できるのが草・地面・格闘の3タイプなのに対して、攻撃で今一つなのが炎・飛行・格闘・毒・ゴースト・鋼・フェアリーの7タイプ、耐性で弱点を突かれてしまうのが炎・飛行・岩の3タイプです。
 重複を無視して単純に数えれば、のべ6タイプに有利・のべ10タイプに不利ということになりますから、不遇なタイプと言って差し支えないでしょうね。
 また、2023/12現在、ポケモンSVランクマッチの使用率上位50位のうち、虫タイプのポケモンは2匹だけです(13位のハッサムと45位のウルガモス)。ちなみに草5匹、氷4匹ですから、2匹はかなり少ない方です。エスパータイプは虫タイプと同じく2匹しかいません。多いのは悪9匹、ゴースト7匹あたりでしょうか。
 この虫タイプの不遇は今に始まった話ではなく、初代から割とずっと弱かったうえに、第6世代でフェアリータイプが追加された時、救済されるのではなくむしろフェアリーの虫半減により弱体化されてしまいました。
 元々弱いのにどうして?という感じですよね。こういった虫冷遇の理由に対する、わたしの個人的な意見を書いてみたいと思います。よろしくお願いします。

結論から簡単に申し上げますと、ポケモンというRPGの「弱いタイプ」としてデザインされた、というのが一番大きいと思っています。
ポケモンを対人コンテンツとして遊んでいるプレイヤーからすると、20近いタイプの中で明らかに強いもの、弱いものがいるのはバランスが悪いと感じられることもあるかもしれません。感覚的には、格闘ゲームで強キャラと弱キャラがいるようなものですね。
ですが、ポケモンは対戦ゲームである以前にRPGであり、対戦ゲームとしてオンライン対戦などをやりこむプレイヤーは全体からするとマイノリティです。RPGで属性間のバランスをあえて均等にしないことは珍しくなく、中盤以降の敵に半減されまくるので序盤しか強くない属性とか、耐性持ちが少なくて明らかに優遇された属性とか、よくありますよね。

たとえば、ドラゴンクエストシリーズのデイン系。基本、勇者専用の雷属性呪文であり、炎属性のメラや風属性のバギと比べて明らかに耐性持ちが少ないことが多いです。ものによっては雷属性でないこともありますが、雷属性の場合はたいてい優遇されています。その代わりに使えるキャラが少ない、というのがよくある設定ですね。
たとえば、ゼノブレイド2の光属性。ゼノブレイド2には炎水氷風雷地光闇の8属性がありますが、初期バージョンだとガチャから手に入る光属性キャラはもっとも排出率の低い1人しかおらず、あとはストーリー上で1人加入するくらいです。主人公専用というわけではないものの、それに近い特別な属性として扱われているのは明白です。闇属性はモブキャラも持ってますし、いくらでも手に入るんですけどね。
たとえば、原神の岩元素。原神は元素(属性)ごとを掛け合わせた元素反応を活用して戦うオープンワールドアクションですが、岩元素だけ元素反応が明らかに弱く設定されています。岩元素の新キャラが2年間実装されないこともあったりして、岩元素は冷遇されているという見方が強いです。

 たとえば、ファイアーエムブレムの斧。FEは剣、槍、斧が三すくみの属性のようになっているのですが、最近はともかく昔の斧は重いわ命中低いわで冷遇ぎみだったことがありました。まぁ、斧って蛮族のイメージであまりかっこいい感じじゃないですし、「低命中で安定しないが一発がある」という性質がそもそも(敵対陣営を一人倒せれば万々歳の)敵向けでしたからね。

これらを踏まえて考えると、ポケモンの虫タイプはあえて弱く設定されたタイプなのでは?という類推が働きます。
初代ポケモンでも、序盤のむしとり少年が「虫タイプは早熟」みたいなこと言ってましたし、そもそも15以上もタイプがあれば、明らかに弱いタイプ・強いタイプを作ってメリハリをつけるのが、RPGとしてはとっつきやすいくらいではないでしょうか。
ポケモンのドラゴンタイプは、逆に強いタイプとしてデザインされたタイプという感じですよね。弱点の少なさ、平均種族値の高さもですが、博士からもらえる御三家ポケモンの炎水草タイプ全てを半減する高い耐性は、終盤のボスの使うタイプとしての設定から逆算して作られた印象さえあります。鋼タイプが追加されてなおその勢いはおさまらず、フェアリータイプにドラゴン無効という性質までも盛り込まれましたね。

 ドラゴンタイプを強いタイプとする一方で、弱いタイプをどれにするか?と考えると、まぁ虫タイプほどの適任はそういませんよね。繁殖力や生命力ならともかくポケモンバトルは正面からの正々堂々ですし、まぁ猛毒の虫は強いかもしれませんが、毒はタイプとして分離されてますからね。

なお、過去に世代移行時に行われた新タイプの追加やタイプ相性変更については、バランス調整の目的も大いにあったはずです。
第2世代の鋼・悪の追加で、第1世代で強かったエスパーの通りが悪く、逆に弱かった格闘は通りがよくなりましたし、第6世代のフェアリーの追加で、無双していたドラゴンへの強烈なストッパーが現れ、攻撃面のいまいち振るわなかった毒と鋼が多少アクティブに攻めやすくなりました。ただ、鋼は元々強かったため、ゴーストと悪への耐性を消され、トータルではやや弱体化でしょうか。
……といった具合に、新タイプや相性変更でバランス調整がされているのに、なんで虫はフェアリー追加で強化されなかったか?というと、想定通りの弱さだったからかな、と思います。

 ドラゴンは強いタイプとして作ったものの、シリーズが続くにつれて想定よりも強くなりすぎてしまったからフェアリータイプ追加で弱くされました。一方で、虫タイプは弱いタイプとして作られていて、想定どおりちゃんと弱かったからフェアリータイプでテコ入れする必要がなかった、むしろ想定よりやや活躍しすぎてるくらいだったのでフェアリータイプの耐性に虫半減をいれた……みたいな話だと思います。第5世代については、虫タイプが割と強い時期でしたからね。

虫タイプの弱体化がおかしいという観点は、「全てのタイプはバランスよくあるべき」という前提に立脚していると思うんですが、別にタイプ間でバランスが取れている必要がないなら、弱いタイプがさらに弱くなるのって調整としておかしくはないんですよね。
実際のところ、虫タイプは四天王に抜擢されたことが第1~9世代で1回しかありません。一方で、ドラゴンは4回出てますからね(チャンピオン含むなら5回)。ポケモンの各タイプは明らかに同等には扱われていないことが分かります。虫タイプの伝説・幻ポケモンもほとんどいませんし。
あと、RPGなので弱いタイプがあるのも当然、みたいな論調で書きましたが、別にただの対戦ゲームでもそのあたりに傾斜をかけることはあると思います。あえて弱いロマンキャラを作ったり、あえて強めのキャラを作ったり。

 環境から半歩ほど抜けたパワーのtier1スターキャラがいて、それをカウンターできる相性のいいキャラが増えて、更にそれを狩れつつスターキャラにもある程度抗えるキャラが上がってきて……みたいな調整、善し悪しや意図の有無はともかく、色んなゲームで見るありふれた調整の1つだと感じます。スターのドラゴンに対抗の鋼、みたいな在りし日のポケモンの環境もそれに近いところがあると思います。
 ポケモンはタイプ相性が世代を超えてほぼ引き継がれますから、前の世代で弱かった虫タイプが次の世代では最強で無双してる、みたいなことは難しいかもしれませんが、第7世代でカプ神が出てきてフェアリーの多い環境になったり、第9世代で四災が出てきて悪タイプの多い環境になったりと、特定のタイプが強い(ポケモンを多く擁する)環境は生まれますから、虫統一の準伝説が登場すれば、あるいは虫環境になるのかもしれません。あとは、600族のハッサムみたいなのが出てきたら環境取ってもおかしくなさそうですね。

まとめます。
・虫タイプが弱いのは、そもそも「弱いタイプ」として設定されているため。
・複数の属性があるRPGでは特定の属性を強くしたり弱くしたりでメリハリをつけてバランスを設定することは珍しくないし、ポケモンもその例に漏れないと思われる。実際、四天王や伝説のポケモンに虫タイプはとても少なく、ドラゴンはやたら多いので、扱いからして差がある。

・フェアリーの登場によるタイプ間のバランス調整ではそれまで強かったドラゴンが弱くなったりしたが、虫タイプがことさら強化されなかったのは、開発側から現状の弱さがタイプの性質として妥当と評価されたから。

……という感じでしょうか。

もちろん、冒頭書いた通りこれはあくまでわたしの個人的な意見なので、ゲームフリークの調整意図と異なることは十二分にありえます。というか異なると思います。
ただ、虫タイプは実際弱めですし、調整の絶好の機会だったフェアリータイプ追加で強化どころか弱体化されているあたり、相性的に不利な相手が多いのがタイプアイデンティティの1つである、というのは十分ある線なんじゃないかな、とは思います。

 でもそれはおそらく、ゲームフリークが虫タイプを嫌っているとかではなくて、卑近で早熟なのが個性である、つまり序盤から出会える親しみ深いタイプで、早熟だからこそ強さに限界がある、みたいな設定なんじゃないかな、と考えています。あとは大衆受けという面からも、トンボやカマキリが無双してるよりドラゴンが無双してる方が見栄えいいでしょうしね。
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 ちなみに、わたしの一番好きな虫ポケモンはツボツボです。いつか環境を席巻する日を心待ちにしています。そんな日は来ない気がしますけれども。
 それでは、また。

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