ネタバレなしの感想は書いたので、ネタバレを前提にした感想を追加したいと思います。大筋はネタバレなしの方をご覧ください。
■お気に入りの異変
・大きなおじさん
笑ってしまいました。
笑顔を浮かべてたり、こっちを見てたり、早足で歩いてたりするだけで異変扱いにされてしまうかわいそうなおじさんですが、大きいのはさすがに異変すぎましたね。
このおじさん、異変要素を含んでいながら、おじさん自体が嫌悪感を催す異形に変化したり、明らかに敵対的になって襲ってきたりといったことはなかったんですよね。まあ、早足おじさんはゲームオーバー要素がありますし、わたしもゲームオーバーになりましたが……
敵になるとしてもただ早足で向かってくるだけだったり、変化するにしても笑ったり大きくなったり顔がちょっとバグってたりするくらいなので、遊んだ後もそんな悪いイメージがなくて、愛着の湧くキャラクターだな、と思います。
ちなみに、「おじさんに基本無視されるのはプレイヤーが幽霊だから」みたいな説もあって、この手の「プレイヤー幽霊説(最初から幽霊だった、途中から幽霊になった)」みたいなのって色んなゲームで囁かれますが、個人的には微妙なんですよね。
本来、生物は命を落とすと意識が消える(意識は蒸発する)わけですが、幽霊というのは命を落としていながら「見られる、聞ける、さまよえる」存在なわけです。それって生きているのとそれほど変わらなくないですか?と思ってしまったりして。まぁ、幽霊だったら脱出後はハッピーエンドではないのかもしれませんが、そこは背景によりけりというか、100歳で大往生した霊が脱出して成仏したのならハッピーエンドといえるような気もしますし、いわゆる「天国」に行くのならハッピーエンドでしょう。まぁそれは、閉じ込められていたのが生きた人間だったとしても似たようなことが言えますが……
あとは、そもそも幽霊自体が想像上の存在、あるいは少なくとも「客観性と再現性をもってその存在を証明できない不確かな存在」ですから、自分自身の体が見えたり見えなかったり、他者から時々認識されたりされなかったり、壁をすり抜けたりすり抜けられなかったりと、割合なんでもありで、「幽霊っぽい」とする幅はわりと広いんですよね。なので「幽霊」という概念自体がファジーというかバーリトゥードというか、「言ったもん勝ち」みたいなところもちょっと理不尽な感じがしてしまいます。
気にしすぎでしょうか。気にしすぎですね。失礼しました。
・シミ(ュラクラ)
天井のシミです。
これが一番難しいという話もありましたが、ぎりぎり見つけられました。ただ、これモニタが汚れてたり画質が悪かったりするとそれが原因で見つけられないってこともありそうですよね。昔、小さなノートパソコンを使っていた時にIbのアリが見つけられなかったことを思い出しました。
ちなみにこのシミ、人の顔っぽく見えますよね。こういう、「目と口」のような3点の配置になっているものを「人の顔」と認識するのを「シミュラクラ現象」と言うそうです。人の認知は視界の中から顔っぽいものを見つけようとする、ということですね。心霊写真という触れ込みの写真で「冷静に見ると、言うほど人の顔か?」と思えるものが人の顔っぽく見えるのも、そのあたりが原因と言われています。
・停電
びっくりホラー要素は少なめに感じましたが、これはまあまあびっくりホラーかもしれません。
ただまぁ、明かりが消えたこと自体もホラーではありますが、真にホラーなのは暗闇そのものよりも暗闇からホラー的サムシングが出てくることなので……と思いつつ、「何かが出てきそうな暗闇」はそれ自体がホラーではあります。「出そうで出ない、いつ出るか分からない緊張感が一番怖い」みたいなお話もありますしね。わたしも停電はけっこう怖かったです。
ちなみに、びっくりホラーのことを「ジャンプスケア」と呼ぶそうです。jump(跳び上がる)とscare(怖がらせる)で、急に跳び上がって怖がらせる、みたいなニュアンスでしょうか? あるいは跳び上がるほど怖がらせるのか……
あとは扉ドンドンとか、いきなり開扉とかもびっくりホラーでしょうか。どの辺からがびっくりホラーか、というのが人によって違う気もします。テクスチャ人間なんかは遠目に見て引き返したのでわたしにとってはびっくりホラーではなかったですが、近づくと出てきて襲ってくるのでびっくりホラーと言えそうですしね。赤い水流は色が濃かったら血液っぽくてびっくりしたかもですが、なんだか以前見た中国の川の写真を思い出して、ちょっと面白かったです。ただ音は大きかったですね。
■なんで2時間もかかったのか
既プレイの方にはお察しいただけると思いますが、下記の通りです。
・観察力不足
わたしの不徳の致すところです。あと、時間が伸びたのは「ながらプレイ」していたせいでもあるかとは思います。
・なんとなく引き返す、をあまりしなかった
ここ、けっこうポイントな気がします。
異変は種明かしをされると「けっこうはっきり変わってるじゃん」と思うんですが、人には認知上の盲点があり、気づかないものはなかなか気づけません。コロンブスの卵……というと少し違うかもしれませんが、似たようなものだと思います。あらゆる異変は「しっかり、つぶさに観察すれば気づけるくらいの大きな変化」ではあるはずなのですけどね。
たしかプロ野球でも、白線上に落ちたボールを(見えにくいとはいえ)全然見つけられずに砂を握りこんで(ボールを拾ったフリをして)進塁を防いだ、みたいな事件があった気がします。まぁ、わたしは野球をしないので、白線上に落ちたボールが認知上の盲点になったのか、あるいは本当に見えないのかは分かりませんが……
それはそれとして、この8番出口、「一度正解した(引き返した)異変は、異変をコンプリートするまで再出現しない」という縛りがあります。なので、一度気づけなかった異変、その人の認知上の盲点にある異変は、正解しなかったがゆえに何度も出現します。
つまり、ドツボに嵌まりやすい仕様になっている、といえます。正解した問題はプールから消え、間違った問題のみが解答を示されることもなくプールに残って再出題され続ける……という。
これを解消するには、自分の認知上の盲点にある問題、つまり何度も挑戦しても解けない可能性が高い問題を、プールから消す必要があります。異変をコンプリートするとまた出てきますが、その場合でも該当の異変ばかりが何度となく出現されるわけではないでしょうから、いずれにせよマシといえます。
そして、正解の困難な問題、つまり「異変を認知して引き返せる公算の低い問題」を異変出題プールから消す方法が、「なんとなく引き返す」です。あるいは、「間違えて引き返す」……というと少し違いますが、本来異変でないはずのものを「なんかおかしい、ここが異変だ!」と思い込んで引き返すと、その思い込みが正しくなくても難問をプールから消すことが出来ます。
わたしが最初10分でクリアできそうだったというところもそうですが、ゲームのクリアにてこずればてこずるほど難問の出題率が上がって難易度が煮詰められるため、仕様上「数回目の挑戦であっさりクリアする」か「しばらく沼ってからクリアする」の二択になりやすい感じがします。
もちろん、続ければ続けるほど本来の通路が記憶に刻み込まれるので、その分異変を発見しやすくなるともいえますが、その学習による正解率の上昇と、本人にとっての難問の出題率上昇による正解率の低下、個人的には後者の方が大きい気がします。
なので、8番出口で「難しい!」と感じた方は、目を皿にして観察に励むのもいいと思いますが、それよりは雑に引き返して難問をプールから除去することを優先した方がいいかもしれません。「異変を明確に説明できないなら引き返してはいけない!」という縛りを課すと、わたしみたいに2時間さまよう羽目になるかもしれませんから……
ただこの仕様が別におかしいとかは思わないんですよね。「この異変さっきも見たよ」となるとそれこそ退屈な気がしますし。とはいえ沼りやすい仕様だとも思いますので、「連続で見逃した異変についてはちょっとずつ異変が大げさになる」みたいな要素があったら、わたしみたいな観察力よわよわプレイヤーにもよりフレンドリーだったかもしれません。異変が光る!……は風情がないかもですが、天井のシミュラクラならシミがより濃くなっていくとか、ドアノブなら大きさも巨大化していくとか……
まぁ、別にわたしもこのゲームの難易度を不満に思っているわけではないので、そうでないから駄作であるとか、そんなことは全然思いませんし、ふつうに満足度は高いです。そういうのがあっても面白かったかな(なくても全然面白かったよ)というくらいです。
ネタバレあり感想としては、こんな感じでしょうか。
話題性からプレイした、みたいなところは大いにありますが、次回作があったら是非遊びたいと思います。引き続き、びっくりホラーは少なめにしてもらえると助かります。
※本記事の画像はKOTAKE CREATEの8番出口からの引用です。
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