ポケモンカードはかつて、なんでもありのカードゲームでした。
あの悪名高き「オーキドはかせ」、手札をすべて捨てて7ドローのカードを連発し、1ターン目にデッキを引ききることすら可能でした。
ただ、これは最初期のカードであり、他の多くの老舗TCGでもよくあるように、最初期に壊れたカードを連発しすぎたせいで環境が破壊されてしまいました。
その対策として、ポケモンカードVSやweb、eの時代から、カードの裏面デザインが新調され、かつての裏面のカードがすべて使えなくなりました。これがポケモンカードにおけるグレート・リセット、「レギュレーション落ち」(スタンダード落ち)であり、使えなくなった古い裏面のカードは旧裏面、「旧裏」と呼ばれるようになりました。
なので、「ポケカはオーキドはかせで引きまくれてヤバイ」というのは20年以上前のイメージであって、今日のポケカの実態とは異なります。それは、ポケカを遊んでいる方にとっては自明のことでしょう。
しかし、です。
スタンダード落ちは、無数の「ヤバイカード」を葬るために行われましたが、その後も時折ヤバイカードが作られ、環境を席巻してきました。
中には、15年以上の時を経て復刻されつつも弱体化されるという、「どんだけ強かったんだよ」とでも言いたくなるような超古代文明の遺品、オーパーツが存在します。
今回は、そんなオーパーツのカードについて、書いていきたいと思います。
・エネコロロ(adv1)
特性「エナジードロー」により、毎ターン手札からエネルギーを1枚トラッシュして3ドローができます。
色の縛りもないため汎用性が凄まじく、ADVシリーズ以降のポケカのゲームスピードを規定した一枚といっても過言ではありません。
バシャレックやカメレアコロロ、マインコロロといった強力な環境デッキに採用され、猛威を振るいました。何かしらトラッシュのエネルギーを利用するポケモンと併用されることが多かったですね。
支援専門と思いきや、青天井火力の「エネだまMAX」により、マインコロロではアタッカーも兼任していました。八面六臂の大活躍で、ゲームでの冷や飯食いぶりが嘘のようですね……
比較的最近出たカードだと、エンニュート(SM10)が似たような特性を持っていますが、こちらは炎エネルギー限定であり、全タイプ対応のエネコロロの優秀さが際立ちます。
ドローエンジンのオーパーツ、それがエナジードローのエネコロロなのです。後述のピジョットと並んで、アドバンスジェネレーションの代表的な支援要員といえるでしょう。
余談ですが、拡張パックのスーパースター的ポジションであるexポケモンとして、エネコロロが選ばれたこともあります。エナジードローのエネコロロもそうですが、ポケモンカードのエネコロロはアイドル的存在なんですよね。
理由は……分かりませんが、わたしは名前にあると思います。「エネコ」の文字列はおそらく「イエネコ」から来ているとされていますが、ポケモンカードには「エネルギー」という、他のTCGでいう「マナ」や「土地」の概念があり、縮めて「エネ」と呼ばれます。エネを操るポケモンとしてエネコロロという名前がぴったりハマっていたのが大きいのかな?というのがわたしの見解です。
・ピジョット(pcg1)
特性「マッハサーチ」により、毎ターン山札の好きなカードをサーチしてくるという怪物です。
いくらポケカが進化やエネルギーで大量のカードを要求する(単独で機能するパワーカードがあまりない)カードゲームとはいえ、毎ターンなんでもサーチはさすがにインフレというものです。当時は出したばかりのポケモンをふしぎなアメで進化させられましたから、1ターン目からピジョットを置くこともできました。
当時は2進化全盛期であったのもあり、全人類がピジョットを積み、スターターにランダム封入されていたHP50のポッポは高騰しました。(といっても1000円とかですが……)
直前のADVシリーズでも初っ端からエネコロロ(adv1)が出ましたし、それまでの常識を塗り替えるという意味で新シリーズでは最初にドローやサーチ関係の革命的なカードを出す、という方針だったのでしょう。まぁ、あまり革命しすぎると転覆するというか、旧裏面の二の舞になってしまうのですが……
ただ、ポケカを作る側もさすがによくないと思ったのか、無色・鋼・悪の進化ポケモンの特性を封じるスタジアム「バトルフロンティア」、無色ポケモンの特性を封じる「ソルロック(pcg5)」など、ほぼピジョット狙い撃ちみたいなカードが複数刷られたのが、高すぎるパワーの証拠といえるでしょう。
ピジョットは、PCGシリーズの終わりとともにスタン落ちで姿を消し……そして、SVシリーズ中期に甦りました。
ピジョットex。
そう、exとなって復活したのです。いくら2進化といえど、マッハサーチはルールを持たないポケモンの特性としては強すぎると判断されたのでしょう。
ステータスは強くなったので、単純な弱体化ではないですが、exであるデメリットの方が大きいため、総合的には弱体化といえます。
今や2進化exにしか許されないサーチ特性をただの2進化が持っていたという、ある種の伝説です。pcg1拡張パックの名前は「伝説の飛翔」であり、これは同パックに封入されている三種類のexポケモン、サンダー・ファイヤー・フリーザーのことを指すというのが一般的な見方ですが、実はピジョットのことなのかもしれません。
・逆転!マジックハンド
カウンターエネルギーなどの「サイドが不利の時に強くなるカード」には起源があります。
それがPCGシリーズ初期、つまりファイアレットリーフグリーンの時期のポケカで、「ナンジャモ」の元であり「N」と全く同じ効果の「ロケット団の幹部」、「リバーサルエネルギー」と同じ効果の「スクランブルエネルギー」など、色々な逆転カードがPCG初期に作られました。
その1つが「逆転!マジックハンド」(通称マジハン)で、相手のベンチポケモンを選んで無理やりバトル場に引きずり出す、今でいう「ボスの指令」の効果をグッズで使えるという、とてもパワフルな効果を持ちます。
SMシリーズやSVシリーズに登場した「カウンターキャッチャー」と同じ効果ですね。
しかし、マジハンはそれに留まりません。もう1つ効果があり、それは「相手のバトルポケモンのエネルギー1個をベンチポケモンに移動させる」というものです。逆行性の強制マルチつけかえですね。
この効果、ポケカプレイヤーの方はお分かりかと思いますが、エネルギー破壊に近いです。「カウンターエネルギーリムーブ」と呼んで差し支えないかもしれません。
エネルギーをつけかえるといっても、元々ワザを使うことを想定されていない支援要員のポケモンにエネルギーを移してしまえば、実質的にエネルギーを破壊したようなものです。トラッシュから回収するようなカードや特性の対象にもならないぶん、たちが悪いとすらいえます。
ちなみになんですが、「ロケット団秘密メカ」と書いているように、「逆転!マジックハンド」は悪の組織ロケット団の使う道具としてデザインされました。「ロケット団の幹部」もそうですが、元々逆転系のカードというのは悪の組織ロケット団の管轄だった、ともいえます。
ポケモンのゲーム自体、主人公は常勝ですが悪の組織は負けても負けてもしぶとく生き延び活路を探す、みたいな感じですしね。追いつめられてパワーアップ、はポケモンシリーズの主人公のイメージではないのかもしれません。
……という感じです。
弱体化とともに現代によみがえるポケモンカード世界のオーパーツ、その一端であるエネコロロ(adv1)、ピジョット(pcg1)、逆転!マジックハンドについて、書いてみました。
ポケモンカードはHPやダメージといった数値をゆるやかにインフレさせることで、効果のインフレがあまり爆発的に進まないようにしているふしがあります。まぁ、効果がインフレするとゲームがどんどん複雑になり、ゲームスピードも加速し続けてしまいますから、盤面にダメカンを置くのが面倒になるだけの方がまだ健全なのかもしれません。
そういうわけで、効果のインフレが起きにくい仕組みであることや、スタンダード落ちのシステムを採用していることから、弱体化&復刻という仕組みがポケカにはよくあります。まぁ、スタン落ちのないTCGでも禁止カードは大体あるので、禁止カードのマイルド版みたいなのはよく出るでしょうけどね。
そのうち、他のカードについても色々と書いてみたいと思います。
それでは、また。
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