ポケモンカードには、サイドカードにまつわる基本ルールがあります。
それは、「対戦準備の際、裏向きで6枚置く」「相手のポケモンを倒すと1枚引ける」「先に引ききった方の勝ち」です。
つまり、基本的には相手のポケモンを倒して勝利条件に近づき、有利になった方のプレイヤーがサイドを引いて手札を増やせる、というルールであり、これは相手に攻撃されて敗北に近づいたプレイヤーの手札が増えるデュエル・マスターズのシールドと真逆の思想のシステムといえます。
そんなサイドに関する要素として、サイドの枚数が不利であるほど有利になるカード(自分のサイドが多いほど強いカード、相手のサイドが少ないほど強いカード)が存在します。
古くは拡張シート第3弾のゴーストLV.25、最近ならナンジャモやカウンターキャッチャーでしょうか。
これらはつまり、不利な時に強くなる逆転のカードということなのですが、これについてまことしやかに囁かれる噂があります。
いわく、「サイドの枚数が多いほど強く使えるカードの存在は、相手のポケモンを倒して有利になった側が更にサイドを引いてより有利になるという、ポケカのサイドカードに関する基本ルールが欠陥であることの証拠」という言説です。すなわち、有利な側が更に有利になる基本ルールの欠陥を、カード側でなんとか修正しようとしている、という意見ですね。
これについて、わたしの考えを述べたいと思います。
結論から言うと、この言説は牽強付会(こじつけ)だと、わたしは思います。
そもそもなのですが、不利な状況を逆転するカードというのは、構造として基本ルールに逆行する性質を持ちやすいです。基本ルールからすれば相手が有利な状況を、五分ないしこちらが有利になるよう覆すものだからですね。
それに、基本ルールに逆行しているからといって基本ルールが欠陥であるというのは論理の飛躍です。「何かを指摘されて怒っている人は、図星だから怒っている」くらい雑な話です。人は図星でも怒りますし、あらぬ嫌疑をかけられて名誉を傷つけられても怒ります。同様に、基本ルールに欠陥があって逆行するケースもあれば、欠陥はないけど逆行するケースもあります。
↑本来メリットである特性持ちポケモンを不利にする効果は、特性という基本ルールを否定している?
ルールに逆行するカードの例は、枚挙にいとまがありません。
アンノーンHANDなど特殊勝利カードの存在は、そのゲームの基本勝利条件が欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
かがやくフーディンなど手札が多いほど痛手を負うワザの存在は、ドローが強いポケカの性質が欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
テツノイバラexやハバタクカミなど特性を消してしまうカードの存在は、特性が欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
ジュペッタexなどグッズロックの存在は、グッズが欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
セグレイブやオーガポン みどりのめんexなどのエネルギー加速の存在は、エネルギーカードが欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
サーチカードの存在は、任意のカードを手札に加えられないTCGの性質が欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
使用済みのカードを置く領域(トラッシュ、墓地等)から回収する手段の存在は、「一度使い終えたカードは再使用できない」というTCGのルールが欠陥であることを認めている証拠なのでしょうか?
もちろん、全部違うでしょう。
基本ルールに反するカードがあるのはカードゲームではよくあることですし、別にそれは基本ルールを否定するものではないと思います。
というか、基本ルールに反する部分があることも含めてそのTCGの性質でしょう。ポケカは原則エネルギーを番に1枚しか付けられませんが、特殊能力などでエネルギーを加速する仕組みは最初期から存在します。「エネルギーは番に1枚しか付けられない」「だがカードの効果でそれを覆せる」まで含めてポケカのエネルギーの性質なのです。いわゆる不文律です。
それに、基本ルールをひっくり返すというのはTCGの醍醐味の1つですからね。いわゆる「ズルをする」ということです。本来番に1枚しか付けられないエネルギーを2枚以上つけたり、本来2進化のポケモンのワザを1進化で使ったり。カードの組み合わせ、シナジーによって「アドを得る」というのも「本来その枚数そのコストでは得られないリターンを得る」と換言できるでしょう。
そして、これはナンジャモやカウンターキャッチャーにも同様のことが言えるはずです。
サイドカードというのは、相手のポケモンを倒して勝利に近づくことで手札に加えるものである、というルールブックに記載された原則がありつつも、ナンジャモやカウンターキャッチャーといったサイドが不利な場合に強く使えるカードが例外として存在することで、攻守のバランスをコントロールしているという不文律がある、と考えられます。
↑カードプールにおける逆転カードの強さが、攻守のバランスを調整する。
まとめです。
・ポケカのサイドカードはポケモンを倒して勝利に近づいた側が手札を増やすという、デュエル・マスターズのシールドと反対の要素である。
・サイドは少ない方が有利だが、逆に多い方が有利になるナンジャモやカウンターキャッチャーといった逆転要素を含むカードが存在し、それら逆転カードの存在が、有利な側が更に有利になるサイドのルールの欠陥の証拠である、という意見がある。
・しかし、不利な時に強くなる逆転カード全般が構造上基本ルールに反する性質を持ちやすいうえ、基本ルールに反するカードというのはTCGでは珍しくなく、またエネルギー加速のように、基本ルールに反しながらもその存在を前提としているであろう要素も種々ある。
・そのため、サイドを参照して不利な時に強くなる逆転カードの存在をもって、サイドカードに関するルールを運営が欠陥だと認めているという証拠にはならないと思う。
……という感じです。
なお、念のため。
この記事をもって、わたしは「サイドカードはルールの欠陥ではありえない」と主張しているわけではありません。(サイドカードはルールの欠陥である、と主張しているわけでもありません)
ただ、「ナンジャモやカウンターキャッチャーといった、サイドが少ないという本来有利な状況が不利に働くような逆転カードの存在が、サイドカードというルールの欠陥を認めている証拠である」というのが論理の飛躍、思考の短絡、牽強付会である、と主張しています。
また、わたしはサイドカードというルールに100%納得しているわけではありません。
欠陥がある、とまでは言いませんが、不満があります。たとえば、サイド落ちの確認です。ゲームプランを立てるのにサイド落ちしたカードが何かを確認するのは重要ですし、やらないよりやった方が絶対勝てるんですが、「自分の手札と山札の54枚から逆算してサイド落ちを確認するのって骨じゃない?対戦中に最初にサーチした時にサイドを見られるようにしてもよくない?」とかは思います。
ですから、「サイドカードには欠陥がある!」という意見も無視できないというか、相手の意見次第ではわたしも同調して「そうだそうだ!」と言っているかもしれません。
ただ、その根拠が「ナンジャモが存在するから」はさすがに雑すぎるんじゃないかな?と思い、その思いのたけを吐露してみました。
それでは、また。
※本記事の画像はポケモンカードトレーナーズウェブサイトからの引用です。
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