昔のパワプロ、今のパワプロ

 皆さんはクィディッチという競技をご存じでしょうか。
 あるいはナワバリバトルでも構いません。フライングサーカスでも競女でもいいです。
 この世には架空のスポーツがあります。物語の中の登場人物しか遊ばない、想像上のスポーツです。
 わたしにとっての野球はそれです。
 わたし自身は遊びませんし、テレビで観戦することもありません。ゲームをしたり漫画を読んだりするのみです。
 ……誤解なきように断っておきますが、別に野球が面白くないと言っているわけではありません。そもそも見てませんから、退屈か否かを評価する以前の問題です。
 ただ、パワプロもとい「実況パワフルプロ野球」シリーズは、そのくらい現実の野球に興味のないわたしでも楽しめるゲームである、と言いたかっただけです。野球のルールを知らない人でもパワプロは楽しいです。
 そういう戦闘形式のキャラゲー、みたいなものです。言ってみれば、いわゆる部活モノの漫画というのは、別に自分がやってない部活でも楽しく読めますしね。『黒子のバスケ』も『おおきく振りかぶって』も『イナズマイレブン』も『りゅうおうのおしごと』も、その競技をほとんど遊ばない人が読者の大半じゃないでしょうか。
 遊ばない競技の漫画やゲームをするのって、結局のところその競技が本当にあるのか架空のものなのかというのは些細なことだと思います。そもそも、実在の競技を背景にしつつその実態は超能力バトルとかよくありますしね。
 重要なのはその競技の出来ではなく……もとい出来だけではなく、それに伴うドラマだと、わたしは思います。
 まぁ、パワプロも野球を実際に遊んでいれば、より楽しめるのかもしれませんけどね。

 そんなパワプロですが、わたしは昔9と13を遊び、飛んで2020、2022を遊びました。
 2020自体が「シリーズの復活」とか言われていた作品で、なぜ復活なのかは2018や2016を遊んでないわたしには分からないんですが、いずれにせよわたしは2020で復帰し、2022も遊びました。
 そんなわたしが、「昔パワプロを遊んでたけど、最近は遊んでない方」を対象に、今と昔のパワプロの違いについて書いてみたいと思います。
 わたし自身がペナントや栄冠はしないので、主にサクセスと野球の話だけです。

・コツシステムやショップにより、望み通りの選手を育成しやすくなった
 大きな改善点です。
 昔のパワプロは、ランダムイベントで特殊能力が付いた場合、それを除去する手段はありませんでした。
 いえ、厳密に言うと、たいていのマイナス能力は経験点により消すことが出来ましたが、プラス能力は原則消せませんでした。
 そのため、「可能な限り強い選手を作るゲーム」としてならともかく、「こういう能力の選手を作りたい」という時にはうまくいかないこともあったんです。走るのがてんでダメなパワーヒッターを作りたいのに、イベントで盗塁〇がついてしまった……という時、盗塁×がつくイベントで相殺する以外には対策がほとんどなかったのです。
 ですが、今のパワプロは変わりました。
 今のパワプロは、イベントでプラスの特殊能力はほぼ付きません。「特殊能力のコツ」がもらえるのみです。
 コツはLv1からLv5まであり、Lvに応じてその特殊能力を取得するための経験点が割引されます。Lv5だと80%割引されて実に5分の1の経験点で特殊能力が取れます。これにより、イベントで特殊能力が強制的に付くことがなくなったうえ、コツのLvによってイベントの恩恵に緩急がつきました。チャンスのコツLv5がもらえるイベントとLv2がもらえるイベントではありがたみも変わるわけです。
 なお、マイナスの特殊能力は相変わらずそのまま付きます。まぁ、経験点で消せますからね。
 ちなみに、「でも威圧感みたいな経験点で取れない能力は?」と思う方もおられると思いますが、そういった能力はLv1以上のコツを得ることで経験点で取れるようになります。まぁ、現代のパワプロで初期状態だと経験点で取れない特殊能力って、威圧感と金特(後述)くらいですけどね。
 また、ショップで特殊能力の本を買うことでも特殊能力を得られます。ショップはいつでも利用できるうえ、マイナスの特殊能力(いわゆる赤特)はすべて100円で売っています。2018でも赤特本は買えたんですが、ランダム性が高く不評だったそうです。2020以降は最初からすべての赤特本が常時買えるので、赤特持ちの選手をとても作りやすくなりました。
 まぁ、再現選手を作るとなると、星300以下の大したことない選手を作るのにサクセスを1回するのが面倒だったりもするんですが、そこはあまり変わっていません。オフライン限定の選手エディット機能を付けてもいいんじゃないかな、と思わなくもないですが、それはそれでサクセスの価値が下がりそうで、難しいのかもしれません。

・オリジナル変化球が豪華になった
 オリジナル変化球をかなり細かく設定できるようになりました。
 昔のパワプロも内部的には細かいんですが、細かいステータスの設定がランダムだったりして、自分では細かく設定できないんですよね。
 今のパワプロはキレや重さ、球速、変化量、変化方向などを細かく設定できるうえ、エフェクトまでも付けることが出来ます。昔のパワプロはライジングショットもマリンボールも別に光ったり飛沫が出たりするわけではなかったですからね。今は特殊なエフェクトが出るうえ、そのエフェクトを自分の作ったオリジナル変化球にも設定できるわけです。いいですね。最高です。
 まぁ、ストイックなプレイヤーからすると、燃えるボールとか紫電を放つボールとかはあまりよくないかもしれませんが、わたしの中の野球はクィディッチなので、そういう描写もあって全然かまいません。選手に翼が生えてフライを捕球する、とかは野球のルール自体が変わってしまうのでイマイチかもしれませんが、エフェクトはあくまで見た目と音だけですからね。
 そよ風高校で一生投手を育成してたわたしとしては、最高に嬉しい要素でした。
 なお、オリジナル変化球は色々いじれますが、何かしら変更をするとオリジナル変化球のスコアが増え、ランクが上がります(一部例外あり)。サクセス中にオリジナル変化球を獲得する時、球速や総変化量や特定のキャラクターの好感度などによってオリジナル変化球のランクが決まり、そのランク以下のスコアのオリジナル変化球が習得できます。
 具体的に言うと、ランクAならスコア90以下、ランクSならスコア100以下とか、そんな感じです。
 エフェクトは付けると対人で打たれやすくなるうえ、スコアも上がってしまうため、オリジナル変化球の強さを追求するなら無い方がいいんですが、わたしは毎回付けています。かっこいいですからね。

・球速以外のすべての能力が100段階になった
 昔の能力は上限値がそれぞれ違いました。
 ミートは当初7、その後15になりました。パワーは255まであり、走力肩力守備力はすべて15が上限でした。あとエラー回避も15でしたが、そもそも昔は隠し能力扱いでした。投手はコントロールとスタミナが255で、球速は……165くらいでしたっけ?
 ですが、今は違います。球速は170とかそのくらいだったと思いますが、それ以外の能力は全部100が上限になりました。
 これはまぁ、最初は違和感がありますが、すぐに慣れます。そもそもミートも7から15になってますしね。そういうものと思えばそれまでです。
 ゲーム的に問題があるところを挙げるとするなら、いくら投げてもスタミナの尽きない選手、みたいなのは作りにくくなったかもしれません。昔はスタミナは140だか150だかでAだったと思いますが、そこから更に255まで上げられました。今はスタミナは80でA、90でS、100で上限なので、普通のスタミナAの1.6倍のスタミナの選手、とかは作れません。まぁ、あまり作る必要もないとは思いますが。
 ちなみにエラー回避は隠し能力ではなくなり、「捕球」になりました。まぁ性質はちょっと違うかもしれませんが。エラー回避って送球にも関わってそうな名前ですしね。
 送球といえば、一部の多段階能力についてはA~Gの7段階になりました。昔は盗塁というと◎、〇、普通、×の4段階でしたが、今は盗塁A~Gまであります。送球もそうですし、チャンスもそうです。細かくなりましたね。キャラクターの特殊能力画面ではB以上は青色、F以下は赤色で表示されます。CDEは全部半透明です。

・サクセスが短くなった
 現代のサクセスは短いです。
 象徴的なのが、パワプロ2022のサクセスです。
 昔のパワプロの高校野球編のサクセスは1年4月から始まります。3年8月までなので、1月4週(4ターン)であることから考えると、29ヵ月はすなわち116ターンです。まぁ高校野球だから3年やるのは普通ですよね。
 しかし、今のパワプロの高校野球編は2年4月から始まります。12ヵ月減って、17ヵ月は68ターンです。68/116=58.62%です。今のパワプロのサクセスは、昔の6割に満たない長さなんです。
 といっても、1周あたりのプレイ時間が完全に6割以下というわけではないとは思います。昔のサクセスも1年目ってあんまり試合とかないですしね。1年目の夏はそもそもベンチに入れなかったりして、相対的に「仕込みの期間」みたいなところはありました。
 ただ、そうは言っても体感的にもだいぶ短くなりました。
 これは、効率的に選手を作れるようになったというメリットもありつつ、お話の熱さが薄れた(気がする)というデメリットもあります。まぁ、2年目から始まる高校野球って、中盤の町から始まるRPGですからね。パワポケ10や『バトルスタディーズ』のような、「地獄の1年生を乗り越える」という話もしづらいですし。別に3年やらないと面白い話は作れないとは思いませんが、どこか欠落してしまったような違和感はあります。昔のパワプロを知っているからかもしれませんが。
 とはいっても、パワプロ2018の五稜郭高校は普通に3年高校野球してるので、作品によるのかもしれません。ただ、2022は2年ですし、2020もターン数的にはほぼ同じです。おそらく2024も似たような感じではないでしょうか。そもそも2018も五稜郭高校以外の高校はそれぞれ68ターンと56ターンですからね。パワプロアプリもターン数的にはそのくらいらしく、時代の流れと考えて差し支えなさそうです。
 まぁ、良し悪しです。選手はサクサク作りやすく、お話はやや欠落感が否めない。高校野球編以外は欠落感というほどでもないかもしれませんけどね。ただわたしは、9のあかつき大附属ほどの熱さを2020や2022の高校・大学からは感じませんでした。エジプト大学はよかったですけどね。熱いだけが面白さではないですし。
 ちなみに、パワプロ2022の高校野球は2年目4月から始まりつつ、2年目夏の試合で既にベンチには入れます。まぁ、3年目夏以外は甲子園に出る前に強制敗北になるので、9の「運が良ければ甲子園5連覇できる」みたいなのはないですけどね。個人的には、別にそれはそんなにいらないかな、とは思いますけども。そよ風でたまたま最初の方から甲子園に出られた時は、レアイベントが見られて楽しかったですけどね。そよ風が甲子園常連校みたいな風格になるの、ちょっと面白かったです。

・野球が若干もっさりになった
 リアルになったんでしょうけれど、それも良し悪しです。
 パワプロ9の帝王実業の守備をご存じでしょうか。CPUレベル「パワフル」の守備は鮮やかで、流れるような守備には攻撃側としてすら見惚れたものです。
 ですが、今日びそんなものは見られません。若干動きがもたつきます。捕球から送球までの時間も伸びている気がします。
 まぁ、昔が速かっただけなんでしょう。人間味が欠けていたんでしょう、ロボットのようだったんでしょう。そうだと思います。
 しかし、あのスピーディでしゃっきりとした挙動は、気持ちよかったです。たとえゲームの嘘だとしても。
 格闘ゲームを3Dで高画質にしたら、5Fで出るパンチに違和感が生まれて動きがもっさりになってしまった……みたいな話ですね。ゲーム的には小パンチは押した瞬間に出た方が気持ちいいことが多いです。ただ、それをもっさりムーブでも気持ちいいように作るか、しゃっきりムーブで違和感がないように作るか、みたいな話なんだと思います。
 おそらく、パワプロのもっさりムーブも自然に感じるようにはなっているんだと思います。既にわたしも慣れてますしね。
 ただ、わたしは現実の野球に興味がないので、あまりリアリティというものが勘定に入らず、もっさりであることに魅力を感じにくいんですよね。
 まぁ、別にもっさりの魅力がリアルだけ、というわけではないかもしれませんけどね。スマブラだってDXは超スピードですがWiiはのんびりでSPは中間くらいなイメージで、どの作品にもファンがいますしね。わたしはちょっと速めなDX、SPが好きです。
 なので、単なるゲームスピードの好みというか、挙動の好みの問題かもしれません。ただ、昔のしゃきしゃき動くパワプロに慣れている人は、今のパワプロの動きには面食らうと思います。打撃はそうでもないですが、守備の操作はかなり違和感があります。慣れますけどね。


・キャラの顔が変えられるようになった

 昔は選手は全員パワプロ君の顔でした。
 猪狩守もあおいちゃんも阿畑さんもみんなパワプロ君でした。ロボットや覆面ヒーローでさえもパワプロ君でした。人類皆パワプロ君でした。
 ただ、今はキャラクターの顔が変えられます。
 サクセスキャラの顔をそのまま当てることもできますし、目や髪といったパーツをそれぞれ選ぶことでキャラクリエイトすることもできます。
 まぁそれだけなんですが、大きな改善点ですね。猪狩守もあおいちゃんも試合中は坊主の野球少年みたいになるのは、ゲーム的都合とはいえどうなのって思ってましたし。

金特が登場した
 特殊能力を超える超特殊能力、それが俗にいう金特です。
 たとえば、キレ〇の上に「驚異の切れ味」、パワーヒッターの上に「アーチスト」、キャッチャー◎の上に「球界の頭脳」があります。
 在りし日のパワポケの超特殊能力(奪力とか呪縛とか)に近いですが、あれと違うのは既存の特殊能力を更に強くしたものである、ということです。まぁ、「ささやき戦術」のような例外もありますが……(ささやき戦術は青特から金特に昇格しました。威圧感はなぜか昇格してません)
 金特の共通点としては、「サクセスではコツを手に入れないと習得できない」ということです。コツは仲間イベントや彼女イベントの完走で手に入るほか、継承選手からももらえます。
 強い選手を作ろうと思うと、どれだけ金特を付けられるか?みたいなところがあります。ただ、プロ野球の選手には一部例外を除きほぼ付いていないので、再現選手とかを考えるならあまりいらない気はします。
 わたしは金特は付けても1つにするのが好きです。その方が締まる感じがして。プラスの特殊能力ですが、背景色がじゃなくてなので、目を引くんですよね。アレンジチーム9人のうちエース級の1人にだけ付ける、とかやってます。全員守備職人のチームを作ってキャプテンだけ魔術師(守備職人の上位)にする、とか。
 金特自体は別につけなくてもいいので、追加で出てきた面白要素の1つとしていい感じだと思います。選択肢が増えたことで面白みが増しました。

・継承選手の重要性が増した
 金特の項目でも書きましたが、今のパワプロは継承選手が重要です。
 「強い選手を作りたければ、まずは強い継承選手を作る必要がある」というところがあります。パワプロ9の恋恋高校や、パワプロ12の町作りみたいですね。
 継承選手はそれぞれが得意練習を持っており、タッグ練習もできる……というのが昔の仕様でしたし、今もそうです。そして更に、覚えている特殊能力のコツを教えてくれたり、試合で活躍してくれたりするうえ、デッキに5人入れることが出来、サクセスではその5人の継承選手が必ず登場します。まぁ大抵3年目4月からとかなので最後の方しか使えませんが、逆に言うと3年目夏の甲子園はオールAやオールSで金特モリモリのチート選手が使えるわけです。
 なお、今のパワプロにてサクセスで作った選手をオンラインで共有できるという利点があります。これにより他の人が作った選手をダウンロードして、自分のサクセスの継承選手として登場させることが出来ます。オンラインの利点ですね。
 ただ、デッキに入る継承選手5人のうち2人までしか他人の選手は使えないため、本気でサクセスをしようと思ったら少なくとも3人の継承選手は自前で用意する必要があります。ちなみにわたしは5人全部自前で用意しています。それが一番やりやすいので。

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 わたしのアップロードした選手です。いっぱいダウンロードされました。やったね。
 継承選手として優秀っぽいですが、わたしは全然使ってません。わたしの継承選手はだいたい金特を10個も持ってなくて、絞ってます。大量に金特を付けたいことがあまりないので……

 ……という感じです。
 今のパワプロは総じて楽しいです。快適でもあります。交通事故みたいな理不尽な即死イベントは無くなりましたし。
 ただ、昔のパワプロしか知らない人にとっては面食らうところもあるとは思います。まぁ、ほとんどはプラスになっているかプラスマイナスゼロかみたいなことなので、間違いなく進化はしています。
 今のパワプロは楽しいのかな?と思っている方がいれば、わたし個人としては大いにおすすめできることかと思います。皆さんもわたしと一緒にクィディッチを、もとい野球をしましょう。

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