2025年12月、第17回ハースストーン創作カード大会が開催されました。
わたしも参加し、とても幸運なことに優勝をいただきました。
オリジナルのカードを作って見せ合う交流の機会がいただけるだけでなく賞品までもらえるなんて、「こんなことがあっていいんですか!?」という感じです。主催のえくすぴあ様には深く感謝申し上げます。
そんな素敵な大会を機に、創作カードの楽しさが少しでも伝われば幸いと思い、わたしが過去に投稿した創作カードについて、本記事で振り返ってみます。よろしくお願いします。
タイムパラドッグズ

第17回ハースストーン創作カード大会に投稿し、優勝の栄誉をいただいたカードです。
第17回大会のテーマは「巻き戻し」でした。
この「巻き戻し」、個人的になかなか難しさを感じるテーマでした。
というのも、要はランダム要素を1回やり直しできるというキーワードなのですが、ランダム召喚+巻き戻し、ランダム攻撃+巻き戻し、手札ランダム破棄+巻き戻しなど、基本的なパターンは既に「タイムウェイの旅人たち」である程度網羅されていたのがまず1点あります。これは主催の方も書いておられましたね。
次にもう1点、これは全くの個人的な感想なのですが、巻き戻しってゲーム内で使う分には楽しい一方、カードだけ見ていても楽しさが伝わりにくい気がしたのですよね。当然ながら創作カードは実際に使うことができませんし、見た目だけで楽しく思える巻き戻しカードを作るというのが、難しい課題だと感じました。
そんなわけで、頭を悩ませて考えたのが「タイムパラドッグズ」です。
「名前から考えたよね?」と思われるかもしれませんが、その通りです。「巻き戻し」がテーマということで、time paradoxとdogsをかけた名前を思いつき、それをカードにしようと考えました。
名前に合った性質を考えたところ、犬なので獣種族、タイムパラドックスなので巻き戻しをトリガーとする……という感じで、概形ができあがりました。
お気づきの方もいるかもしれませんが、このカードは骨の山に似ています。
ただ、骨の山をベースに作ろうとしたのではなくて、作りたいカードを考えたら骨の山に似ていたという感じですね。骨の山に突撃を追加して、断末魔のトリガーを「発掘」から「巻き戻し」に変更して、種族を獣に変えたらこのカードになります。
ただ、デッキ全体で繰り返すことが前提となる発掘と、1枚1枚が自己完結していて繰り返す意味のない巻き戻しとでは、取り回しが大いに異なります。概して巻き戻しがトリガーとなる方が使いづらく、突撃がついていてもゲームバランスが壊れることはないと考えました。
巻き戻しの利点は「巻き戻すかを選べること」です。
しかし、タイムパラドッグズの断末魔のトリガーは「巻き戻しをすること」であり、「巻き戻しカードを使うこと」ではありません。あくまで巻き戻しに2/1突撃再召喚のメリットを付与するだけです。なので、単純な巻き戻しの強化ではないのですよね。
ただ、巻き戻す選択にインセンティブを付与することで、ランダム要素の結果だけでなくタイムパラドッグズ再召喚まで加味したうえで巻き戻しを行うか否かを選択することになるため、より面白くなりそうではないか、と考えました。あるいはタイムパラドッグズが2体破壊されていたら、もうその試合は「とりあえず巻き戻す」でもいいかもしれませんね。
また、タイムパラドックスは時間を巻き戻して過去に干渉することで生じますから、巻き戻すたびにタイムパラドッグズが出てくるというのは、フレーバー的にもマッチしていると思いました。
犬種はマルチーズです。ハースストーンの犬といえば猟犬かなとも思いましたが、バトルグラウンドに忠犬というマルチーズっぽい青天井火力の小型犬がいたので、そちらを採用しました。
クラスについては突撃、断末魔ともにハンターの得意とするキーワードですし、条件を満たせば何度でも再召喚されるミニオンにネズミの王もいますから、ハンターのカードとして違和感はないと考えました。
また、コストとスタッツは3/3/1、3/2/2、2/2/1などで悩みましたが、再召喚の条件を重く見て単体でそこそこ取り回しのよさそうな2/2/1にしました。ブルーギル・ウォリアーと同じコスト・スタッツですね。
かくして、タイムパラドッグズが完成しました。
序盤に何かしらでサーチして召喚し、巻き戻しを連打して盤面を取ったり顔を詰めたりするような「巻き戻しハンターデッキ」が組めたら面白そうだなぁ……という夢と希望を詰め込んだ1枚です。
クリスマスのトレント

「トレント」がテーマの第12回ハースストーン創作カード大会で投稿した1枚です。
ところで、ハースストーンに限らず、プレイヤーの考えたオリジナルカードというのは、複雑になりやすい傾向があるように思います。別にそれが悪いこととかそういう話ではなく、単に事実としてそういう傾向があるのではないか、ということです。
これは、オリジナルのカードを妄想するような人というのはある程度そのカードゲームに造詣が深く複雑なデザインを考えやすいというのもありますし、本物のようにパック単位の評価軸が存在するわけではないので常に各パックのエース級のカードを考えがちというのもありますし、シンプルなデザインだと創作カードとしてのインパクトに欠けやすいとか、各キーワードのシンプルなデザインは既に本家に実装されているとかもあるように思います。
カードとして「ありそう」というなら、たとえば「2/2/3躱し身」は2025年12月時点での王道ハースストーンには実在しませんが、ありそうではあるでしょう。2/3/2躱し身はいますからね。
しかし、これを創作カードとして投稿するか?というと、おそらく投稿しない人が多いのではないでしょうか。どうせ見せるならパッと見て「面白い」と思って楽しんでもらえそうな、複雑な処理やひねったデザインにしたくなります。創作カードは実際には使えないので使用感よりも見た目のインパクトを重視したくなるという、ある意味当たり前の話です。
そんなわけで、「創作カードとして作品を見せ合う」という時点で、そのカードにはある程度「見て面白いと感じ、楽しんでもらいたい」という投稿者のバイアスがかかります。投稿作品がひねりのある複雑なデザインになりやすい理由として、そのあたりが大きいのではないかと思います。
一方で「クリスマスのトレント」はとてもシンプルなカードです。
「雄叫び: ランダムな秘策を5つ準備する」というのは、実際の対戦ではともかく見た目にはシンプルな一文です。似たような効果のカードもあります。なんなら本家の方が複雑ですね。
しかし、こんなシンプルなカードだっていいはずです。テキストが20文字もなくたっていいんです。「こんなカードがあったらいいな」という気持ちの奔出、それがきっと創作カードなのですから。
……という思いもあり、このカードを投稿しました。まぁ、引き算の美学的な思考もありましたけどね。
なお、この「クリスマスのトレント」は、「希望の終焉ヨグ=サロン」によってヒーローのポートレートに付く色とりどりの秘策が、電飾で光るクリスマスツリーのようだというmemeに由来しているので、実はコンテクストとしては見た目よりもちょっとだけ複雑です。
謎めいた挑戦者でパラディンの秘策が5つ付くのもクリスマスツリーめいてましたが、ヨグ=サロンは各クラスの秘策が入り混じってカラフルなのがよりきれいで好きでしたね。
あと、トレントって基本的に1マナか2マナなので、「逆にめっちゃコスト高いトレントがいたら面白いのでは?」と思ったのも、クリスマスのトレントを作った理由の1つです。
なお、「クリスマスのトレント」という名前は少し迷いました。
「クリスマス」という言葉、ハースストーンのゲーム内ではあまり(全く?)見なかった気がします。「冬至祭」はよく見ましたけどね。まぁ、クリスマスはイエス・キリストの降誕祭であり、キリスト教用語ですから、ゲーム内にキリスト教がないなら、おかしな言葉になってしまうのかもしれません。
なので「冬至祭のトレント」や「祝祭のトレント」、「聖夜のトレント」などの名前も考えましたが……創作カードは非公式なので特に縛りはありませんし、分かりやすさ重視で素直に「クリスマスのトレント」にしました。多くの日本人はクリスマスを宗教用語と感じないでしょうしね。
そんなわけで、シンプルながら個人的に気に入っている1枚でした。
半年ほど前に作ったので、コストをなぜ7にしたかは忘れてしまったのですが、いま見るともっと高いコストでいいような気もします。
カードを作って遊んでいると、カードパワーの適切な調整って難しいんだろうな、と思うことがあります。弱くするのはたやすいかもしれませんけど、それなりに使われつつもゲームを壊さない程度の適度なパワーにするのって大変そうで、開発されている方々には頭が下がります。まぁ、わたしが下手なだけなのかもしれませんが……
戦力外通告

「獣の相棒」がテーマの、第13回ハースストーン創作カード大会で投稿した1枚です。
獣の相棒といえば、4/2突撃のハファー、4/4挑発のミーシャ、2/4で自身以外に攻撃力+1のオーラバフをかけるレオックです。
この3種のうち、レオックは他の2匹よりもちょっぴり不人気でした。
ハファーとミーシャは単体で性能が完結しており、3マナミニオンとしては少し強めになっています。
しかしレオックは他に味方ミニオンがいなければただの2/4バニラであり、その場合3マナで出てくれて嬉しいミニオンではありません。状況次第ですが、少なくとも空盤面にレオックは「ハズレ」寄りでした。
そこからの着想で、「特定の獣の相棒を解雇して、別の獣にすげかえるカードがあったら面白いかも?」というのが出発点でした。
紆余曲折あって、「獣の相棒3種のうち1種を選んで対戦から除去し、代わりに6マナ以下の獣を発見して埋め合わせる」呪文にしました。ハファーとミーシャは3マナ以上4マナ未満のパワーなので、4~6マナも候補になるのは強い気もしますが、わざわざカードを使って入れ替えるのですからそこは明確なメリットでいいと思いました。確率自体3分の1ですしね。
ただ、いくら3分の1とはいえヤマグマとかキングクラッシュがほいほい出てくるのはよくないだろうということで、コストは6以下に制限しました。当時はアンキロドンもまだいなかったので、光合のマナセイバーとかならまぁセーフか……とか思っていたような気がします。発見の候補には1~3マナの獣も入るため、高コスト獣が選べるとも限りませんしね。
なお、実は最初からこの形だったのではなく、当初は「敏腕マネージャー」という獣の相棒を全部入れ替えるミニオンを考えていましたが、総入れ替えはちょっとやりすぎな気がしたので没にしました。(テキスト的に総入れ替えに見えないかもしれませんが、下書き段階で没にしたためです)
また、このテーマを聞いた時に真っ先に思いついたのはバ獣で、「交雑」という呪文を考えていましたが、バ獣を使うという発想が早々に他の方と被ってしまったため、そちらも没にしました。別にネタ被りで投稿しても(ある程度差別化できていれば)構わないとは思いますけどね。
ちなみに、戦力外通告のカードイラストは「火の輪くぐりのできないライオンがサーカス団長から戦力外通告を受けている様子」にしています。
発想の出発点は「レオックを解雇」なんですが、そのままレオックが解雇されているイラストにするのはちょっとかわいそうな気がしたので、特に関係のないライオンのイラストにしています。
また、戦力外通告って実際のところ悲しい言葉なので、カードはあまり悲しい印象にならないよう、少しコミカルな感じにしようとしたつもりです。ライオンならサーカス辞めてもサバンナで生きていけそうですし……
なお、この呪文は火炎呪文です。
ライオンの「火の輪くぐり」とかけている……というのは実は後付けで、イラストを考える前の、性能とカード名だけを考えていた段階から、わたしはこの呪文を火炎呪文と決めていました。
なぜなのか、察しがつく方もおられるのではないでしょうか。
大した理由ではありませんが、よければ予想してみてください。
……
…………はい。
………………そうです。
獣の相棒をFIRE(解雇)する呪文だからです。
さいごに
以上、わたしが過去に投稿した3つの創作カードでした。
これらを見て「創作カードって面白そう!」と思われた方や「実力は見せてもらった。お前では勝てない」と思われた方は、ぜひ創作カードを作ってみてください。
HearthCardsで作れます。素敵なカードを作って、ベン・ブロードやディーン・アヤラを怖がらせましょう。
それでは、また。

