デッキ引き切ってハイランダー扱いはやめてほしい・2

ハースストーンの29.2.2パッチノートはご覧になりましたでしょうか。

 無事、わたしの願いは叶いました。嬉しくて5/0/7の顔になりました。

tekichu
「やはり私は正しかったのだ……」

 「デッキ引き切ってハイランダー扱いはやめてほしい」という考えについては以前記事を書いたのですが、念願叶ったこともあり、今回の変更に関してわたしの意見を書いてみたいと思います。よろしくお願いします。

 

・変更内容の確認
9reno

レノをはじめとするハイランダー系カードについて、以下の変更が加えられました。
使用時の自分のデッキ(山札)に重複するカードがなければ発動
対戦開始時の自分のデッキ(構築)に重複するカードがなければ発動

要するに、ハイランダーではないデッキがドローしまくって残りの山札がハイランダー状態になっている場合は発動せず、ちゃんと構築段階でハイランダーデッキを組んでいないと発動しないということです。
また、構築段階でハイランダーになっているデッキに対して、疫病など対戦中のカード混入によってハイランダーカードの雄叫びを不発にすることが出来なくなりました。
なお、これらの変更は2024/4現在、スタンダードで使用可能なすべてのハイランダーカードに適用されます。ワイルドは調整対象外ということですね。


・調整の理由について

 普通のデッキが大量ドローの結果、デッキから重複するカードがなくなった場合にハイランダーカードの効果が発動するというのは、ゲームの処理的には全く正当で無矛盾で、カードテキストの記載通りです。
 公式の29.2.2パッチノートにも、「これらのカード(ハイランダーカード)のデメリットを軽減できるデッキを考案すること自体は、デッキ構築のチャレンジとしては興味深い」と書いていますし、別に許されざる邪道とかではなかったことは明らかでしょう。
 ただ、それはあくまで裏道であり、ハイランダーカードのメインコンセプトではありません。ここからはわたしの推理にはなってしまうのですが、開発者はクソデカいリストのハイランダーデッキを組んでほしいのだと思います。
kaza

少し話が飛びますが、複数のクラスで使えるカードというのはもっとも強く使えるクラスが使った時の性能を基準に調整せざるをえない部分があります。カザカサンもドルイド以外にとってはさほどでしたが、ドルイドが使って強すぎたのでナーフされましたよね。
ハイランダーカードもまた、そうです。ハイランダーデッキが使うよりも大量ドローする非ハイランダーデッキが使う方が強いなら、後者の強さに合わせて調整しないと環境が破壊されてしまいます。
ただ、後者の強さに合わせて調整すると、ハイランダーデッキが使った時にあまり強くなくなってしまい、結果としてハイランダーデッキを組む意味がなくなってしまう可能性があります。
それも1つの手段ではあります。レノロックをはじめ、ハースストーンの歴史には多くのハイランダーデッキがありましたが、「もう飽きたでしょう?これからは大量ドローの時代ですよ」という流れもありえるでしょう。
しかし、今回の仕様変更がなされたということは、開発側としてはハイランダーデッキの存在を優先したと考えるのが自然です。

 もちろん、「大量ドローで後天的にハイランダーカードを起動可能にする」という抜け道自体は、面白いです。使う側としても気持ちいいですしね。マナの踏み倒しもそうですが、ズルをする、もといアドを得るのは気持ちがいいんです。開発側としてもそれは当然考えていると思いますし、そのような文言も書いていましたね。
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 ただ、「大量ドローして後天的にハイランダーカードを起動可能にするようなデッキは、相手が対処できる余地の少ない、ハイランダーカードの精神にそぐわないデッキ」といった旨の文言もまた、パッチノートに書かれています。そういったコンボデッキは駆け引きの魅力に乏しく、相手をしていて楽しくない(と感じるプレイヤーが多い)ということでしょう。
 「いや、そうは言っても別に大量ドローしてハイランダー効果を発動するデッキが環境支配してるわけじゃなくない?」と思われるかもしれません。統計サイトを見たところ、車輪ウォーロックはおおむね非ハイランダー構築でレノを使っていましたが、ウォリアーやシャーマンは普通にハイランダー構築の方が多そうでした。そして、車輪ウォーロックはtier2で使用率8%前後です。
 ただ、前言を翻すようですが、調整の根拠は別に「ハイランダーカードを使う非ハイランダー構築の勝率や使用率が、ハイランダー構築を上回っている」である必要はないんです。公式サイトに記載のある通り、非ハイランダー構築でハイランダーカードを使うようなデッキは高速ドローにより自己完結していて対処の余地が少ないわけで、「多くの人が相手してて退屈と感じるデッキであれば、調整のハードルも低い」というのは十分考えうるところです。
 たとえば、tier1にテンポローグがいたとして、使用率20%あったとしてもそんなにイラつかない人が多いと思うんですよね。相手にしていて不快でないデッキというのは少々数が多くても許せるものです。
 一方で、tier1にコントロールプリーストやフリーズメイジがいて、使用率20%もあったら「今月のラダーは辞めとくか」と思う人、少なからずいると思います。10~15%でもけっこう嫌でしょう。不快なデッキが環境に多いことはプレイ意欲を削ぐため、開発側からしても積極的に調整する動機になりえます。
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 29.2.2パッチノートにも似たような内容が記載されています。
 要は「使う側は楽しくても使われる側がつまんないカードは、あまり強くなるべきではない」ということが書かれています。当然、そういったカードはナーフのボーダーラインも低いといえるでしょう。

 実際、ハースストーンのリードデザイナーだったアヤラ氏も、XでのQ&Aでチケッタスや精神与奪者イルシアについて似たような趣旨の回答(不快に思われやすいカードはパワーや使用率が抑制されるべき)をしています。ここではカード単体の話をしていますが、いわんやデッキをや、でしょう。

 上記の記載をまとめると、大量ドローによって後天的にハイランダーカードを活用するようなデッキは平均的に不快感が強く、その他のデッキと比べてパワーが抑制されるべきであり、別に圧倒的パワーで環境を支配していなくても調整の対象になりえる、ということです。
 すなわち、大量ドローによる後天的ハイランダーという裏道が、本来許容される範囲を超えて強くなりすぎてしまった結果、裏道を潰してハイランダーカードのデザインの主目的、すなわち「ハイランダーデッキを組ませる」という原点に立ち返ったのだと思います。

また、その根拠の1つとして、大量ドローによるハイランダーカードの活用という裏道を潰しながらも、疫病など相手のデッキへのトークン混入によるハイランダーカード発動の妨害という対抗策をも潰している、いうのがあります。
つまり、大量ドローによる後天的ハイランダーを禁止しつつ、ハイランダー構築によるハイランダーカードの活用についてはむしろ強化しているわけです。「ハイランダーデッキをちゃんと使ってね」という意図を感じますよね。
まぁ、大量ドローするデッキ自体をナーフする(除去やドローを弱くしてテンポロスを増やし、ビートダウンに弱くする)という手もあるんですが、この手の裏道は今後も問題になりえますから、転ばぬ先の杖、ということでしょうね。

 言い方を変えるなら、今後も後天的ハイランダーによる問題が発生し個別対応が必要となるリスクを受け入れてまで、後天的ハイランダーを保護する価値を開発側が見出さなかった、ということかもしれません。
 以前、精神与奪者イルシアの効果がナーフされた時、わたしも「イルシアが強すぎるのってアグロプリでだけなんだから、アグロプリをナーフしたらよくない?」と何度も思いましたが、あれもまた、嫌われ者のイルシアをそこまでして守り抜く価値を開発側が感じなかったのでしょうね。
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↑ハースストーンの全カードの中でも、五本の指に入るくらい好きでした。

 

・ハイランダー対策が対策された

わたしが以前書いた記事では、大量ドローによるハイランダーカードの活用をやめさせるための手段として、3つの提案(という名の妄想)をしていました。
すなわち、
「案1:構築および使用時点のリストの両方がハイランダーでないと発動しないようにする」
「案2:ハイランダー構築にしかハイランダーカードを積めなくする」
「案3:案1+2」
です。
案1がやや近いですが、今回の変更はいずれにも該当しません。というのも、わたしはハイランダーカードへの対抗策、つまりデッキへの不純物混入によるハイランダーカード不発については残す方向で考えていたからです。
ハイランダーデッキは構築を大きく制限されるデメリットと引き換えに強力なハイランダーカードを使えるわけですが、上振れしたハイランダーデッキの対戦相手からすれば「なんでも持ってるじゃん!インチキ!」となってしまいますから、有用性はともかく対抗策としては残すのではないか、と思ったのです。
ただ、まぁ……裏道を無くしてハイランダーデッキ基準のパワーにしたとしても、疫病デスナイトがいる限りハイランダーデッキは左前かも、と思われたのかもしれません。

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ハイランダー対策カード、わたしは好きでした。
ただ、疫病デスナイトはやりすぎかなと感じていました。統計サイトを見れば分かりますが、疫病デスナイトの対ハイランダーデッキの勝率、70%近いですからね。
ハイランダーデッキは構築段階での制約のもと、ハイランダーカードを強く使えるというメリットを享受します。
クライヤミ、土蜘蛛みたいな対策カードはいいんです。引かれなければかわせますし、トークンを埋められてもドローを進めれば解除できる可能性もあります。対策する側も、あえて対策カードに枠を割く必要があります。
しかし、疫病デスナイトはデッキ単位でカウンターになっているため、ほぼ確実にハイランダーカードを不発にできますし、ヘルヤを出されると解除不可能(スチームクリーナーはいますが、埋め直されると終わり)、構築段階からハイランダーカードは好きに使わせてもらえない公算大の辛いマッチアップです。
もちろん、ハイランダー側もハイランダーカードを使わずにビートダウンする手はありますが、ハイランダーデッキってハイランダーカードを強く使えるから組んでるわけですし、出したらほぼ勝てるカードならともかく、そうでもないハイランダーカードが疫病デスナイト相手だと高確率で使えないのはストレスだなと思っていました。

 まぁ別に、デッキ単位でガチガチに対策したハードカウンターみたいなのがいてもいいとは思うんですが、専用に尖らせた大会用デッキとかレジェンド上位でだけ強い特殊デッキとかではなく、ラダーでよく当たる環境デッキなのは楽しくないな、という感じでした。2024年2月頃の疫病デスナイトなんか普通にtier1で、使用率15%近くありましたからね。
 もっとも、個人的な楽しくなさでいうとそこまで上位ではなくて、ラダーがクリスタルローグで溢れかえってた時の方がはるかに……でしたけれども。

そういうわけで、疫病デスナイトに妨害されなくなったのは朗報でしたが、相手のデッキへの不純物混入がハイランダー対策にならなくなったのは駆け引きの減少に繋がるので、どうかな……とも思いました。
まぁ、今回の修正については間違いなくわたしは収支プラスと感じていて、嬉しい気持ちの方が圧倒的に上なのですが、代償は少しあったかな、という感じです。

まとめです。

・今回のハイランダーカードの仕様変更は、大量ドローによる後天的ハイランダーが対戦相手にとって不快感の強いデッキであり、そのパワーが許容範囲を超えて上がりすぎたため、それを基準に調整するとハイランダー構築が開発側の想定より弱くなってしまうのが原因だと思う。
・ブリザードとしては大量ドローによる後天的ハイランダーを面白いと考えているけど、そのせいでハイランダー構築が斜陽になるのは本末転倒なので、後天的ハイランダーという裏道を潰すことでメインコンセプトであるハイランダー構築の推進を守ったと推測される。

・大量ドロー自体をナーフする手もあるけど、そうしたとして今後もドローが強くなると類似の問題が発生しうるし、そこまでして嫌われ者の後天的ハイランダーを保護する価値を開発側が見出だしていないのでそうしなかったのだと思う。
・デッキへの異物混入によるハイランダーカードの不発を無くしたのは、疫病デスナイトがハイランダーに対して刺さりすぎていてハイランダー構築を左前にしうる一因だからだと思うけど、クライヤミや土蜘蛛でハイランダーカードを封じられるのは面白かったので、それもできなくなるのはちょっと淋しい。

……という感じです。

 個人的にはとても嬉しい変更で、よかったです。最近ハースストーンのログイン頻度が落ちていたのですが、久々に起動する意欲が湧きました。
 非ハイランダーデッキで大量ドローからハイランダーカードを使うのを楽しみにしていたプレイヤーの方々にとっては悲報でしょうけれど、まぁ不快感が強いらしいので致し方ありませんね。わたしも精神与奪者イルシアを活用するのがいつも楽しみでしたが、いつか消される予感はしていました。
 とりあえず、ハイランダーシャーマンでも使ってみようかな?と思っています。ラダーで当たったらよろしくお願いします。まぁ、わたしはNAで遊んでいるので、これを読んでくださっている方と当たることはあまりないかもしれませんが……
 それでは、また。

※本記事の画像はハースストーン公式ウェブサイトからの引用です。

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