切なる願いです。
ハースストーンには、ハイランダーカードがあります。
ハイランダーというのは「同名カードのないデッキ(全カードが1枚ずつ入ったデッキ)」のことです。Highlanderという映画の副題「There can be only one(生き残れるのはただ一人)」が同名カードのないデッキを示していそうに見える、ということが語源のようです。
ハースストーンではハイランダーデッキが環境デッキになることも多いです。なぜなら、ハイランダーカードが定期的に登場するからです。
こういった、デッキがハイランダーだと特殊な効果が発動するパワーカードがあることで、ハイランダーデッキを組む理由が生まれ、本来ファンデッキのはずのハイランダーがtier1の環境デッキになれるわけですね。
ちなみに、偉大なるゼフリスは「その時の盤面から、AIが状況に合致した最適なカードを全クラスのカードから3枚提示してくれて、そのうち好きな1枚をもらえる」という、デジタルカードゲームならではのカードです。
ハースストーンのハイランダーカードには、その1枚のパワーだけでハイランダーを組む十分な理由になるものがしばしばあり、「ハイランダーカードの引き運ゲーやん」という批判はありつつも、ハイランダーがガチデッキとして時折使われました。(なお、ハイランダーカードを複数用意して、パワーを分散させることで極端な引き運ゲーを避ける環境も多いです)
ですが、ハースストーンのハイランダーには欠点があります。
それは、ハイランダーデッキでなくてもハイランダーカードを使えるということです。
テキストをよく読んでみていただきたいのですが、「自分のデッキに重複するカードがない場合」という記載があります。
この「デッキ」というのは、そのデッキの初期状態(デッキレシピ、デッキリスト)ではなく、その時点でまだ引いていないデッキの残り(山札)のことです。
つまり、別にハイランダーデッキでなくても、ハイランダーカードを使う時点で山札に重複カードがなければよく、もっと言うとデッキを全て引ききって山札が0枚なら確実に発動してくれます。(ハースストーンはデッキを引ききってもしばらくは負けになりません)
特にドルイドはカードを引くのがとても得意なヒーローであり、更にカードを使うのに必要なマナ(毎ターン上限が1ずつ自然に増える)を加速する(自然増加以外で人為的に増やす)ことが得意なヒーローでもあります。
なので、強いハイランダーカードを、ただデッキを引ききるだけで簡単に使えてしまうというデメリットがあります。
これはハイランダーカードに限らず問題視されており、たとえばこれがそうです。
このカザカサンというカード、テキストだけ読むとまるでドラゴンだけで構成された専用デッキを組む必要があるかのように見えますが、実は「自分の山札にドラゴン以外のミニオンがいない」ことが条件となっており、山札にミニオンが0枚ならそれだけで発動してしまいます。
これを利用して、大量ドローとマナ加速からカザカサンを出して勝つだけのドルイドが増えたため、カザカサンの雄叫びは「対戦中にドラゴンを4回以上手札から召喚していた場合」という条件に変更されました。
ハイランダーカードについても、個人的には変更が望ましいと思います。
デッキを引ききって発動する、というのは単純にハイランダーカードの不正利用というイメージがありますし、直感的にも正直気持ちのいいものではないと感じます。
ドルイド以外でもハイランダーカードを非ハイランダーのデッキが使うことはあり(引ききり前提以外でも、ハイランダーをベースに重要カードだけ複数積みにしたりもする)、それは条件を満たすまで不発になるリスクを背負っていて面白いと思う一方で、「またお前かよ」みたいになりがちでよくないと思います。ゼフリスなんかは特にそうでした。
ハイランダーはあくまで選択肢の1つとしてあるべきであって、遅めのデッキは全部ハイランダーだとか、ハイランダーでなくてもハイランダーカードを採用するとかは、特定のカードへの依存度が高く、いびつな環境だと感じます。
まぁ、そのあたりはハイランダーカード自体がどうこうというよりも、ゼフリスのパワーが高すぎたのが悪いともいえるんですが、そうでなくとも「ハイランダーじゃないのに終盤の発見で持ってきたハイランダーカードで大きなアドバンテージを得る」みたいなの、モヤモヤしませんか? いえ、しないならいいんですけどね。
そういうわけで、「いまの山札を参照する」という現在のハイランダーカードの仕組みには瑕疵がある、と感じるのですが、一方で「いまの山札を参照する」という仕組みにはメリットもあります。
このような、「相手の山札に同名カードを2枚以上埋める」といった効果のカードを使うことで、相手のハイランダーカードを不発にさせられます。つまり、ハイランダー対策ができるわけですね。
ハイランダーというのはたしかに使ってて楽しいのですが、使われる側からするとハイランダーカードの極端なパワースパイクがストレスです。また、ハイランダーはカードの種類が多い分対応できるパターンも多く、けれども各1枚なので状況に応じた回答を引きにくい、というデメリットがあるはずなのに、ハイランダーに盤面への回答を連発されると、「ハイランダーのくせに全部持ってるじゃん、引き強すぎ!」となって萎えてしまいやすい傾向があります。
要するに構造的に上振れが大きくて理不尽に感じやすい、ということですね。ケレセス公爵の時の「対戦相手ではなく対戦相手の引き運と戦っている問題」のマイルド版です。
なので、ハイランダーを能動的に対策できる手段がある、というのは必要な仕組みかと思います。確率の低さがゆえに、ハイランダー側の上振れによる強さへの貢献というのは期待値的に大したことがないとしても、ガス抜きできることが大事だと感じます。期待値が大したことないなら、対策手段も大したことなければつり合いがとれるでしょう。
ですが、「いまの山札を参照する」仕様ならば、山札を引ききってハイランダーデッキと言い張る脱法ハイランダーは避けられません。
そこで。
山札干渉によるハイランダーメタを維持しつつ、デッキを引ききってハイランダーとうそぶく脱法ハイランダーを規制するための方法を考えてみました。
願わくは、ハースストーンのハイランダーカードがこうだったらいいな、というわたしの妄想です。
・案1.「自分のデッキおよびデッキリストに重複がない場合」とする
単純明快ですが、現在のデッキと対戦開始時のデッキリストを両方参照し、両方ともがハイランダーであった時のみ特殊効果を発動可能とします。
これで脱法ハイランダーを封じつつ、「クライヤミ」などでのハイランダーメタも可能なままになります。脱法ハイランダーを違法ハイランダーにするということですね。
難点は、テキストが長くなることです。文面をそのままにして「デッキ」をデッキリストと山札のダブルミーニングにしてもいいと思いますが、仕様の周知徹底という点で問題を抱えるかもしれません。まぁ、公式アカウントとパッチノートとゲーム起動時のニュースで告知すれば十分な気もしますけどね。
・案2.ハイランダーカードは構築時点でハイランダーデッキにしか積めなくする
こっちの方がスマートだと思います。
レナサル太子と同じですね。レナサル太子は「自分のデッキは40枚になり、自分のヒーローの体力は35になる」という能力ですが、構築段階でデッキに入れた時点でそのデッキは40枚でしか組めなくなります。
これと同じように、ハイランダーカードは構築段階でハイランダーデッキにしか組み入れられない、とすればテキストをいじる必要もないですし、構築段階で注意されることで「あっ、そういう仕様になったんだ」と周知もできます。完璧ですね。対戦ありがとうございました。
なお、「試合中、発見などでハイランダーカードを拾った場合に脱法ハイランダーできてしまう」という穴が残りますが、これはハイランダーカードをデッキ外から生成できなくすることで防げます。デスナイトのトリプルシンボルカードは生成できないのと同じですね。それでもローグの「カンニング」やプリーストの「ドボン」のようなコピー、強奪系カードでの獲得という抜け道はありますが、そこまで塞ぐ必要があるかは疑問です。
・案3.案1+案2
案2に加え、対戦開始時のデッキリストがハイランダーであるかどうかも判定に加えます。カードテキストはいじらなくていいと思います。
これによって、案2の難点である一部の脱法ハイランダーを許してしまうという点もカバーできます。
ただ、わたしはそれすら許せないくらい脱法ハイランダーに対して怒り心頭恨み骨髄というわけではないので、そこまでいるかな?とも思います。ハイランダーカードを生成プールから除外すれば十分な気もします。まぁ、フェイルセーフとしてはありかなとも思いますけれどもね。多少は遊びがあってもいいかな、というのがわたしの意見です。
いかがでしょうか。
わたしとしては案2を推したいところです。まぁ、別に今のままでもバランスが壊れてなければいいですし、たとえば新拡張のドルイド用ハイランダーカードである無限ドラゴン発見のカードも、ドルイドのクラスカードなのでそもそも脱法ハイランダーを想定したうえでのパワー設定だとは思います。
ですが、今後のカードデザインの幅を狭めているところもあるんじゃないかな?と思いますし、単純に「デッキを引き切ったのでハイランダーです!」という処理が気持ち悪いのもあって、あまり好きじゃないんですよね。まぁ、わたしがハイランダーカードと呼んでいるだけで、本来そういうカードだと言われればそれまでかもしれませんが……
せっかくなので新カードのお話もしておきますと、ヘビの油売りは面白いカードだと思います。ハイランダー以外が埋められた場合は交換可で1マナ払って引き直せますが、ハイランダーは交換するとハイランダーでなくなってしまうので無効ドローとして抱えるか使うかするしかないんですよね。3/4/3のアホウドリが強すぎたところから学習して、いい塩梅にしてきた感じがします。
雄叫びの方が確実でいいのに、という声もあるかとは思いますが、あくまで今回の拡張のスターはハイランダーカードであり、このカードはハイランダーが暴れすぎないためのフェイルセーフにすぎないと考えると、このカードを出すだけでハイランダーを崩せる、というのはやりすぎかなと思います。ハイランダー側もスチームクリーナーで返せるとはいえ、です。
ハイランダー以外がハイランダーカードを使うことに対する何かしらの制約が生まれればいいな、と妄想しつつ、また新拡張のハイランダーカードを楽しみにしつつ、これまでにしたいと思います。
それでは、また。
※本記事の画像はハースストーン公式ウェブサイトからの引用です。
コメント
好き勝手に酷いコメントをしてる人もいましたが、ハイランダーが他のゲームではファンデッキ扱いという意見はさておき、発動条件について私は投稿者様の案に賛成です。
テキストに矛盾はないですが、引き切ったらハイランダー扱いは、デッキを引き切りやすいクラス(特にドルイド)で悪用されており、本来のハイランダーデッキの良さを損ねていると思います。
>>2
コメントありがとうございます。
ファンデッキのくだりについては、わたしが今まで遊んだ中にハイランダーが環境デッキのカードゲームがなかったので、てっきりそうだと思い込んでいました……調べたら色々出てきましたね。ご指摘感謝します。記事を少し訂正しておきます。
個人的な心情として「専用の特別なカード」がHSのハイランダーの魅力としてあってほしかったところもあって、「ゼフリスってカードをいっぱい引いただけで願いを叶えてくれるキャラなんだ」と知ってちょっと残念だった覚えがあります。テキスト通りなんですけどね。