カルドセプトビギンズのオンライン対戦に「離脱ボタン」というのがあります。
これは「その試合を抜けて、後の自分の操作をAIに任せる」というものです。
カルドセプトDS等もそうでしたが、プレイヤーが通信を切断すると自動的にAIに切り替わるので、実質的な「切断機能」とみなす向きもありました。
これについて、少し思うところがあったので、わたしの意見を書いてみたいと思います。
離脱ボタンは公認切断か

離脱ボタンが事実上の公認切断ボタンである、という意見があります。
オンライン対戦の試合を途中で切り上げることができて、その後の操作はAIに任せることができる……というのは、まさにDSや3DSで切断した時の動作そのものです。
旧作ではこれをやるとプロフィールのお天気マーク(初期状態は晴れ)が曇りや雷に変化し、プロフィールを見ただけで「あっ切断野郎だ」と分かるようになっていました。
では、離脱ボタンは公認の「切断ボタン」なのでしょうか。
これは微妙なところで、まぁそれでも間違っていない気がしますが、わたしとしては「降参ボタン」がより正確ではないかと思っています。
参加中の試合において勝ちを目指すのをあきらめて負けを認める、降参や投了にあたるボタンではないか、ということです。
一対一の対戦では降参機能が珍しくないですが、そういったゲームにおいて基本的に降参はプレイヤーの権利です。
戦意を失ったプレイヤーは自らの負けを宣言することができ、負けを宣言したならばその試合を終わらせることができ、それ以上嫌な思いをせずに済みます。
しかし、カルドセプトは多人数戦のゲームであり、降参して試合を抜けるプレイヤーが出てくると、それによって残されたプレイヤーの勝敗が変化してしまうという問題があります。
そのため、もう戦意を喪失しているけど、他のプレイヤーのために試合終了まで付き合わないといけない、という構造になっています。
旧作も遊んでいるわたしとしては、「それは多人数戦のコストでしょ」と思います。
ただ、この「萎え落ちしたい退屈な試合に付き合わないといけない」というのは、多人数戦の負の要素でもあるように思います。切断する人がちょこちょこいるのも、その辺が一因じゃないかなと。降参ボタンがあるなら降参したいけど、ないから切断する、というふうな。
これがたとえば顔を合わせて遊ぶオフラインのボードゲームなら、人付き合いもありますし「もう勝ち目ないんで抜けます」はやりづらいんですが、オンラインのランダムマッチに義理も外聞もないという人は少なくないですから、切断のハードルも高くないんですよね。
だから旧作ではお天気マークという外聞要素を取り入れ、「試合を途中で辞めるのはダメだよ」としていたんですが、ビギンズでは離脱ボタンを導入することで、試合を途中で抜けることを暗に認めたんだと思います。
3DSではマジックブーストがあったり、リボルトでも試合展開の加速に腐心されているという話があったりしましたが、「試合の長さがカルドセプトシリーズのプレイヤー層拡大においてネックである」と開発側が強く意識されているのは今作の開発者座談会からも分かります。
そこでビギンズでは基本ルールに手を加えることで高速化を実現したわけですが、二の矢として離脱ボタンも導入した……と思っています。というか、上記の座談会の「オートプレイの相手と対戦したくない人もいるかもしれないけど、今の時代に必要だろう、と判断した」というくだりがまさに、離脱ボタンについても同じことを言えそうですよね。
降参できるという遊びやすさ

一般的に、負けとは不快なものです。
だから勝とうと頑張れる、というのも間違っていないと思いますが、負けの不快感を軽減して遊びやすくしようとするゲームは多いように思います。たしかShadowverseの講演でも語られてましたね。
往年のファンにとってはともかく、新規プレイヤーにとってはそのゲームが遊びやすいかどうかって重要ですからね。最近は過去のゲームのリメイクで難易度を下げて遊びやすくする例がよくありますが、娯楽の多様な現代において生き残るための方法であると思っています。
リメイク前のゲームのファンとしては淋しいですけどね。わたしの中にも「わたしの好きなゼノブレイド2を色んな人に遊んでほしい!」という気持ちと「どうせゼノブレイド2を遊ぶなら、難易度は下げずにインヴィディアのメツとヨシツネの強さに悶絶してほしい!」という気持ちが同居しています。
よく「部活のシゴキで苦しんだ者は、後輩にも同じ苦しみを味わわせようとする」みたいな負の側面が取り上げられますが、わたしは「人は後輩に対し、良きにつけ悪しきにつけ自分と似た体験をしてほしいと願うもの」だと考えています。
上の例でいうなら、わたしはゼノブレイド2でメツとヨシツネの強さに悶絶してほしい気持ちと同じくらい、熱いストーリーやユニークモンスターとの激闘を満喫してほしいと思っています。(あと話の流れ的に、あのボス戦に苦戦するからこそ後の展開の納得感があるので、わざと難しくしていると思いますし……)
ですが、きょうび水を飲めない野球部が流行らないように、苦しいゲーム体験も流行らないもの。
カルドセプトシリーズで定番だった「手札隠し」がなくなり手札公開制になったのも、手札の隠し合いや手札暗記のストレスを減らして、遊びやすくするための施策という側面があったのではないかと思います。
ただでさえ1試合が長いカルドセプトですが、自分の番以外は戦闘発生時のアイテム使用以外やることがないにも関わらず、勝ちたいなら自分の番以外も他人の手札を見て覚えるために画面を見続けないといけなかったですからね。
試合のスピードを上げているのも、遊びやすさを追求する一端だと思います。
1試合1時間とかかかると、さすがにかったるいですからね。別のゲームでいうと、MTG(Magic the Gathering)はBO3(2本先取)が基本なんですが、デジタルのMTGアリーナではBO1(一本勝負)が人気です。2本先取だと1回決着がつくまでに最大3試合することになるので、それこそ1時間かかったりしますからね。
サイドボードなど、BO3ならではの奥深さがあるというのは分かりますが、気軽に手軽に遊べるというのもまた大きな魅力なんですよね。BO1が「浅い」としたら、BO3に誘導するのではなく、BO1を「深く」するべきだとわたしは思いますし、そもそも浅くてもBO1が人気なら、実のところ深さは手軽さほど重視されていないのでしょう。
降参についても似たようなことがいえます。
「もうやだ、この試合終わりたい」と思った時、ペナルティなしでスッと辞められるというのもまた、遊びやすさでしょう。そのための離脱ボタンであり、ビギンズでは事実上、多人数戦におけるタブーである降参を認めたのだと思います。
降参を認めなければ、今なお1試合30分かかることも珍しくないカルドセプトというゲームが、現代に溢れる様々な娯楽と肩を並べて戦い、この先生きのこること(≒シリーズの存続に必要な売り上げを確保すること)はできないであろうと考えたのではないか、ということです。
……あと、交代先のAIが賢ければ、なるべく波風を立てずキングメーカーにもならずに試合を進行させることができますしね。プレイヤーだとヘソを曲げて試合を破壊してしまう可能性がありますから、そういう見地からすると賢いAIの方が安心とすらいえます。
「たとえ勝ちの目がなくなったとて、試合に最後までいてほしい。多人数戦だから、一緒に試合をやり遂げてほしい。みんなで試合を作るんだよ」という気持ちはあるかもしれませんが、遊びやすさが優先、シリーズの存続が第一ということでしょう。それに、離脱ボタンを押さなければやり遂げられますから。そこの判断をプレイヤーに委ね、強制しないスタイルにしたわけですね。
かつて倒された味方ユニットは死亡して失われたファイアーエムブレムシリーズが、今となってはキャラロストしないカジュアルモードがあって当たり前なように、現代のゲームにはストレスなく遊べる選択肢があるのが当たり前、もといスタンダードなのでしょう。
多人数戦でも、たとえば負け抜けのバトルロイヤルみたいなゲームだったり、1試合3~5分のハイテンポなゲームだったりすると、話は違うんでしょうけどね。
まとめ
・離脱ボタンの動作、試合を途中で抜けて後をAIに任せるというのは、旧作における切断の動作とほぼ同じなので、カルドセプトビギンズの離脱ボタンが公認切断ボタンだというのは、事実そうなっているという点で確からしいと思うが、個人的には「降参を認めた」がより正確だと考えている。
・一対一ならともかく、多人数戦において試合を降参して途中で抜ける行為は試合を壊す行為でもあるため、本来は望ましくない。そのため旧作のカルドセプトに降参機能はなかったし、それでも試合を抜けたい人が切断をしている側面があった。
・ただ、色んなゲームのリメイクで難易度を下げたり平易なカジュアルモードが導入されたりしているように、娯楽に溢れた現代において競争力を持つため「遊びやすさ」が重視されているように思われ、ビギンズではその一環として降参を事実上認めるため「離脱ボタン」を作ったのではないか。
・過去作においても開発側が試合の長さを憂いている兆候は種々あり、開発者インタビュー等でも試合時間の短縮に腐心した話は多い。ビギンズでは基本ルールの変更で試合時間の短縮を実現したが、二の矢として離脱ボタンを導入したように考えられる。
……という感じです。
一応書いておきますが、これはわたし個人の見解であり、感想であり、妄想です。
ちなみにわたしはカルドセプトはオフライン派というか、AIを賢くしてAIとの対戦を楽しませてほしい派なのですが、その一因に試合の長さがあります。試合中に急な呼び出し等があり、スリープモードにして数時間後にプレイ再開……という遊び方も、AIなら許してくれますしね。
試合が短ければ……とも思いますが、漫画や小説も小さな冒険や日常を積み重ねるからこそクライマックスで盛り上がりますし、RPGも弱っちいキャラを育てていくからこそ愛着が湧きますし、ぷよぷよの大連鎖も自分で作るからこそ爽快ですから、一筋縄ではいかないのでしょうね。(ぷよぷよフィーバーもあれはあれで楽しかったですが)
そういえばクリーチャーを初期配置する案もあったようですが、個人的には「ありえない!」と思うものの、盛り上がりの少ない序盤をカットしてドーパミンの出る終盤を早めるという点で、理解はできるんですよね。
まぁ、あまり好きじゃないので、導入されなくてよかったなと思いますけども。ハンデ戦では初期配置されるんですが、あれも個人的にはイマイチです。
新雪に足跡をつけるように、無人の盤面にクリーチャーを配置していくのが楽しいですし、ハンデ戦は配置されるクリーチャーに応じてクレリックやサムライを入れるのが強かったりして、ゲームルールが根本から変わってしまうので……
かといって、ブックやAIの強さで試合を難しくするのも容易ではないのだろうな、と思います。オンライン対戦の強いプレイヤーのブックや行動を学習してくれたらな、とか。「ならオンラインをやれよ」という感じですが、前段の通り、オフラインの方が気軽なんですよね。
それでは、また。

